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製造業の街から音楽都市へ。浜松を変えた女性編集長

『浜松百撰』の前編集長、安池澄江さんが残したもの
製造業の街から音楽都市へ。浜松を変えた女性編集長

「浜松百撰」公式フェイスブックページより

 製造業の街から音楽都市へ―。東西の狭間にあり、独自の文化が生まれないと市民らが自嘲したかつての浜松市。それを変えた原動力のひとつに、ある女性の存在があった。

 創刊60周年を迎えたばかりのタウン誌『浜松百撰』の前編集長、安池澄江さんが1月初旬、91歳で他界した。米映画『ドリーム』を鑑賞した翌日、いつもの仲間とマージャンを楽しんだ後、テーブルにうつぶせる姿が最期だったという。

 浜松百撰は東京の『銀座百点』に倣って地域の店舗や企業を会員とし、その顧客に店頭などで無料配布している。元新聞記者の安池さんは赤い車で取材に営業に駆け回った。長身でさっぱりとした性格が店主や社長を味方に付け、身近な情報を発信し続けた。

 コンサートで訪れた歌手に浜松の魅力や欠点を楽屋裏でインタビュー。来訪した読者を紅茶でもてなし、文学仲間らを巻き込んで「文芸賞」や「1000円シアター」を企画し、モノづくりに負けない文化都市の土壌をつくった。

 学生時代、帰郷の際に安池さんの元でアルバイトをした。新聞記者を志す時も背中を押してもらった。絶筆となった浜松百撰1月号の後記には「元気よく動き、元気よく遊び」と1年の計をつづっていた。
日刊工業新聞2018年1月31日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
恥ずかしながら浜松百撰も安池さんの存在も存じ上げなかった。この記事を書いたであろう記者がいかに安池さんから刺激を受けたかよく分かる。

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