官僚の夏、人事の夏。新しい「霞が関の顔」まるっと早わかり
2018年夏の霞が関人事。不祥事や疑惑が発覚した財務省、経済産業省、文部科学省は再出発を期す体制を整えた。財務省は7月27日付で、セクハラ問題により辞任した福田淳一前事務次官の後任に岡本薫明主計局長(57)を起用。決裁文書改ざん問題で辞任した佐川宣寿前国税庁長官の後任に藤井健志同庁次長(55)を充てるなど重要ポストに実力者を配置し、不祥事に伴う負のイメージ払拭(ふっしょく)を目指す。今後、各省いずれも厳しい視線の中、信頼回復に向けた実行力が問われる。
財務省は、福田氏の辞任以来約3カ月続いた次官級2人が不在という異例の事態にようやく終止符を打った。岡本氏の後任の主計局長には太田充理財局長(58)、太田氏の後任の理財局長に可部哲生総括審議官(55)が就いた。
信頼回復に向け、岡本氏を議長とする「コンプライアンス(法令順守)推進会議」を新設。第三者の視点を取り入れるため、ボストンコンサルティンググループの秋池玲子シニア・パートナー&マネージング・ディレクター(54)を参与に迎えた。組織立て直しを急ぐ。
次官選びをめぐっては、文書改ざんが行われたとされる17年2―4月に、岡本氏が国会対応や文書管理の責任者である官房長だったため、複数の人事案が浮上した。水面下で幹部人事を官邸主導で進めたい内閣人事局との綱引きがあったと見る向きもある。
麻生太郎財務相は“最強官庁”と呼ばれる財務省の再生に取り組むとした。今回の幹部人事について「これがベスト。岡本氏はこれまで組織の中核を担ってきた。財務省の再生にふさわしい人物だと思っている」とし、岡本氏の次官就任を疑問視する見方を一蹴した。
文科省は27日付で、退任した伊藤洋一文部科学審議官の後任として、山脇良雄内閣府政策統括官(58)を登用。文科省の支援事業をめぐる汚職事件で逮捕、起訴された佐野太前科学技術・学術政策局長に代わり、戸谷一夫事務次官が兼務する形にしていたが、兼務を解き、松尾泰樹官房審議官(55)を充てた。官房総括審議官には生川浩史内閣府官房審議官(57)を起用した。
経産省は「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題で国会に参考人として招致されていた柳瀬唯夫経済産業審議官が退官。後任に前商務情報政策局長の寺沢達也氏(57)が就いた。
世耕弘成経産相は柳瀬氏について「今回の人事と(加計問題)は関係ない」と否定。だが省内には、実力者がわずか1年で退官することを惜しむ声もある。
寺沢氏は通商政策に精通し、省内でも「才人」「何事にも手を抜かない」と評される。保護主義をひた走るトランプ米政権との熾烈(しれつ)な交渉をどのように乗り切っていくかが注目される。
◆財務事務次官
岡本薫明氏(おかもと・しげあき)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年官房長、17年主計局長。愛媛県出身。
◆総括審議官
茶谷栄治氏(ちゃたに・えいじ)86年(昭61)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。12年秘書課長、15年主計局次長。奈良県出身、55歳。
◆主計局長
太田充氏(おおた・みつる)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年総括審議官、17年理財局長。島根県出身。
◆関税局長
中江元哉氏(なかえ・もとや)84年(昭59)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。12年8月官房審議官(主税局担当)、同年12月首相秘書官。大阪府出身、57歳。
◆理財局長
可部哲生氏(かべ・てつお)85年(昭60)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年主計局次長、17年総括審議官。東京都出身。
◆国税庁長官
藤井健志氏(ふじい・たけし)85年(昭60)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。16年主計局次長、17年国税庁次長。島根県出身。
◆財務総合政策研究所長
美並義人氏(みなみ・よしと)84年(昭59)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年主計局次長、16年近畿財務局長。奈良県出身、58歳。
◆経済産業審議官
寺沢達也氏(てらざわ・たつや)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。08年経済産業政策局経済産業政策課長、11年首相秘書官、13年商務流通保安審議官、15年貿易経済協力局長、17年商務情報政策局長。大阪府出身。
◆官房長
糟谷敏秀氏(かすたに・としひで)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。08年経済産業政策局企業行動課長、11年通商政策局通商機構部長、13年総括審議官、15年製造産業局長、17年経済産業政策局長。兵庫県出身。
◆総括審議官
