あの巨艦・三菱重工が「5兆円」目指し矢継ぎ早に事業再編に乗り出した!
農機、クレーンに続き工作機械。「宮永改革」で製品戦略を再構築。そして次は?
三菱重工業は26日、10月1日付で工作機械事業を分社すると発表した。販売会社の三菱重工工作機械販売(大阪市淀川区)に三菱重工本社の工作機械製造部門を統合する。製販一体の専業会社に改め、意思決定を迅速化、経営責任をより明確にする。三菱重工は2013年の宮永俊一社長就任以降、事業再編を加速している。同日、油圧機械と加速器、高度道路交通システム(ITS)の各事業を機械・鉄構製品事業の子会社に集約することも発表した。
工作機械事業部を会社分割方式で、三菱重工工作機械販売に承継させる。新社名や統合後の売上高など経営目標は明らかにしていない。現在の事業売上高は500億円規模で黒字を確保しているようだ。
これまで国内営業を販売会社が担い、製造と主に海外営業を本社がそれぞれ担ってきた。製造と国内外販売を1社にまとめ、顧客対応などで機動力を高める。専業会社の本社所在地は工作機械製造の栗東工場(滋賀県栗東市)に移す。
今回の再編の背景は工作機械市場の需要地の変化がある。工作機械の需要は08年のリーマン・ショックを境に、外需寄りに大きく変わった。06年までは受注額ベースで内需が過半を占めていたが、足元ではおよそ70%が外需だ。世界に広がる需要の取り込みや、多様化する顧客要求を速やかに製品に反映させるには、製販分離の体制が時代にそぐわなくなったと言えそうだ。
同社は4事業ドメインの役割と経営責任を明確にするガラス張り経営を進行中。17年度の売上高5兆円、株主資本利益率(ROE)10%以上といった計画達成に向け、製品戦略を再構築している。
独シーメンスとの製鉄機械事業統合のほか、5月だけでも住友重機械工業への産業用クレーン譲渡や農業機械で印メーカーとの提携など矢継ぎ早に再編策を打ち出している。
今秋に油圧機械など3事業を子会社に移管
また同社は26日、油圧機械、加速器、高度道路交通システム(ITS)の3事業を、子会社の三菱重工メカトロシステムズ(MHI―MS、神戸市兵庫区)に10月から11月にかけて移管すると発表した。3事業をそれぞれ同社の既存事業と連携させ、製品単体の販売からシステム化に戦略を転換する。機械、環境、鉄構装置など事業領域の広いMHI―MSに移管したほうが、システム化しやすいと判断した。
油圧機械、加速器事業を10月1日付で、ITS事業を11月1日付で移管する。製造拠点は変更しない。ITS事業と立体駐車場を組み合わせるなど、MHI―MSの事業と連携させてシステム化を図る。ITS事業はこれまで国内保守業務をMHI―MSに任せていたため、一本化によって事業を効率化する。
加速器事業はメカトロ技術との融合で、加速器を応用したシステム製品を開発できると見込む。油圧機械事業は試験装置など油圧技術を用いる事業全般に技術を適用する。MHI―MSは事業領域の拡大により、時期ごとの仕事量の差を減らす効果を見込む。
農機事業ではインドのマヒンドラと提携
三菱重工業は21日、農業機械事業で印マヒンドラ・マヒンドラ(M&M)と提携すると発表した。M&Mが30億円を出資し、三菱重工グループの三菱農機(松江市東出雲町)の株式の33%を握る。三菱農機はM&Mに対しトラクターのOME(相手先ブランド)供給や歩行式田植機の技術供与などを行っている。国内農機市場の漸減傾向が続く中、M&Mとの提携範囲を広げ、農機需要が広がるアジアや北米、アフリカなど海外市場に活路を見いだす。
三菱農機が10月1日付で実施する第三者割当増資をM&Mが引き受ける。現状は三菱重工子会社が100%出資しているが、増資後の議決権比率は三菱重工67%、M&M33%となる予定。
三菱農機の売上高は2014年度で490億円(13年度598億円)。営業損益で赤字が続いていたが、2013年度から黒字に転換。ただ、利益率は低く、構造改革を進める中、昨年末からM&Mとの提携拡大検討を進めてきた。
三菱農機は03年からM&M米国法人向けにトラクターのOEM供給を開始。三菱農機の売上高に占める海外比率は約15%で9割超を米国向けが占める。協業拡大を機に15年度は米国売上高100億円(14年度68億円)、将来130億円を目指す。
