トランプ氏「パリ協定」離脱公言も、州政府や企業が温暖化対策へ動く

どうなる環境・エネルギー政策の行方

 米トランプ政権の温暖化対策に世界が注視している。トランプ氏は就任前、気候変動問題解決に積極的だった前政権を否定し、「パリ協定」からの離脱を公言してきた。政権発足後は具体的な発言を控えているが、2018年度予算案で気候変動対策費の大幅削減を打ち出した。3月に開かれたシンポジウムなどに登壇した研究者の見解から、新政権の政策を探った。

 国際環境経済研究所の松本真由美理事は2月、訪米して商工会議所などに新政権で予想される米国の環境政策を取材した。松本氏によると「パリ協定を無視する」という声が多く聞かれたという。離脱はしないが無視して“骨抜き”にする。

 その具体策が、環境政策を担う環境保護局(EPA)の縮小だ。2月下旬の報告会で松本氏は「人員削減の可能性は高い。半減もあるのでは」と予測していた。

 実際の予算案では、EPAの18年度予算は17年度比31%減の57億ドルへと削減され、人員は2割減る。国際社会が途上国支援のために設立した「緑の気候基金」への拠出も停止する方針だ。

 ノーベル経済学賞受賞の米コロンビア大学のジョゼフ・スティグリッツ教授は16日、都内での講演で新政権の影響を質問されると「個々の州が温室効果ガスの削減目標を設定している。

 カリフォルニア州などはパリ協定達成の意欲がある」と語った。連邦政府が温暖化対策に後ろ向きでも、州政府は前向きに取り組むようだ。

 米産業界も動き出している。電力を再生可能エネルギーで賄うと宣言した企業組織「RE100」に米31社が参加する。組織を主催する英クライメートグループのダミアン・ライアン氏は「再生エネ導入の勢いは止められない。国民の支持もある」と話す。

 企業による再生エネ利用を研究する米ロッキーマウンテン研究所のエルヴェ・トゥアティ氏は「新政権からの間接的な影響がある」と見通す。

 そこで、再生エネと気候変動問題を分けて説明するようにしている。「再生エネは雇用を生み、経済に良い」と訴え、気候変動に懐疑的な新政権からの攻撃をかわす。

 エネルギー政策も注目される。トランプ氏は前政権で規制を受けていた石炭産業の復活を掲げる。だが、松本氏と一緒に訪米した国際環境経済研究所の山本隆三所長によると、石炭業界団体が「トランプになっても石炭生産は増えない」と話したという。シェールガス革命で天然ガスの供給量が増加。安い石炭との価格差が縮まり、天然ガスが選ばれるようになった。

 オバマ前政権は、パリ協定の合意で主導的な役割を演じた。新政権の政策転換は世界の温暖化対策にも影響を与える。今後もトランプ氏本人の発言が注目される。
             

(文=松木喬)

日刊工業新聞2017年3月27日

松木 喬

松木 喬
03月28日
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オバマ氏がクリーンパワープランの強化を発表した15年8月、300社以上の米企業が支持を表明しました。パリ協定からの離脱反対を表明した企業もあります。トランプ氏は就任後、パリ協定についての明言を避けています。3月1日付のニュースイッチにもトランプ政権のエネルギー環境政策を掲載しました。

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