宇宙開発は国家からベンチャーの時代へ 高まる注目

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提携を発表する(左から)澤田エイチ・アイ・エス社長、緒川PDエアロスペース社長、片野坂ANAHD社長(12月1日)
 国家的プロジェクトが主体だった宇宙ビジネスの現場で、ベンチャー企業が存在感を高めている。ANAホールディングス(HD)とエイチ・アイ・エスは1日、純民間宇宙機を開発する名古屋市港区のベンチャー企業への出資を発表。ベンチャー企業にとって資金調達は経営を安定させる最重要課題のひとつで大きな注目を集めている。米国で先行する宇宙ベンチャーの事業は、日本でも花開くか。


ANAとHISがベンチャーに出資


 ANAホールディングス(HD)とエイチ・アイ・エスは1日、宇宙旅行をはじめとする民間主導の宇宙輸送の事業化に向け、PDエアロスペース(名古屋市緑区、緒川修治社長、052・621・6996)に出資したと発表した。2023年12月の商業運航開始に向け、ANAは旅客機運航の知見を生かした宇宙機のオペレーション、エイチ・アイ・エスは宇宙旅行の販売などで連携する。

 PDエアロスペースは低コストで利便性の高い宇宙機の運航を目指している。すでに単一のエンジンで宇宙に到達するのに必要なジェットエンジンとロケットエンジンを切り替えられる次世代エンジンを開発している。

 今回、第三者割当増資を実施し、資本金を1000万円から6040万円に引き上げた。出資比率と出資額はエイチ・アイ・エスが10・3%で3000万円、ANAが7%で、2040万円。

 澤田秀雄エイチ・アイ・エス社長は「資金力をつけて開発の速度を上げた方がいい」と出資の意図を説明。緒川PDエアロスペース社長は「商業運航開始までに約170億円の資金が必要。今後も出資者を募る」とした。片野坂真哉ANAHD社長は「技術的な応援の必要があれば検討する」と述べた。

ロボット月面探査レースの「ハクト」、来年打ち上げへ


KDDIとispace(東京都港区)は8月29日、米グーグル主催のロボット月面探査レースに参戦するフライトモデルを公開した。重量を約4キログラムまで抑制した4輪ローバー(写真)で、KDDIは通信技術を支援した。
 ローバーは2本の通信用アンテナを搭載。短距離で高速な2・4ギガヘルツの電波(ギガは10億)と、長距離に届く900メガヘルツの電波(メガは100万)に対応しており、途切れにくくした。2017年1月までに実機を製造し、17年内に月面に打ち上げる。
 同レースは月面にロボット探査機を着陸させて走行させ、画像を地球に送る競技。KDDIは、ispaceが運営する日本チーム「HAKUTO(ハクト)」の通信技術を支援している。
 月面への打ち上げには1キログラム当たり約1億2000万円かかる。このためモデルには炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの軽量素材を採用。従来の試作品の約7キログラムから大幅に軽量化し、月への打ち上げ費用の抑制にも成功した。宇宙空間での振動や熱、放射線などに耐える性能も備えた。

JALやスズキも「ハクト」を支援


 日本航空(JAL)はispace(東京都港区)とコーポレートパートナー契約を締結し、同社が運営する民間月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」を支援する。ispaceは、米グーグルがスポンサーとなっている国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に参加しており、月面探査機「ローバー=写真」を開発している。JALは航空機の整備技術を提供するなど、ハクトを支援し、世界初の民間による月面探査を目指す。

 スズキは7月5日、米グーグル主催のロボット月面探査レースに参戦する日本チーム「HAKUTO」に技術支援すると発表した。パウダー状の砂で覆われた月面をスリップせずに走破する技術や軽量化技術を提供する。ブランドイメージや技術者の士気向上が狙い。

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日刊工業新聞12月2日、11月17日、8月30日、 7月6日、2015年10月29日の記事を抜粋

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