田中茂明氏(たなか・しげあき)87年(昭62)慶大経卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。10年製造産業局自動車課長、12年内閣官房内閣参事官(日本経済再生総合事務局)、15年官房審議官(経済社会政策担当)、17年同(競争力担当)。東京都出身、54歳。
◆経済産業政策局長
新原浩朗氏(にいはら・ひろあき)84年(昭59)東大経卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。07年経済産業政策局産業組織課長、10年首相秘書官、11年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長、16年内閣府政策統括官(経済財政運営担当)。福岡県出身。
◆産業技術環境局長
飯田祐二氏(いいだ・ゆうじ)88年(昭63)東大経卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。08年経済産業政策局産業再生課長、11年官房参事官(エネルギー政策担当)、13年資源エネルギー庁官房総合政策課長、14年官房秘書課長、17年総括審議官。埼玉県出身、55歳。
◆製造産業局長
井上宏司氏(いのうえ・こうじ)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。11年官房審議官、12年資源エネルギー庁次長、14年地域経済産業審議官、15年産業技術環境局長、16年農林水産省食料産業局長。大分県出身。
◆商務情報政策局長
西山圭太氏(にしやま・けいた)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。07年経済産業政策局産業構造課長、09年産業革新機構執行役員企画調整室長、12年官房審議官(経済社会政策担当)、14年原子力損害賠償支援機構連絡調整室次長兼東京電力取締役。神奈川県出身、55歳。
◆資源エネルギー庁長官
高橋泰三氏(たかはし・たいぞう)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。05年製造産業局産業機械課長、13年資源エネルギー庁電力・ガス事業部長、14年資源エネルギー庁次長、16年官房長。東京都出身。
◆文部科学審議官
山脇良雄氏(やまわき・よしお)84年(昭59)東大院工修了、同年科学技術庁(現文科省)入庁。05年北大教授、12年官房審議官、14年国際統括官、16年内閣府政策統括官。兵庫県出身。
◆科学技術・学術政策局長
松尾泰樹氏(まつお・ひろき)87年(昭62)東大院理修了、同年科学技術庁(現文科省)入庁。16年官房審議官。青森県出身。
◆官房総括審議官
生川浩史氏(いくかわ・ひろし)86年(昭61)東大院工修了、同年科学技術庁(現文科省)入庁。15年官房審議官、16年内閣府官房審議官。大阪府出身、57歳。
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財務省は、福田氏の辞任以来約3カ月続いた次官級2人が不在という異例の事態にようやく終止符を打った。岡本氏の後任の主計局長には太田充理財局長(58)、太田氏の後任の理財局長に可部哲生総括審議官(55)が就いた。
信頼回復に向け、岡本氏を議長とする「コンプライアンス(法令順守)推進会議」を新設。第三者の視点を取り入れるため、ボストンコンサルティンググループの秋池玲子シニア・パートナー&マネージング・ディレクター(54)を参与に迎えた。組織立て直しを急ぐ。
次官選びをめぐっては、文書改ざんが行われたとされる17年2―4月に、岡本氏が国会対応や文書管理の責任者である官房長だったため、複数の人事案が浮上した。水面下で幹部人事を官邸主導で進めたい内閣人事局との綱引きがあったと見る向きもある。
麻生太郎財務相は“最強官庁”と呼ばれる財務省の再生に取り組むとした。今回の幹部人事について「これがベスト。岡本氏はこれまで組織の中核を担ってきた。財務省の再生にふさわしい人物だと思っている」とし、岡本氏の次官就任を疑問視する見方を一蹴した。
文科省は27日付で、退任した伊藤洋一文部科学審議官の後任として、山脇良雄内閣府政策統括官(58)を登用。文科省の支援事業をめぐる汚職事件で逮捕、起訴された佐野太前科学技術・学術政策局長に代わり、戸谷一夫事務次官が兼務する形にしていたが、兼務を解き、松尾泰樹官房審議官(55)を充てた。官房総括審議官には生川浩史内閣府官房審議官(57)を起用した。
経産省は「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題で国会に参考人として招致されていた柳瀬唯夫経済産業審議官が退官。後任に前商務情報政策局長の寺沢達也氏(57)が就いた。
世耕弘成経産相は柳瀬氏について「今回の人事と(加計問題)は関係ない」と否定。だが省内には、実力者がわずか1年で退官することを惜しむ声もある。
寺沢氏は通商政策に精通し、省内でも「才人」「何事にも手を抜かない」と評される。保護主義をひた走るトランプ米政権との熾烈(しれつ)な交渉をどのように乗り切っていくかが注目される。
財務省
◆財務事務次官
岡本薫明氏(おかもと・しげあき)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年官房長、17年主計局長。愛媛県出身。
◆総括審議官
