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炭素繊維とアルミ、量販車への採用を後押しする成形・加工の進化

炭素繊維とアルミ、量販車への採用を後押しする成形・加工の進化

三菱ケミの新技術を使ったバックドア構造部材(カットモデル)


アルミ各社、海外生産を相次ぎ拡大


 日本アルミニウム協会によると、16年度の車向けのアルミ圧延品出荷量(内需)は、板類と押出類の合計で前年度比4・9%増の30万1546トン、5年連続のプラス。足元の状況も17年5月単月の車向け板類の出荷が、5月として最高を記録するなど好調だ。

 完成車メーカーや車部品メーカーの海外現地調達ニーズが強まる中、アルミ圧延メーカーの間では海外の生産体制強化が相次いでいる。

 神戸製鋼所は、車のボンネットや屋根などに使うアルミパネル材を生産する中国・天津工場を5月に本格稼働した。同社の試算では、中国市場のアルミパネル材需要は現在年約5万トンだが、25年には同30万トン以上へ急拡大する見通し。「中国も先進国並みに環境規制が厳しくなり、軽量化は待ったなしの状況」と神鋼の川崎博也会長兼社長は強調する。
              

 神鋼は真岡製造所(栃木県真岡市)内にも車用アルミパネル材の専用ラインを新設予定。また米国では、バンパーなどに使うアルミ押出品や、サスペンション用アルミ鍛造部品の工場に積極投資を続けている。

 UACJは16年11月、タイと米国のアルミ圧延工場の生産能力増強に、総額550億円を投じる計画を発表。人口増を背景とした飲料缶向け缶材の需要増にも対応しつつ、環境規制強化に伴う車用アルミパネル材の採用拡大に向けた生産体制を整える考えだ。
神鋼・天津工場の表面処理ライン

プレス機械、需要増を追い風に高性能化


 自動車へのCFRP、アルミの採用拡大を受け、プレス機械各社も対応を強化している。アイダエンジニアリングはテスラや英ジャガーランドローバー(JLR)のアルミ製アウターパネルを成形する超大型プレスラインの供給している。今後も「骨格部品を含めアルミ化が進むと思う」(鈴木利彦取締役常務執行役員)と需要増を想定する。

 アルミはキズがつきやすく、滑りやすいといった課題がある。同社ではこれらを意識した材料搬送システムを開発した。搬送システムではエイチアンドエフも、「ドアや屋根に採用されつつあるアルミと、鉄を混在して搬送できる装置」(柿本精一社長)を開発、受注実績を挙げている。

 一方、CFRPはコマツ産機(金沢市)が「新しい材料の加工技術の開発を、複数の大学と共同で進めている」(川西宣明社長)。中堅メーカーでは、放電精密加工研究所や榎本機工(相模原市緑区)などが活発に開発に取り組んでいる。榎本機工は炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)を高速成形できるサーボ駆動式スクリュープレスを開発した。

 自動車市場の需要拡大を追い風に、CFRPとアルミは材料と加工の双方の技術開発が加速しており、さらに用途が拡大していきそうだ。
アイダエンジがJLRの英工場に納めたプレス機

(文=六笠友和、土井俊、斉藤陽一、小野里裕一)
日刊工業新聞2017年7月12日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
アルミと炭素繊維を単純に比較することはできないが、車種をみるとまだまだ量販車という感じ。でもこの記事は成形や加工に焦点を当てているのが面白い。ちょうど先週、塑性加工技術の専門展示会「MF―Tokyo2017」が開催されたこともあり、完成車や部品メーカーと機械メーカーの連携にも注目。

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