重松大輔スペースマーケット社長 「空間と時間を価値として細かく再定義」
シェアリングを創る人たち~価値の大変革~(2)
スペースマーケットは物件の余剰スペースを時間貸しするベンチャー。手がけるサービスは、若者の交流や企業の研修、事業者のイベントなど多様なシーンで利用されている。15日には話題の民泊市場へ本格参入し、「スペースマーケットSTAY」を始めた。連載2回目は空間のシェアの今後について、スペースマーケットの重松大輔社長に聞いた。
-サービスの利用者の間ではどのように活用されていますか。
「時間貸しサービスは利用実績が前年同月比で3倍以上の成長を遂げている。これまではBツーB(企業間)の割合が多かったが、2018年からは大学生など若者の利用が拡大した。すでに時間貸しサービスを利用する『ゲスト』と物件を提供する『ホスト』の間ではシェアする文化が根付いたと言えるだろう」
「年末年始の飲み会や3月の送別会、4月の花見や新歓コンパなどシーズン毎に当社が扱う物件を利用するケースが増えた。足元の旬な利用で言えば、サッカー観戦と女子会を同時に開催したという事例がある。また、コスプレイヤーの撮影会や参加交流型サイト(SNS)用の撮影など他人に邪魔されない空間を作るという点でも適している」
「一方、ホスト側も拡大している。ある飲食店を持つホストは、夜やランチタイム以外に時間貸しを活用していたが、あまりの人気にメーンの飲食業をやめて時間貸しで稼ぐことに本腰を入れた。セキュリティー用カメラやスマートロック機能などを用いることで安心安全が担保できるという認識が広まってきた。(時間貸しサービスは)通常のシェアリングビジネスとは違い、多くの人を巻き込む。そのため、利用した人々の中でまた拡散される傾向にある」
-6月15日に宿泊住宅事業法(民泊新法)が施行しました。民泊参入者として意気込みは。
「正直、民泊新法に加えて自治体ごとの上乗せ条例や独自規制などがあり、厳しい状況ではある。ただ、あまり悲観もしていない。民泊も時間貸しも、空いている空間や時間を効率的にシェアするという点では本質的に一緒だ。現代では誰もが受け入れられる考えであり、民泊事業への期待は大きい」
-民泊事業は既存の時間貸しサービスとのシナジーはありますか。
「シナジーではないが、規制によって撤退した民泊事業者が当社の時間貸しのホストとして登録するケースが増えている。不動産や物件を遊ばせるよりは、時間貸しで活用したいという需要だ。こうしたホストは潜在的な民泊事業者だ。その受け皿となっているため、今後、民泊が普及すれば、民泊のホストとして登録が増えるだろう。簡易宿舎などを含めると、宿泊可能物件は約250件まで拡大している」
「また、当初はホストが民泊と時間貸しができる物件として2重登録する、いわゆる“二毛作”を考えていた。ゲストとしても時間貸しから宿泊へ、シームレスに利用できるシーンを想定していた。ただ、今は禁止されてしまっている。今後、多様なニーズに応え、空き家や空きスペースを活用するためには更なる議論が必要だろう」
-業界では米Airbnb(エアビーアンドビー)が巨人として君臨しています。
「訪日外国人向けではエアビーは強力なライバルだが、日本人に対してはまだまだシェアの文化を広げることが肝心になる。民泊は本来、内向的なビジネスだ。もっと日本らしさや文化などを深めた民泊を行うには地域や自治体などからの信頼が必要だ。そのために岐阜県関市や西武信用金庫(東京都中野区)などと民泊に関する提携を今月、結んだ。地域の金融機関や上乗せ条例を掲げる自治体と関係性を築き、市場を開放できるかが重要になる。今、ここで関係性の深化に注力することが競合他社との差別化につながる」
-堅実な進め方ですね。
「時間貸しもそうだったが、まずはBツーB向けなど参入障壁が高く、厳しい領域からこじ開けていった。民泊も企業の合宿などBツーB向けなどの狭い領域から始めてもいいかもしれない。そのために、ケータリングなど民泊に関連する支援も手がけていきたい。そこで培った安定性が強みになると確信している。さらに国内ばかりでもつまらないと感じている。日本という厳しい環境で鍛えることで、海外展開なども挑戦できるはずだ」
-民泊の海外展開は競合がひしめいています。
「時間貸しサービスを軸に考えていきたい。確かに民泊関連の事業者は世界的にも増えている。だが、幸い物件の時間貸しを定義したシェアリングサービスはほとんどない。米国のベンチャーが数社あるが、中国やアジアなどでは聞いたことがない。一方で、民泊が拡大している市場では時間貸しは許容できるだろう。むしろ、民泊以上に空いている時間や空間を細かく切って、価値として再定義するビジネスは有効だ」
(文=渡辺光太、写真=北山哲也、デザイン=堀野綾)
【01】小泉文明メルカリ社長 個人売買の権限と能力を開放
【02】重松大輔スペースマーケット社長 空間と時間を価値として細かく再定義
