ニッポン製造業の底力、この業界の設備投資に注目せよ!
自動車部品、電子部品、機能化学
**自動運転など次世代も見据える
製造業の設備投資が堅調だ。需要拡大にともなう増産投資に加え、ここ数年続いている効率化・生産性向上を向上し、将来の成長を見据えた投資が目立つ。自動車や電機などは超大手企業や完成品ばかりに目が行きがちだが、その強さを支えているのは部品や材料などだ。各業界の2017年度の動向を追った。
自動車部品メーカー100社(車体メーカーも含む)の17年度の設備投資は、新車販売が好調な中国やアジアでの新工場建設や能力増強が目立つ。日本では設備の更新投資が中心となるが、一部製品は海外で生産していたものを日本生産に切り替える動きもある。
中国国内への投資や中国市場での受注増加を背景とする投資が活発だ。トヨタ自動車系のアイシン精機は中国を中心に自動変速機の受注が増加している。
伊原保守社長は「生産能力を増やしていく投資のピッチに対して、需要があまりにも大きい」と高水準の投資を継続する。中国を含めた総設備投資額は前期比9・5%増の2600億円。豊田自動織機も新モデルへの切り替えのタイミングにより、同54・4%増の1200億円とした。
ホンダ系の八千代工業は同90・5%増の120億円を投資に充てる。中国でホンダ向けに供給する「サンルーフの生産能力が限界に達した」(山口次郎社長)として能力を増強する。
日産自動車系ではパイオラックスが増産投資を予定。独立系では、日本ピストンリングが中国でバルブシートを生産する生産子会社に新ラインを導入する。17年度末における生産能力を15年度比約2・75倍に引き上げ、主要顧客の需要増に対応する。
中国以外のアジアで生産増強する動きもある。ホンダ系のケーヒンはインドで小型2輪車用電子制御式燃料噴射(FI)システムを19年から生産するのに当たり、ラインを構築。スタンレー電気はタイで発光ダイオード(LED)ヘッドランプの生産ラインを更新する。KYBもインドネシアでショックアブソーバーを自動で生産するラインを18年度中に構築する。
一方、海外から日本へ生産移管するのはNOK。中国・無錫市の工場で生産していた大型防振ゴムなどの生産を鳥取事業場(鳥取県南部町)に移す。同ゴムはほとんどの量が日本市場向けで、輸送費の削減や品質管理の徹底を目指す。7月の鳥取での生産を予定する。
投資一巡として前期より抑える企業もある。テイ・エステックの井上満夫社長は「今後は、投資の刈り取り期だ」と話す。ユタカ技研の岡本稔社長は「全体の投資は減っても、高機能トルクコンバーターなど新製品の投資は続ける」と方針を示す。
国内市場の縮小や欧米のメガサプライヤー化、新興国でのローカルメーカーとの競争激化で、日本のサプライヤーも生き残りをかけ、連携する動きが加速している。
トヨタ紡織とタチエスは3月に自動車用シート事業で業務提携。シートフレームや機構部品の開発や生産といった面で協業の検討を始めた。
5月には、自動車用プレス部品メーカーの東プレと丸順が資本提携を決め、生産や金型調達などで相互に補完する。豊田合成とダイセルも製品の共同開発を見据え、資本提携に合意した。
電動化や自動運転など車の新しいステージを迎え、各社はこれまでの延長線上にない協力関係にも目を向けている。
電子部品大手6社の17年度設備投資計画は、総額で前年度比15・4%増の6313億円の見通し。村田製作所や日本電産など5社が前年度から増額し、TDKも同水準を維持する。
村田製作所とTDK、日本電産は1000億円超を投じる。米アップルのスマートフォン減産などはあるが、中国メーカー製品の高機能化で部品搭載点数が増加し、投資意欲は衰えていない。さらに各社は電池やセンサーなど次の成長分野への投資も見据えている。
村田製作所は17年度中の設備投資でスマホ向けの積層セラミックコンデンサー、表面弾性波デバイス、樹脂多層基板「メトロサーク」を強化する。村田恒夫社長は「スマホ向けの新製品投入が非常に大きくなる」と、新製品比率を40%程度まで高める。
京セラは「17年度はコンデンサーも伸びる」(谷本秀夫社長)とさらなる需要増に期待。コンデンサーやセラミックパッケージを中心に約800億円を設備投資する。
TDKは米クアルコムへの高周波部品事業売却で得た売却益1300億円を成長戦略製品への投資に振り向ける方針だ。各社はスマホ向け製品の投資は共通している一方、成長鈍化などのリスクに備え、戦略製品への投資も行う。
誘導品・電子材料を手がける機能化学7社は積極的な設備投資を続け、17年度は前年度比26・3%増の合計3720億円を計画する。同50・4%増と目立つのが日立化成。従来の機能材料事業に加え、上積み分を新設する再生医療用細胞の製法開発・受託製造施設や買収したイタリアの自動車・産業用鉛蓄電池メーカーの強化に充てる。
