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トヨタが鉄鋼メーカーに譲歩、支給材価格据え置き

トヨタが鉄鋼メーカーに譲歩、支給材価格据え置き

熱延鋼板は1トン当たり7万2500円前後に据え置き(イメージ)

 トヨタ自動車は、系列部品メーカーに対し2018年度下期(18年10月―19年3月)に供給する自動車用鋼材価格を、前期(4―9月)から据え置く方針を決めた。来週にも系列部品メーカーなどに通知する。据え置きは2期連続。鉄鋼の主原料価格が下落傾向のため、支給材も値下がりが見込まれたが、収益改善が遅れる鉄鋼メーカーが鋼材相場の下落を懸念しており、トヨタ側が譲歩した模様。今後の鉄鋼メーカーと機械、電機、造船など大口需要家との価格交渉は、鉄鋼側が値上げを含め強気の姿勢で挑む見通しだ。

 国内鋼材価格の指標となるトヨタの支給材は、半年ごとに見直される。支給材価格の基準となるのが、トヨタと鉄鋼大手との交渉で決まる前期の鋼材集購価格(ひも付き価格)。非公表で、通常は鉄鉱石・原料炭価格や為替などの変動を参考に決まる。

 トヨタと新日鉄住金の18年度上期(4―9月)のひも付き価格の交渉は新日鉄住金が物流費、副資材など原料以外のコストが増加したため値上げを強く求めたが、トヨタが原料価格の下落を理由に応じない姿勢を示し、1トン当たり数千円程度の引き下げで決着した模様。支給材との差額は今後調整する見通し。

 国内鉄鋼メーカーが資源大手から調達する鉄鉱石価格(本船渡し価格)は、18年7―9月期が前期(4―6月期)比11・9%安の1トン当たり約59ドル、原料炭価格(同)は同年4―6月期が1―3月期比17・3%安の同約196ドルで、いずれも下がった。米中の貿易摩擦などが世界経済に及ぼす悪影響が懸念され、資源価格が下落している。為替は1ドル=111円と小幅な変動だった。

 18年下期の熱延鋼板は、1年前から横ばいの1トン当たり7万2500円前後となる。トヨタが重視するのは、人工知能(AI)などを活用した次世代技術の開発と原価低減。自動車の価格競争が新興国などでも激化している。

 一方、鉄鋼メーカーは今夏、国内建築などの需要回復で需給が引き締まり値上げの好機を迎えたが、価格動向が表面化する支給材が下がれば「鋼材相場は再び悪化する」(鉄鋼流通業者)と警戒していた。
               
日刊工業新聞2018年8月24日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
支給材とは自動車メーカーが鉄鋼メーカーから一括大量購入することで安く仕入れ、系列部品メーカーなどに卸す鋼材。メーカーには部品コストが把握できるメリットもある。店売り価格の変動要因にもなる。トヨタでは集購材とも言う。

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