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雇われ社長、実権者に貸付強要され倒産に追い込まれる

 登記上で社長の肩書を手に入れるだけならば、わずかな資金と諸手続きを済ませればよいだけの話だが、名実ともに社長になるのは難しいことだ。ただし、世の中には“雇われ社長”と呼ばれるポジションがあり、外的要因に大いに左右されながら社長の座に就くケースもある。

 2018年6月13日に破産手続き開始決定を受けたスピートも、実質的な雇われ社長が就任していた可能性が高い企業の1社だ。同社は09年11月の設立。不動産の売買事業や賃貸事業を展開し、一時は年商約20億円を計上していた。しかし、実権者が別にいると目されており、稼いだ利益が他社に流出していた疑いが持たれている。

 複数ある資金流出のなかで、1番の痛手となっていたのは、業績不振企業A社への資金融資。資金繰りが枯渇して経営不振が続く小売業A社に対して、同社は資金貸し付けを行っていた。

 合理的に考えれば、A社に資金融通するべきではないが、実権者の「A社を支援するように」という言葉に逆らえず、最終的に同社からの貸付金は約4000万円もの金額になった。

 すると当然、同社の資金繰りは悪化。銀行借り入れできるはずもなく、金融ブローカーから資金調達するほか、社長個人でも融資を受けてしのいでいたが、支払い遅延が発生し倒産した。

 社長の青木氏と実権者の関係を調べると、直接的な出資関係は確認できないものの、青木氏の前職の会社の社長が実権者。長年築かれた上下関係を覆すことができないまま、経営を続けてきたという事だろう。

 大企業のグループ会社と比べ、こうした中小企業の関係性は分かりづらいことが多いが、それでも実態把握に努めることが重要だ。“雇われ社長”が実権者の手先だった場合、自社を存続させる合理的な判断よりも優先させる“他の何か”がある可能性を忘れてはいけない。
(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2018年7月10日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
企業情報 (株)スピート 住所:東京都港区芝大門1−2−8 代表:青木広法氏 資本金:500万円 年売上高:約9億7700万円(13年6月期) 負債:約8700万円

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