茶谷栄治氏(ちゃたに・えいじ)86年(昭61)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。12年秘書課長、15年主計局次長。奈良県出身、55歳。
◆主計局長
太田充氏(おおた・みつる)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年総括審議官、17年理財局長。島根県出身。
◆関税局長
中江元哉氏(なかえ・もとや)84年(昭59)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。12年8月官房審議官(主税局担当)、同年12月首相秘書官。大阪府出身、57歳。
◆理財局長
可部哲生氏(かべ・てつお)85年(昭60)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年主計局次長、17年総括審議官。東京都出身。
◆国税庁長官
藤井健志氏(ふじい・たけし)85年(昭60)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。16年主計局次長、17年国税庁次長。島根県出身。
◆財務総合政策研究所長
美並義人氏(みなみ・よしと)84年(昭59)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。15年主計局次長、16年近畿財務局長。奈良県出身、58歳。
経済産業省
◆経済産業審議官
寺沢達也氏(てらざわ・たつや)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。08年経済産業政策局経済産業政策課長、11年首相秘書官、13年商務流通保安審議官、15年貿易経済協力局長、17年商務情報政策局長。大阪府出身。
◆官房長
糟谷敏秀氏(かすたに・としひで)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。08年経済産業政策局企業行動課長、11年通商政策局通商機構部長、13年総括審議官、15年製造産業局長、17年経済産業政策局長。兵庫県出身。
◆総括審議官
田中茂明氏(たなか・しげあき)87年(昭62)慶大経卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。10年製造産業局自動車課長、12年内閣官房内閣参事官(日本経済再生総合事務局)、15年官房審議官(経済社会政策担当)、17年同(競争力担当)。東京都出身、54歳。
◆経済産業政策局長
新原浩朗氏(にいはら・ひろあき)84年(昭59)東大経卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。07年経済産業政策局産業組織課長、10年首相秘書官、11年資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長、16年内閣府政策統括官(経済財政運営担当)。福岡県出身。
◆産業技術環境局長
飯田祐二氏(いいだ・ゆうじ)88年(昭63)東大経卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。08年経済産業政策局産業再生課長、11年官房参事官(エネルギー政策担当)、13年資源エネルギー庁官房総合政策課長、14年官房秘書課長、17年総括審議官。埼玉県出身、55歳。
◆製造産業局長
井上宏司氏(いのうえ・こうじ)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。11年官房審議官、12年資源エネルギー庁次長、14年地域経済産業審議官、15年産業技術環境局長、16年農林水産省食料産業局長。大分県出身。
◆商務情報政策局長
西山圭太氏(にしやま・けいた)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。07年経済産業政策局産業構造課長、09年産業革新機構執行役員企画調整室長、12年官房審議官(経済社会政策担当)、14年原子力損害賠償支援機構連絡調整室次長兼東京電力取締役。神奈川県出身、55歳。
◆資源エネルギー庁長官
高橋泰三氏(たかはし・たいぞう)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。05年製造産業局産業機械課長、13年資源エネルギー庁電力・ガス事業部長、14年資源エネルギー庁次長、16年官房長。東京都出身。
文部科学省
◆文部科学審議官
山脇良雄氏(やまわき・よしお)84年(昭59)東大院工修了、同年科学技術庁(現文科省)入庁。05年北大教授、12年官房審議官、14年国際統括官、16年内閣府政策統括官。兵庫県出身。
◆科学技術・学術政策局長
松尾泰樹氏(まつお・ひろき)87年(昭62)東大院理修了、同年科学技術庁(現文科省)入庁。16年官房審議官。青森県出身。
◆官房総括審議官
生川浩史氏(いくかわ・ひろし)86年(昭61)東大院工修了、同年科学技術庁(現文科省)入庁。15年官房審議官、16年内閣府官房審議官。大阪府出身、57歳。
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