海底へ、月面へ。海外が日本の若手ロボット人材にチャンスを与えている!

国際競技会で腕試し。国の予算あてにせず自ら資金集め

 海外の技術開発競技会が日本の若手ロボット人材にチャンスを与えている。米EXPRIZE財団が主催する月面探査レースや海底探査レースに日本代表として参戦するのは30代の若手を中心とする大学と企業の混成チームだ。これまで宇宙や深海への挑戦は事業として成立させることが難しかった。国際競技会で技術開発を加速させ、新市場をつくれるか注目される。

海底探査で大型プロジェクト


 海洋研究開発機構と東京大学、九州工業大学、三井造船などの7機関は、米EXPRIZE財団と英蘭系のロイヤル・ダッチ・シェルが開く海底探査レースに参戦する。チーム名は「KUROSHIO」だ。

 水深4000メートルの深海で500平方キロメートルの広域探査を目指す。チームリーダーを務める海洋機構の中谷武志技術研究員は「今後10年間ないだろうビッグチャレンジに、優秀なメンバーと一緒に挑める。必ず成果を残したい」と意気込む。

 KUROSHIOの中核メンバーは4人とも30代だ。一般に若手研究者は教授が獲得した大型研究予算で雇用され、大型予算の一部で要素技術を研究することが多い。

 ロボットシステム全体を構築する大型プロジェクトを自身の手で運営する機会は限られる。KUROSHIOは自律航行型の潜水ロボ3台と海上中継ロボを組み合わせて広域探査する。

 将来は、資源会社などがウェブで海底調査を発注するとロボットが海底を自動測位し、翌日には海底の地形データが納品される調査サービスを構想する。共同代表を務めるソーントン・ブレア東大准教授は「ワンクリック・オーシャン・サービスを実現したい」と力を込める。

月面探査、人材が推進力


チーム「HAKUTO」の月面探査ロボ「SORATO」(ispace提供)

 米EXPRIZE財団と米グーグルが開く月面探査レースも若い世代が推進力だ。チーム「HAKUTO」にはispace(東京都港区)と東北大学の技術者に加え、民間からプロボランティアが40人近く参加している。

 ロボット開発だけでなくイベント企画やPR戦略などの人材の厚みが特徴だ。宇宙開発と教育、企業ブランディングなどを結びつけて事業を成立させた。

 従来の国主導の宇宙探査だけでは産業として自立することが難しかった。民間主導の宇宙開発に挑戦するベンチャーが増え、風向きが変わってきた。ispaceの袴田武史最高経営責任者(CEO)(37)は「専門分野に閉じこもらず、外の人のアイデアを宇宙開発と融合させて事業を進める力が必要」と説明する。必然的に宇宙開発ベンチャーのトップは袴田CEOの同世代が占めている。

 ispaceは月面探査レースを踏み台として宇宙資源開発の事業化を目指す。30代の挑戦は大学生や大学院生など、その下の世代の指針になっている。多様な人材をひき付ける産業に成長するか注目される。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2017年4月28日

小寺 貴之

小寺 貴之
05月02日
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現在の50-60代の大御所は国から予算をとって研究を進めてきましたが、若手は企業やクラウドファンディングなどで他から資金を集める必要がありました。この流れは、海外の国際競技会に参戦したり、そのためのスポンサーを募ったり、ベンチャーを興したりと新しいチャレンジを生んでいます。その中心となっているのが30-40代で、アントレプレナー教育の一つの成果と言えると思います。いまの10-20代はその試行錯誤を勉強できる立場にあります。投資する側は痛い目にも遭っていて、投資する側も投資される側も経験を積んでいます。10-20代が独り立ちする頃には、たぶんいまと同じ手法やストーリーは通用しません。少なくとも横目で見ておいた方が良いと思います。

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