ロボットという“身体”を得たディープラーニング

人間に追いつく日はもうすぐ!?

 これまでさまざまなアプローチでAI(人工知能)研究は取り組まれてきたものの、大きな成果に結びつかなかった。そこに登場したのが、機械学習の一種であるディープラーニング(深層学習)だ。カナダ・トロント大学、グーグルなどの研究成果によりディープラーニングが注目され、AIブームが再来した。

ディープラーニングにはない“主体性”


 ディープラーニングへの期待が高まる中、人間と同じことを考え、実行できるようになると思われやすいが、ディープラーニングには埋められないものがある。それは、“主体性”という概念だ。

 人間には主体性がある。つまり対象を見る時、その多様な可能性を感じつつも、自らの状況に合わせてダイナミックにその意味が変わる。しかし、そのような見方は現在のディープラーニングにはない。主体性という概念はなく、視覚(画像データ)だけで対象を“識別”しているのみである。

 ある画像を見て、人間はその背景にある行為の可能性についても考えるが、ディープラーニングは画像データだけで判断しなければならないのだ。人間はさまざまな判断をする上で、常に自らの身体をベースにイメージする。そういう意味からも、ディープラーニングにも身体を与えれば、人間に近い判断が可能になるのではないだろうか。

身体を得て、人間に近づく


 尾形哲也早稲田大学理工学術院教授が取り組んだのが、感覚と運動の統合学習だ。ロボットという身体を与え、ロボットにディープラーニングを応用した。
感覚と運動の統合学習の研究を進める尾形哲也教授


 人間は鉛筆なら書き、包丁なら切り、傘なら差すというように、対象となるものの違いに応じて行動を選択する。そこで、ロボットには動作の対象としてベルやボールを与え、腕による運動(関節角度情報)をダイレクトティーチングで教え、内蔵カメラから入力した画像情報とともにディープラーニングで学習させた。

 それにより、運動から映像を思い浮かべること、映像から運動を思い浮かべることが内部プログラムにより可能となった。カメラをオフにしても、腕の動きに合わせた映像がロボットの内部で生成される。こうして、感覚と運動の統合が前進した。
無造作に置かれたタオルを畳むロボット。タオルの形状などを自ら理解する


ディープラーニングにできること、できないこと


 今後、ディープラーニングを利用した画像認識、音声認識、自然言語処理を活用することで、生産、医療、自動運転など多岐にわたるビジネス領域で成功例が出てくるだろう。ディープラーニングの可能性は拡大する一方だが、過度な期待には注意したい。まだ、ディープラーニングにできないことは多々あるからだ。

 まず、ディープラーニングの限界、適した使い方などを検討する必要があることは言うまでもない。それらを明確にし、理解することでディープラーニングの応用分野は広がり、ビジネスでの成功が近づく。

「ディープラーニングがロボットを変える」
(尾形哲也著、日刊工業新聞社)

「ディープラーニングがロボットを変える」(尾形哲也著、日刊工業新聞社で発売中)

ニュースイッチオリジナル
ディープラーニングがロボットを変える

矢島 俊克

矢島 俊克
08月02日
この記事のファシリテーター

ディープラーニングが“身体”を得ることで、画像情報と運動情報をミックスさせた学習が可能になる。ディープラーニングの進化を試みる手法の1つとして興味深い。医療分野では、すでにディープラーニングの成果が出始めている。ロボットにおけるディープラーニングの活用でも有力な応用分野だ。医療ロボットは高単価の設定も可能なため、投資の回収も見込みやすい。

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