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堀江貴文、ロボットを語る

ロボットが富を築いてくれれば、人間は仕事をしなくても生きていける
 宇宙開発など新しい社会や技術に興味を持ち続ける堀江貴文氏。現在のロボットブームや、人間への脅威論をどのように見ているのか。何ごとも本音で話すホリエモン氏がロボットを語る。

“見せ物”を越えていけ


 ロボットに興味はあるんですが、特に理由はないです。興味を持つことに理由なんて要らないでしょう。(ロボット産業が)投資対象として魅力的かですか?そんなこと考えていませんよ。

 ロボット技術の進化についても、期待とか意見はないです。ロボットがこれからも普及するのは当たり前で、産業用ロボットでも、サービスロボットでも優秀な人たちが技術を進化させてきましたよね。

 「日本はロボット大国」とか「米国に比べてロボット産業の将来が不安」とかいった議論も意味がないと思います。なぜ日本にこだわるんですか。日本はロボットベンチャーの数が少ないという危機感も同様です。普及に向けてステップアップする企業はちゃんとあるし、別にそれが日本の企業である必要はありません。

 ロボット、ロボットと世の中はやし立てますが、ロボットの概念に明確なものがありません。役立てばよくて、例えば「不気味の谷」(顔や動きが人に近づくと人間側がロボットに嫌悪感を起こす現象)を越える研究に取り組むロボットは、まだ見せ物で終わっている。あえて厳しい言い方をしますが、「マツコロイド」のようなロボットは進化が足りない偽物ということでしょう。

 逆に、ロボットと言えるか分からないですが、遠隔地でもその場にいるかのように相互コミュニケーションができる「テレプレゼンス」は利点が多いじゃないですか。米国ではベッドからの操作で“出社”して会議に参加したり“登校”して教授と討論したりしている。

 電話やスカイプで事足りるという人がいるかもしれませんが、画面やカメラに加え、移動台車を備えていて、遠くでもそこにいるような、フェイスツーフェイスの「存在感」を出せる点がいいと思います。台車のない「クビ」というテレプレゼンスの製品もありますが、ちゃんと存在感を出せる。これは新たな身体拡張につながるものでしょう。

人類への脅威論なんて無意味


 ロボット技術や人工知能(AI)の進化に対し「いずれ人間の雇用が奪われる」と危機感を唱える人がいます。たとえ雇用を奪ってもそれで良いじゃないですか。人間が働かなくて助かるんですから。極論すれば、ロボットが富を築いてくれれば、人間は仕事をしなくても生きていけるようになる。古い頭の人は分からないかもしれないけれど、社会保障制度もしっかりしているし、いまも働かないで生きている人は多いですよ。働くことにこだわる必要なんてありません。

 夢の実現や何らかの野望を持って働くことは悪くないですよ。ただ、コンビニエンスストアやスーパーのレジ打ちとか、牛丼屋とか時給が安くて面白みのないバイトや仕事で鬱々(うつうつ)としながら働くのは意味がないでしょう。そういう仕事はやらない方が良い。早いところ辞めてしまった方が、ロボット技術の普及が早まるはずです。誰もやらない仕事は自動化、ロボット化しないと成り立たないのだから、企業としてもやらざるを得ない。

 考えてみてください。ある仕事について、人件費よりも減価償却費が下回れば、機械化やロボット化が進むのは当たり前ですよね。例えば自動ドア。あれもセンサー、制御、アクチュエーター(駆動装置)を備えていてロボットといえばロボットです。
 

身体拡張で10年後にはもっと無駄な仕事がなくなる


 タイなどの発展途上国ではホテルなどにドアマンがいて、客が来ると、まだ開け閉めしています。なぜ自動ドアを導入しないのかと聞くと「自動ドアを設置するよりも人を雇った方が安い」と言う。そういう現実が世の中たくさんあります。日本は自動ドアが普及し、外出すると自分でドアを開ける機会の方が少ないですが、この違いはシンプルに人件費の差でしょう。

 自動車が登場して人力車や飛脚はいなくなくなりました。人類は身体の拡張を繰り返して、我々は過去から想像もつかないような質の高い生活を送れていますよね。自動運転ドローンの産業がどんどん広がっているし、10年後には、さらに進化したロボットが人間から無駄な仕事をなくし、便利な生活を与えてくれます。

【プロフィル】
1972年、福岡県生まれ。SNS株式会社ファウンダー。現在は自身が携わるロケットエンジン開発を中心に、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」のプロデュースを手がけるなど幅広い活躍をみせる。HORIEMON.COMの人気コーナー「WITH」では『世界を変える最先端技術』をテーマに、各界のイノベーターたちに堀江氏自らがインタビュアーとなり取材したものを連載中。

日刊工業新聞2016年1月4日パーソン面に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「マツコとマツコ」のプロデューサーの吉無田さんが興味深い話をしていた。当初、アンドロイドの実験番組を想定していたが、結果的に人間の究極の匠の技がフューチャーされていくものになったという。例えばマツコロイドに怪談はできるのか、という実験。マツコロイドは人間に近づけようと瞬きを何秒に1回する機能あるが何も怖くない。この分野のプロ、稲川淳二さんはクライマックスの時には瞬きをしていない。「いかに人間はすごいか」ということが分かったという。初音ミクの産みの親、クリプトンの伊藤さんは「人間らしさの足りない部分はマツコロイドの個性。足りないところは愛しさになる」と話す。ロボットクリエイターのきゅんくんは「人間と違うものだからこそコミュニケーションロボットとつながりがうまれる」とみる。ロボットを考えることは、人間らしさとは?という問いでもある。

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