M&Mはインドの自動車・農機大手。トラクター分野では生産台数年26万台(事業規模30億ドル)で世界首位という。インドや米国、中国に工場を持つ。今後、両社のブランドを維持しながら、販売網相互融通や共同部品調達・製品開発を進め、シナジーを創出する。
工作機械事業部を会社分割方式で、三菱重工工作機械販売に承継させる。新社名や統合後の売上高など経営目標は明らかにしていない。現在の事業売上高は500億円規模で黒字を確保しているようだ。
これまで国内営業を販売会社が担い、製造と主に海外営業を本社がそれぞれ担ってきた。製造と国内外販売を1社にまとめ、顧客対応などで機動力を高める。専業会社の本社所在地は工作機械製造の栗東工場(滋賀県栗東市)に移す。
今回の再編の背景は工作機械市場の需要地の変化がある。工作機械の需要は08年のリーマン・ショックを境に、外需寄りに大きく変わった。06年までは受注額ベースで内需が過半を占めていたが、足元ではおよそ70%が外需だ。世界に広がる需要の取り込みや、多様化する顧客要求を速やかに製品に反映させるには、製販分離の体制が時代にそぐわなくなったと言えそうだ。
同社は4事業ドメインの役割と経営責任を明確にするガラス張り経営を進行中。17年度の売上高5兆円、株主資本利益率(ROE)10%以上といった計画達成に向け、製品戦略を再構築している。
独シーメンスとの製鉄機械事業統合のほか、5月だけでも住友重機械工業への産業用クレーン譲渡や農業機械で印メーカーとの提携など矢継ぎ早に再編策を打ち出している。
今秋に油圧機械など3事業を子会社に移管
また同社は26日、油圧機械、加速器、高度道路交通システム(ITS)の3事業を、子会社の三菱重工メカトロシステムズ(MHI―MS、神戸市兵庫区)に10月から11月にかけて移管すると発表した。3事業をそれぞれ同社の既存事業と連携させ、製品単体の販売からシステム化に戦略を転換する。機械、環境、鉄構装置など事業領域の広いMHI―MSに移管したほうが、システム化しやすいと判断した。
油圧機械、加速器事業を10月1日付で、ITS事業を11月1日付で移管する。製造拠点は変更しない。ITS事業と立体駐車場を組み合わせるなど、MHI―MSの事業と連携させてシステム化を図る。ITS事業はこれまで国内保守業務をMHI―MSに任せていたため、一本化によって事業を効率化する。
加速器事業はメカトロ技術との融合で、加速器を応用したシステム製品を開発できると見込む。油圧機械事業は試験装置など油圧技術を用いる事業全般に技術を適用する。MHI―MSは事業領域の拡大により、時期ごとの仕事量の差を減らす効果を見込む。
農機事業ではインドのマヒンドラと提携
三菱重工業は21日、農業機械事業で印マヒンドラ・マヒンドラ(M&M)と提携すると発表した。M&Mが30億円を出資し、三菱重工グループの三菱農機(松江市東出雲町)の株式の33%を握る。三菱農機はM&Mに対しトラクターのOME(相手先ブランド)供給や歩行式田植機の技術供与などを行っている。国内農機市場の漸減傾向が続く中、M&Mとの提携範囲を広げ、農機需要が広がるアジアや北米、アフリカなど海外市場に活路を見いだす。
三菱農機が10月1日付で実施する第三者割当増資をM&Mが引き受ける。現状は三菱重工子会社が100%出資しているが、増資後の議決権比率は三菱重工67%、M&M33%となる予定。
三菱農機の売上高は2014年度で490億円(13年度598億円)。営業損益で赤字が続いていたが、2013年度から黒字に転換。ただ、利益率は低く、構造改革を進める中、昨年末からM&Mとの提携拡大検討を進めてきた。
三菱農機は03年からM&M米国法人向けにトラクターのOEM供給を開始。三菱農機の売上高に占める海外比率は約15%で9割超を米国向けが占める。協業拡大を機に15年度は米国売上高100億円(14年度68億円)、将来130億円を目指す。
M&Mはインドの自動車・農機大手。トラクター分野では生産台数年26万台(事業規模30億ドル)で世界首位という。インドや米国、中国に工場を持つ。今後、両社のブランドを維持しながら、販売網相互融通や共同部品調達・製品開発を進め、シナジーを創出する。
日刊工業新聞2015年05月22日/27日3 面