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NECが世界最高性能のスピン流型素子、センサー電源向けに実用化目指す

発電を続けてもシートが半永久的に劣化せず
NECが世界最高性能のスピン流型素子、センサー電源向けに実用化目指す

開発したスピン流熱電変換シート、軟らかく配管に巻き付けられる(NEC提供)

 NECは小さな温度差でも電力を発生するスピン流熱電変換素子を開発した。温度差10度Cの条件で1平方センチメートル当たり約30マイクロワット(マイクロは100万分の1)の電力を発電する。スピン流熱電変換としては世界最高性能という。スピン流を利用すると大面積の熱電変換シートを安価に製造でき、また、発電を続けてもシートが半永久的に劣化しない。IoT(モノのインターネット)社会で大量に配置されるセンサー電源として開発を進める。

 材料探索に人工知能(AI)技術を利用して窒化コバルトプラチナ合金を見いだした。従来の多層素子に比べて変換効率が100倍に向上した。プラチナ原子のスピン分極が効率を高める。

 スピン流熱電変換素子は温度差を電子のスピン流に変え、これを電流に変える。熱流から電流の変換に、スピン流を仲介することで熱流の垂直方向に電力を取り出せる。そのため素子の構造が単純になり、磁性絶縁膜と金属膜を積層するだけで機能し量産化しやすい。

 今後、実用化に向けて1平方センチメートル当たり1000マイクロワットに変換性能を引き上げる。プラチナの代替元素も探す。

 温かい配管にシートを巻き付けて配線すると、排熱を電力に変えてシートから給電できるようになる。熱電変換によって素子が劣化しないため、太陽光発電や振動発電に比べて長寿命が期待される。

 またシートに電流を流すと巻き付けた対象を加熱したり冷却したりできる。排熱発電や精密温度制御用途に提案していく。
日刊工業新聞2018年2月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日発表した構造改革で、国内8万人のグループ社員のうち3000人の希望退職を募るNEC。研究開発もさらに選択と集中が進みそう。

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