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富士通が遺伝子検出キットをスーパー・病院向けに

O157やノロウイルスの感染から守れ!
 富士通は、電子商取引(EC)サイトで販売する遺伝子検出キットの適用分野を拡大する。菌やウイルスの検出などの医薬系で培ったノウハウを生かし、食品系や農水産物系にも市場を広げる。食中毒の検査が必須の食品メーカーをはじめ、食材を調理・加工するスーパーマーケットや病院などへの提案を本格化する。夏場は腸管出血性大腸菌(O157)、冬場はノロウイルスによる食中毒や感染症の対策として有用性を訴求する。農業向け情報通信技術(ICT)「アキサイ(秋彩)」との連携も検討する。

 遺伝子検出キットは、専門知識がなくても1時間程度で遺伝子配列を検出できる「ランプ法」の特許を持つ栄研化学が開発・製造を担当する。富士通はECサイト「eゲノムオーダー」で販売を請け負う。また、菌などの遺伝子情報をソフトウエアで見える化したり、増幅検出試薬を作製したりするサービスも提供している。

 同サイトで扱う遺伝子検出キットは主力の医薬系に加え、栽培中のトマトの病気を調べる診断キットや豚肉の検査など100種類以上ある。農業系ではコシヒカリ判別キットなど、食品偽造対策で新たな展開を目指す。さらにシカ肉の雄雌判定キットや、ニホンジカとカモシカの糞(ふん)を識別できるキットなども製品化。農作物に被害を及ぼす鹿の駆除を推奨する自治体向けに提供を始めた。

 水産系ではニッポンジーン(東京都千代田区)がランプ法のライセンスの使用権を得て、赤潮の原因となるプランクトンの遺伝子を検出するキットを2016年に開発。eゲノムオーダーで販売を始めている。

 今後、富士通は栄研化学に加え、ニッポンジーンとの連携も強化し、農業、水産、畜産、園芸など多様な検査・研究分野でランプ法による遺伝子検出の需要を広げていく。また、地方の大学の研究者と連携して、農業や水産系などで培ったノウハウをキットにする構想なども検討していく。

 eゲノムオーダーは富士通の子会社が運営していたが、2016年に富士通が子会社を吸収・合併し、現在は富士通がサイトの運営を引き継いでいる。

冷総菜の売れ行きに影響


 8月の小売りの売上高は長雨や気温低下などの天候不順が影響した。日本チェーンストア協会が21日発表した総合スーパーマーケットの既存店売上高は前年同月比0・5%減と、2カ月ぶりのマイナスだった。アイスクリームや日焼け止めなど、夏物商材が不調だった。

 日本チェーンストア協会の井上淳専務理事は「天候不順を考えれば、マイナス幅は小さい。日常消費は力強さはないが、持ち直しの動きは見られる」と話す。総菜店で腸管出血性大腸菌(O157)による食中毒が発生したことが響き、冷総菜の動きは鈍かった。
                     

日刊工業新聞2017年9月21日/22日
江上佑美子
江上佑美子 Egami Yumiko 科学技術部 記者
群馬県と埼玉県にある総菜専門店のポテトサラダなどを食べた人がO157に集団感染し、3歳の女の子が亡くなりました。共働き家庭の増加などを背景に最近、スーパーやコンビニは総菜を強化しています。あるスーパーに聞くと、今回の食中毒発生を受け、あらかじめパッケージ詰めして売るなど、外気に触れず、消費者がトングを使う必要もない販売方法を増やしているそうです。「コストは掛かるが必要」とのことでした。原因究明は難しいとの話も出ているようですが、生命に関わる問題であるだけに、可能な限り対策を取ってほしいと感じます。

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