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ジャパンディスプレイ、「iPhone液晶」受注で業績一息か

経営体制変更、「なんとしても当期黒字化を達成」
ジャパンディスプレイ、「iPhone液晶」受注で業績一息か

アップルに業績が左右されるJDI(東入来会長兼CEO)

 4期連続の当期赤字になったジャパンディスプレイ(JDI)がトップ体制を変更しV字回復を狙う。東入来信博会長兼最高経営責任者(CEO)は留任するが、6月の株主総会を経て月崎義幸副社長が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格。有賀修二社長は技術顧問に就任し、顧客対応や技術支援に携わる予定だ。

 JDIの17年度の業績は、営業損益が617億円の赤字(前期は185億円の黒字)、売上高が前期比18・9%減の7175億円。米アップルによるスマートフォンへの有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレー採用や、中国などスマホ市場の減速が響いた。構造改革費1423億円を特別損失として計上した影響で、当期損益は2472億円の赤字(前期は316億円の赤字)だった。

 ただ足元では米アップルの18年発売予定のスマートフォン向けに、4辺狭額縁の新型液晶の受注が決まったもよう。7―8月頃から工場の稼働率が上がるとみられ、次の仕込みができる多少の猶予はできた。東入来会長兼CEOは「(18年度は)なんとしても当期黒字化を達成したい」と話す。

 JDIが対応しなければならない課題は大きく二つある。有機エレクトロELの量産化に向けた外部資本提携交渉と、スマホ向けパネル事業の変動性をカバーする事業の多角化だ。ただ有機EL量産化については「風向きが変わった。市場を見極めじっくり判断する」(東入来会長)と、慎重に進める考えだ。

 17年にアップルが発売した有機EL搭載スマホ「iPhone(アイフォーン)X(テン)」は、経営不振が続いているJDIへの追い打ちになるとみられていた。

 しかし高価格などを理由に販売は低迷。当初、アップルは18年の新製品3モデル全てに有機ELを採用するとみられていたが、有機ELの不振を受け、1モデルは液晶になる見通しだ。こうしたアップルの動向は、他のスマホメーカーにも波及する可能性が高い。

 液晶への追い風が吹く中でJDIが切り札とするのは、4辺を超狭額縁とした液晶パネル「フルアクティブ=FA」だ。シャオミなど中国スマホメーカーへの採用が進み「販売は好調。18年はさらに顧客数が増え、売り上げに貢献する見通し」(JDI幹部)という。

 スマホ向け液晶パネルを手がける茂原工場(千葉県茂原市)や、白山工場(石川県白山市)では、夏頃からの稼働率向上が見えてきた。17年度は60%ほどだった工場全体の稼働率は「18年4―12月期に90%程度まで向上する」(同)と打ち明ける。

 ただし売り上げに占めるアップル向けの割合は、15年3月期に41・8%だったのが、17年3月期には53・8%まで上昇した。アップルが方針を変えれば、業績が振り回される状況は、より深刻になっている。車載向けや新規事業を育成し、スマホ事業に左右されにくい体質に変える必要がある。
日刊工業新聞2018年5月15日の記事に加筆
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
2017年度は工場の統廃合や人員削減など、大規模な構造改革で経営不振の止血を図った。その成果を結実させられるか。2年目を迎えた東入来体制は、正念場を迎える。

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