東京の伝統工芸から「ティファニーにも勝てる製品を」

東京五輪のエンブレムにも使用された「東京七宝」

 金や銀など金属製の下地にガラス質の釉薬をのせて800度Cで焼き、職人の勘でわずかな薄さを研磨していく東京七宝。勲章や校章などに使われるが、宝石のような美しい彩りと輝きを持つ特徴を生かした指輪「トウキョウカボッション」が2013年にグッドデザイン賞を受賞した。

 「他人がやらないことをやる。どうせならティファニーにも勝てる製品を作ろうと学芸員と話し合った」と語るのは、畠山七宝製作所(東京都荒川区、03・3801・4844)の畠山弘代表。東京都美術館の企画でジュエリーデザイナーの村田繭衣氏とコラボした製品がトウキョウカボッションだった。

 トウキョウの風景やトウキョウからイメージする色味を七宝焼の技法で表現。4デザイン中、2デザインには畠山代表が得意とする技法「透胎七宝」を採用した。下地の一部を切り透かしにすることで光に透けるため、ステンドグラスのような独特の美しさを持つ製品が出来上がった。

 ほかにも菊や梅をイメージし、透胎七宝を用いて作ったペンダント「花紋」は東京都知事賞を受賞。荒川区の活性化に向け、民間非営利団体(NPO)の千住すみだ川(東京都荒川区)と共同で考案した「妖怪七宝ピンズ」など、東京七宝に新たな風を吹かす製品を生み出してきた。

 もともと顧客が決めた型をもらって受注品を作っていた畠山代表がオリジナル製品をつくるきっかけとなったのが、1998年に国内造船大手から客船用商品の製作を頼まれたこと。著名デザイナーと協議しながら製品を生み出す経験を経て01年に秋の桔梗(ききょう)をイメージしたオリジナルペンダントを作った。10色以上を用いた細かい模様で最高の女性を表現したペンダント「アルティメット・レディー」(05年製作)は最も思い入れのある製品だ。

 今後もあえて高度な技法を使った「人がやらないもの、面白いもの」を作っていきたいという。七宝といえば平面が一般的だが、立体的なアクセサリーなどを手がけて差別化を図るなど、独自の商品を考案中だ。
わずかな薄さを研磨する畠山代表

【メモ】東京七宝は江戸時代に幕府のお抱え彫金師だった平田彦四郎が朝鮮半島から渡来した七宝技術を学んだことが始まりとされる。明治時代になると、政府が7代目平田彦四郎に勲章製作を依頼。彦四郎はフランスで勲章の技法を学び、日本初の勲章を作った。勲章の製作が増えるにつれ、多くの弟子を抱えた。この技法の流れをくむのが東京七宝。徽章や校章などを多く手がけ、64年の東京五輪のエンブレムにも使われた。

日刊工業新聞では毎週金曜日に「プレミアムクラフト」を連載中。日本各地に225品目ある伝統的工芸品。高くて日常で使えないイメージがあるが、実際に使ってみると、磨き抜かれた実用性の高さに驚く。数百円から購入でき、海外出張するビジネスマンや訪日外国人の手土産として改めて注目を集めている。デザイナーと連携した新ブランドの設立など、現代の多様な消費者ニーズに合った新たな動きも出てきた。

日刊工業新聞2017年5月19日

昆 梓紗

昆 梓紗
05月19日
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中学の美術室に窯があり、授業で七宝焼きを作ったことがあります。釉薬が溶けるので細かい柄がゆがんでしまったけれど、鮮やかでつるりとした美しさが印象に残っています。この連載では新たな挑戦を続けて進化する伝統工芸品を紹介しています。

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