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東芝社長、株主総会で「心からおわび」も内部統制が崩壊

長期的な株主利益を守る選択肢を
東芝社長、株主総会で「心からおわび」も内部統制が崩壊

東芝の綱川社長(写真は15日の会見)

 東芝は28日午前に株主総会を開き、綱川智社長は「度重なるご迷惑とご心配を掛け、心からおわびする」と陳謝した。同社は総会までに半導体子会社「東芝メモリ」の売却契約を結ぶ方針だったが、調整に時間がかかり、間に合わなかった。

 総会では、監査法人の承認を得ていないため2017年3月期の決算を報告できず、会社側の見通しを説明。不適切会計問題が発覚した2015年に続き、会社法で求められている決算報告ができない異例の総会となった。株主からは「経営陣が全員代われば企業風土は変わる」などと糾弾する声が相次いだ。綱川氏ら9人の取締役については、8月以降に開く臨時株主総会まで暫定的に続投することを諮り、承認された。

 また半導体子会社の売却に関しては、政府系ファンドの産業革新機構を中心とする「日米韓連合」と売却契約を結び、総会で報告する予定だった。しかし総会の開始直前に「現時点で合意に達しておらず、現在も交渉中だ」と発表した。

 半導体子会社を売却し債務超過を解消したい考えだが、売却契約の遅れはメモリー事業で提携する米ウエスタンデジタル(WD)との係争が影響している。綱川社長は、WDによって売却手続きが「不当に妨害されている」と不快感を示した。

 東芝が公表した暫定値では、17年3月期連結決算は米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の経営破綻に伴う損失計上で1兆円規模の純損失となり、債務超過に陥った。このため、東芝株は今年8月1日に東証1部から2部に降格され、来年3月末までに債務超過を解消できなければ上場廃止になる。

ファシリテーター・櫻井八重さん


 第三者は後から何とでも言えるし、素人が計り知れない様々な事情が絡み合ったのだと思うから、安易なコメントはしたくないが、それでも東芝然り、タカタ然り、経営陣の認識の甘さ、判断の遅れが事態を最悪に招いたとしか言いようがないように思う。この事例は日本企業の悪しき習慣を断ち切る教訓となっているのだろうか。

 
 
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
株主総会で正式に決算を諮れないのに取締役選任議案を諮るのは株主を馬鹿にした話だ。内部統制が崩壊しており、また、仮に子会社損失の計上時期が前倒しになり過年度決算修正になる場合は既に2期連続債務超過だった可能性もある。すなわち、拙速に東芝メモリを売却しても上場が維持出来るとは限らないし、上場廃止になっても本源的な株式価値が下がるわけでもないのだから、ここは素直に上場廃止を受け入れ、その間に内部統制を再構築すれば良い。その後、東芝メモリを上場させれば債務超過は解消し、東芝も再上場可能となる。その方が長期的な株主利益が守れるのではないか。

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