【三菱重工業 劇場型改革の真価#03】手本は独シーメンスにあり

<挑戦する企業アーカイブ>輸出型からの転換は進んだか

 三菱重工業の株主構成は約26%を個人株主が占める。このうち年代別では60―80代が圧倒的に多いという。こうした保有株が海外の機関投資家に流れていく公算は大きい。外国人にも分かりやすい企業形態を志向することは重要。創設されたばかりの「監査等委員会設置会社」に移行したのもそのためだ。

 三菱重工の海外向けの売上高比率は2014年度で53%(前年度49%)。逆に国内拠点の売上高比率は同79%(同86%)に低下した。輸出型からの転換を象徴する。

 財務や経理、人事などで「グローバルプラットフォーム」と称したシステム基盤構築が急ピッチで進む。「電機業界に比べて周回遅れなのは承知しているが、血の通ったガバナンス体系が必要。

 手で触れる連結経営の数値管理システムをつくる」と執行役員経営・財務企画部長兼ドメイン財務総括部長鈴木展雄。グローバルキャッシュマネジメントを含め18年度の国際会計基準(IFRS)移行を見据える。

 「グループ一丸で世界の競合を相手にしないと永続発展はかなわない」と常務執行役員人事・労政グローバル人事担当の廣江睦雄。国内外のグループ従業員8万人近くのデータベースを作成し、16年度から新システムを一部運用する。社長の宮永俊一は「共通の価値観を持った経営層のタレントマネジメントが最重要」と説く。

 グローバルプラットフォームには手本がある。独シーメンスだ。舞台は三菱日立製鉄機械とシーメンスの製鉄機械事業の統合会社、プライメタルズテクノロジーズ(PMT)。三菱日立製鉄機械が51%を握る形で約4倍の規模を持つシーメンスの事業を抱え込んだ。

 宮永は三菱重工が世界企業に駆け上がるトリガーになると踏み、技術や営業、管理など多方面から計20―30人を送り込む。シーメンス流経営について「30万人の世界企業で、とんでもなく進んでいる」とPMT初代最高経営責任者(CEO)の山崎育邦は話す。

 PMTは従業員数約9000人、本社を英ロンドンに置き、オーストリア、ドイツ、東京、広島を軸に世界各地で事業を手がける多国籍企業だ。

 山崎は主要拠点でタウンミーティングを繰り返し、重複製品の整理や拠点統廃合などシナジー創出を急ぐ。並行して社内規則や決済基準を手始めに、国際会計基準による決算、人材開発、報酬、内部統制、ITなど独自の企業形態を16年4月までに完成させる。

 「二つの会社がボーダーレスで融合し、価値を高めることが重要」(山崎)との思いを”As One(一体になる)“というスローガンに込めた。足元の事業環境は厳しいが、PMTが宝の山であるのは確かだ。
(敬称略)

日刊工業新聞2015年12月17日

長塚 崇寛

長塚 崇寛
04月21日
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2016年12月末時点で、海外売上高比率は56%となった。北米(18%)を筆頭にアジア(17%)、欧州(11%)と続く。世界的な鉄冷えから、足元のPMTの事業は苦戦気味だが、組織集約やビジネスセグメントの再編などで、収益体質の改善を加速。年間1億ユーロの収益改善を目指している。米ゼネラル・エレクトリックや独シーメンスといった世界の重工メーカーに肩を並べられる日は来るのか。三菱重工の挑戦は続く。

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