【03】甲田恵子アズママ社長 子育てシェアという最大の難所に挑む
【04】中山亮太郎マクアケ社長 進化するクラファン、金融機関や自治体へ拡大
若者を中心に利用が拡大
-サービスの利用者の間ではどのように活用されていますか。
「時間貸しサービスは利用実績が前年同月比で3倍以上の成長を遂げている。これまではBツーB(企業間)の割合が多かったが、2018年からは大学生など若者の利用が拡大した。すでに時間貸しサービスを利用する『ゲスト』と物件を提供する『ホスト』の間ではシェアする文化が根付いたと言えるだろう」
「年末年始の飲み会や3月の送別会、4月の花見や新歓コンパなどシーズン毎に当社が扱う物件を利用するケースが増えた。足元の旬な利用で言えば、サッカー観戦と女子会を同時に開催したという事例がある。また、コスプレイヤーの撮影会や参加交流型サイト(SNS)用の撮影など他人に邪魔されない空間を作るという点でも適している」
「一方、ホスト側も拡大している。ある飲食店を持つホストは、夜やランチタイム以外に時間貸しを活用していたが、あまりの人気にメーンの飲食業をやめて時間貸しで稼ぐことに本腰を入れた。セキュリティー用カメラやスマートロック機能などを用いることで安心安全が担保できるという認識が広まってきた。(時間貸しサービスは)通常のシェアリングビジネスとは違い、多くの人を巻き込む。そのため、利用した人々の中でまた拡散される傾向にある」
逆境の民泊参入
-6月15日に宿泊住宅事業法(民泊新法)が施行しました。民泊参入者として意気込みは。
「正直、民泊新法に加えて自治体ごとの上乗せ条例や独自規制などがあり、厳しい状況ではある。ただ、あまり悲観もしていない。民泊も時間貸しも、空いている空間や時間を効率的にシェアするという点では本質的に一緒だ。現代では誰もが受け入れられる考えであり、民泊事業への期待は大きい」
-民泊事業は既存の時間貸しサービスとのシナジーはありますか。
「シナジーではないが、規制によって撤退した民泊事業者が当社の時間貸しのホストとして登録するケースが増えている。不動産や物件を遊ばせるよりは、時間貸しで活用したいという需要だ。こうしたホストは潜在的な民泊事業者だ。その受け皿となっているため、今後、民泊が普及すれば、民泊のホストとして登録が増えるだろう。簡易宿舎などを含めると、宿泊可能物件は約250件まで拡大している」
「また、当初はホストが民泊と時間貸しができる物件として2重登録する、いわゆる“二毛作”を考えていた。ゲストとしても時間貸しから宿泊へ、シームレスに利用できるシーンを想定していた。ただ、今は禁止されてしまっている。今後、多様なニーズに応え、空き家や空きスペースを活用するためには更なる議論が必要だろう」
-業界では米Airbnb(エアビーアンドビー)が巨人として君臨しています。
「訪日外国人向けではエアビーは強力なライバルだが、日本人に対してはまだまだシェアの文化を広げることが肝心になる。民泊は本来、内向的なビジネスだ。もっと日本らしさや文化などを深めた民泊を行うには地域や自治体などからの信頼が必要だ。そのために岐阜県関市や西武信用金庫(東京都中野区)などと民泊に関する提携を今月、結んだ。地域の金融機関や上乗せ条例を掲げる自治体と関係性を築き、市場を開放できるかが重要になる。今、ここで関係性の深化に注力することが競合他社との差別化につながる」
厳しい領域からこじ開ける
-堅実な進め方ですね。
「時間貸しもそうだったが、まずはBツーB向けなど参入障壁が高く、厳しい領域からこじ開けていった。民泊も企業の合宿などBツーB向けなどの狭い領域から始めてもいいかもしれない。そのために、ケータリングなど民泊に関連する支援も手がけていきたい。そこで培った安定性が強みになると確信している。さらに国内ばかりでもつまらないと感じている。日本という厳しい環境で鍛えることで、海外展開なども挑戦できるはずだ」
-民泊の海外展開は競合がひしめいています。
「時間貸しサービスを軸に考えていきたい。確かに民泊関連の事業者は世界的にも増えている。だが、幸い物件の時間貸しを定義したシェアリングサービスはほとんどない。米国のベンチャーが数社あるが、中国やアジアなどでは聞いたことがない。一方で、民泊が拡大している市場では時間貸しは許容できるだろう。むしろ、民泊以上に空いている時間や空間を細かく切って、価値として再定義するビジネスは有効だ」
(文=渡辺光太、写真=北山哲也、デザイン=堀野綾)
シェアリングを創る人たち~価値の大変革~
【01】小泉文明メルカリ社長 個人売買の権限と能力を開放
【02】重松大輔スペースマーケット社長 空間と時間を価値として細かく再定義
【03】甲田恵子アズママ社長 子育てシェアという最大の難所に挑む
【04】中山亮太郎マクアケ社長 進化するクラファン、金融機関や自治体へ拡大
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