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東芝、「水素」で再生

府中に地産地消型のエネルギー供給施設
東芝、「水素」で再生

水素エネルギー利活用センター

 東芝は13日、再生可能エネルギーを使って生成した水素を燃料電池車に供給する施設「水素エネルギー利活用センター=写真」を府中事業所(東京都府中市)内に開設し運用を始めたと発表した。その場で水素を製造して消費する地産地消型システムとして設計したのが特徴。顧客向けのモデル施設として活用し営業に役立てる。

 同センターは、東芝独自の自立型水素エネルギー供給システム「H2One」を応用して整備した。太陽光で発電した電気で水素を生成し、同事業所内で使う燃料電池(FC)フォークリフトに充填する。1時間当たり5ノルマル立方メートルの水素を製造でき、FCフォークリフト4台分をカバーする。

 水素を地産地消するため、水素の輸送費を削減できる。工場や物流拠点、空港などに売り込む。導入費用については同センターと同水準の仕様で「4―5年後には数億円にしたい」(東芝)という。H2Oneは、テーマパーク「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)やJR東日本・武蔵溝ノ口駅(川崎市高津区)などで導入実績がある。

日刊工業新聞2017年7月14日



製造・発電システムをトラックと一体化


燃料電池を搭載し、水からつくった水素で発電するトラック

 東芝は水から水素を製造して発電ができるシステムとトラックを一体化した。移動した場所で水素をつくって発電し、電力を供給できる。太陽光発電所で水素をつくって貯蔵し、他の場所に移動して発電することも可能だ。普段はトラックを駐車場に置いてビルの電源として活用し、イベントがある屋外会場や災害発生時には避難所へ移動して使うことを想定する。“走る”エネルギー自給自足システムとして、地方自治体に提案する。

 水素の「つくる」「ためる」「つかう」に必要な機器を、トラック2台に分けて搭載した。水素は水の電気分解装置を積んだトラックで製造する。

 水を分解して発生させた水素を貯蔵タンクにため、燃料電池を搭載したもう1台のトラックで発電する。燃料電池の熱で沸かしたお湯も供給できる。

 水素の貯蔵量は250ノルマル立方メートル。燃料電池の発電出力は9・9キロワットで、水素が満タンだと80時間稼働できる。商用電源のほか、再生可能エネルギーの電力を活用した二酸化炭素排出量がゼロの“CO2フリー”の水素も生成できる。

 このほど新潟県内のダムで、水力発電の電力により水素を作る実証を行った。

 東芝は水と再生エネだけで水素を製造する常設タイプのシステムを製品化し、川崎市やハウステンボス(長崎県佐世保市)に設置済み。

 燃料電池と貯蔵タンクを小型化し、普通免許などで運転できる4トントラックに搭載できた。発電機を積んだ電源車と違い、発電時の音が静か。また、燃料電池は発電機よりも発電効率が高く、燃料の無駄も少ない。自治体などから要望を聞き、製品化を検討する。

日刊工業新聞2016年5月18日



明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
府中事業所はインフラの拠点。最盛期には約3万人が働いていた。名門ラグビー部のグラウンドもある。地元も再建の行方が気が気でないだろう。以前から東芝は「水素エネルギー」に熱心に取り組んできていて、蓄積技術もある。早く半導体メモリーのゴタゴタを決着させて再スタートしてもらいたい。

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