論文数は英ディープマインドの半分、日本は「機械学習」で巻き返せるか

国際舞台で人材獲得合戦、少数精鋭の8割が理研AIPセンターに

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世界から優秀な人材が集まる英ディープマインド(同社公式ページ)
 日本勢は英ディープマインドの半分―。機械学習の国際会議「ICML2017」(シドニー、8月開催)の日本勢の発表数は11件。米グーグル傘下の英ディープマインドが著者の論文発表は22件と、日本は産と学を合わせても2分の1に留まった。人工知能(AI)研究での日本の存在感が新興ベンチャーに及ばなかった。11件の内の9件は理化学研究所の革新知能統合研究センター(AIPセンター)が占める。少数だが精鋭はそろった。巻き返しが急がれる。

 ICMLはAI系で最高峰の学会の一つだ。AIの根幹を支える基礎理論を中心に最新成果が発表され、17年は434件の論文発表の内、2・5%の11件が日本勢の発表だ。

 ディープマインドは囲碁AI「アルファ碁」で世界を沸かせた新興ベンチャー。同社を含むグーグルは56件、マイクロソフトは39件、アマゾン12件、フェイスブック10件、IBM10件と、米国のIT企業は研究発表を通じて優秀な人材を集める場として活用している。

 学会の企業展示のブースでは「転籍契約書に今日サインすればボーナスを弾む」とフィンテック企業が勧誘するなど、水面下での人材の引き抜き合戦が繰り広げられる。

 夜はIT企業がナイトクラブを貸し切ってパーティーを開き、リクルートにいそしむ。複数の企業から招待状をもらった研究者はどの会場にいくか悩んでしまう。ICMLはAI研究者にとって成果発表の場であり、キャリアが決まる場でもある。

 理研AIPセンターの杉山将センター長は「ポスター発表に人が来なくなるため、発表時間帯はパーティーを自粛するよう学会から企業にお願いしている」と説明する。

 17年は豪州開催のため多少落ち着く可能性はあるが、「引き抜いた人材は引き抜かれやすい。常に人を集め続けないといけない構造だ。AI開発に数千億円を投じる企業にとってはイベント代の数千万円は安いもの」(杉山センター長)という。基礎理論の国際学会で人材獲得合戦が過熱している。

 このICMLで日本勢の存在感は希薄だ。企業からは三菱電機やIBM東京基礎研究所の2件のみ。まずは日本企業は業界に知られる必要がある。

 それでも展示ブースの裏で札束を積んで勧誘するのと、成果発表者として研究環境を紹介するのではリクルートの効率が変わってしまう。

 日本の11件の内9件が理研のAIPセンターの研究者。「ICMLの審査を通過しAIPセンターのトップ研究者のレベルを示せた。次は若手をICMLのレベルに引き上げる」(同)と意欲をみせる。9件の発表には修士課程の大学院生も含まれる。

 同センターは設立1年で220人の研究者を集めた。採用面接を重ね「優秀な若手を採れている。基礎理論は論文一つで世界をひっくり返せる分野。流れは変えられる」(同)。海外との差は依然大きいが、立ち上がりは手応えを得た。若い芽を国際舞台で伸ばせるか注目される。

日刊工業新聞2017年6月21日

COMMENT

小寺貴之
編集局中小企業部
記者

 日本全体でも英ディープマインドの半分というのは衝撃ですが、少数精鋭の8割が理研AIPセンターに集まっているというのも衝撃でした。AIPセンターの関係者が「優秀な人はすべて集めた。学習理論で世界と戦える人材はAIPにしかいない」と豪語していたのは本当だったのかと思いました。高いレベルで切磋琢磨して人材を育ててほしいです。  また学会でのリクルートの過熱ぶりは異常ではないかと思います。海外では人とカネを集め続けられる企業しかもたないように思います。日本はAI人材が足りないと言いつつも、国内で人材を育てられるだけ救いがあるように感じました。ただ優秀な人材がどこに集中しているかわかってしまうと、同僚の仮面をかぶったリクルーターが入り込んでくるので痛し痒しです。

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