ニュースイッチ

「創業家の乱」から1年。出光、にらみ合い続く

今日株主総会。創業家、合併拒否の姿勢強める
「創業家の乱」から1年。出光、にらみ合い続く

出光興産の月岡隆社長(右)と昭和シェル石油の亀岡剛社長(16年10月)

 出光興産は29日に都内で株主総会を開く。昭和シェル石油との合併に反対している創業家は会社側が提示した取締役候補12人のうち、月岡隆社長ら5人の取締役の選任に反対する方針を打ち出している。2016年の株主総会で昭シェルとの合併に反対すると正式に表明した「創業家の乱」から1年、両者の歩み寄りは見られない。

 16年の株主総会以降、対立が鮮明になった両者。出光と昭シェルとの合併時期は当初予定していた17年4月から延期され、現在は合併の道筋が見えない状況だ。

 創業家は33・92%の出光株を持ち、経営統合など重要な決定を否決できる3分の1超を握るため、合併へのハードルになっている。

 株主総会では、月岡社長、関大輔副社長、丹生谷晋取締役、取締役に就任予定の本間潔執行役員、社外取締役に就任予定である東京理科大学の橘川武郎教授の選任案に反対する。

 質問状も公開しており、昭シェルとの統合効果や、サウジアラビア国営のサウジアラムコが新会社に参画することなどについて疑問を投げかけている。

 創業家側は16年も月岡社長の取締役の選任に反対している。業績不振で一般株主も一部同調したため、月岡社長への賛成票の割合は52・3%にとどまり、「薄氷」での再任となった。

 ただ、今回は17年3月期の連結当期利益が881億円で過去最高を更新したこともあり、選任に際し16年ほどの僅差にはならないとの見方が支配的だ。

 問題は両者のにらみ合いがどこまで続くか。創業家側は「条件闘争をしているわけではない」と強調し、合併拒否の姿勢を日増しに強めている。会社側が創業家側の株の希薄化を狙い、増資に踏み切れば、訴訟に踏み切る可能性も示唆している。

 会社側は月岡社長が合併の延期を表明した16年10月の記者会見では、「1年以内に合併を実現したい」と意気込んでいたが、解決の糸口は見いだせない。
(文=栗下直也)
日刊工業新聞2017年6月29日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
石油元売り業界では、4月にJXホールディングスと東燃ゼネラル石油が統合して、JXTGホールディングスが誕生。国内需要が頭打ちになる中、合理化を急いでいる。出光、昭シェルが創業家との対立で疲弊すれば、巨人JXTGとの差がさらに開く。

編集部のおすすめ