JSRは同39・5%増やし、18年度の稼働を目指す低燃費タイヤ用合成ゴム(S―SBR)のハンガリー工場を仕上げる。四日市工場(三重県四日市市)と17年度に2期工事を終えるタイ工場とを合わせ、全社の年産能力を従来比2倍の22万トンに拡大。旭化成やZSエラストマーとともに日本勢が優勢な同領域で存在感を高める。
米シンテックのエチレンプラント建設が大詰めを迎える信越化学工業も、同23・6%増やした多くを同案件に投入。18年度にも塩化ビニール樹脂の原料となるエチレンを内製化し、原料から製品までの一貫生産体制を完成する。デンカとトクヤマ、日本ゼオン、住友ベークライトも軒並み増額。既存設備の増強などを打ち出す。
製造業の設備投資が堅調だ。需要拡大にともなう増産投資に加え、ここ数年続いている効率化・生産性向上を向上し、将来の成長を見据えた投資が目立つ。自動車や電機などは超大手企業や完成品ばかりに目が行きがちだが、その強さを支えているのは部品や材料などだ。各業界の2017年度の動向を追った。
自動車部品メーカー100社(車体メーカーも含む)の17年度の設備投資は、新車販売が好調な中国やアジアでの新工場建設や能力増強が目立つ。日本では設備の更新投資が中心となるが、一部製品は海外で生産していたものを日本生産に切り替える動きもある。
中国国内への投資や中国市場での受注増加を背景とする投資が活発だ。トヨタ自動車系のアイシン精機は中国を中心に自動変速機の受注が増加している。
伊原保守社長は「生産能力を増やしていく投資のピッチに対して、需要があまりにも大きい」と高水準の投資を継続する。中国を含めた総設備投資額は前期比9・5%増の2600億円。豊田自動織機も新モデルへの切り替えのタイミングにより、同54・4%増の1200億円とした。
ホンダ系の八千代工業は同90・5%増の120億円を投資に充てる。中国でホンダ向けに供給する「サンルーフの生産能力が限界に達した」(山口次郎社長)として能力を増強する。
日産自動車系ではパイオラックスが増産投資を予定。独立系では、日本ピストンリングが中国でバルブシートを生産する生産子会社に新ラインを導入する。17年度末における生産能力を15年度比約2・75倍に引き上げ、主要顧客の需要増に対応する。
中国以外のアジアで生産増強する動きもある。ホンダ系のケーヒンはインドで小型2輪車用電子制御式燃料噴射(FI)システムを19年から生産するのに当たり、ラインを構築。スタンレー電気はタイで発光ダイオード(LED)ヘッドランプの生産ラインを更新する。KYBもインドネシアでショックアブソーバーを自動で生産するラインを18年度中に構築する。
一方、海外から日本へ生産移管するのはNOK。中国・無錫市の工場で生産していた大型防振ゴムなどの生産を鳥取事業場(鳥取県南部町)に移す。同ゴムはほとんどの量が日本市場向けで、輸送費の削減や品質管理の徹底を目指す。7月の鳥取での生産を予定する。
投資一巡として前期より抑える企業もある。テイ・エステックの井上満夫社長は「今後は、投資の刈り取り期だ」と話す。ユタカ技研の岡本稔社長は「全体の投資は減っても、高機能トルクコンバーターなど新製品の投資は続ける」と方針を示す。
国内市場の縮小や欧米のメガサプライヤー化、新興国でのローカルメーカーとの競争激化で、日本のサプライヤーも生き残りをかけ、連携する動きが加速している。
トヨタ紡織とタチエスは3月に自動車用シート事業で業務提携。シートフレームや機構部品の開発や生産といった面で協業の検討を始めた。
5月には、自動車用プレス部品メーカーの東プレと丸順が資本提携を決め、生産や金型調達などで相互に補完する。豊田合成とダイセルも製品の共同開発を見据え、資本提携に合意した。
電動化や自動運転など車の新しいステージを迎え、各社はこれまでの延長線上にない協力関係にも目を向けている。
スマホの高機能化と中国向け需要増える
電子部品大手6社の17年度設備投資計画は、総額で前年度比15・4%増の6313億円の見通し。村田製作所や日本電産など5社が前年度から増額し、TDKも同水準を維持する。
村田製作所とTDK、日本電産は1000億円超を投じる。米アップルのスマートフォン減産などはあるが、中国メーカー製品の高機能化で部品搭載点数が増加し、投資意欲は衰えていない。さらに各社は電池やセンサーなど次の成長分野への投資も見据えている。
村田製作所は17年度中の設備投資でスマホ向けの積層セラミックコンデンサー、表面弾性波デバイス、樹脂多層基板「メトロサーク」を強化する。村田恒夫社長は「スマホ向けの新製品投入が非常に大きくなる」と、新製品比率を40%程度まで高める。
京セラは「17年度はコンデンサーも伸びる」(谷本秀夫社長)とさらなる需要増に期待。コンデンサーやセラミックパッケージを中心に約800億円を設備投資する。
TDKは米クアルコムへの高周波部品事業売却で得た売却益1300億円を成長戦略製品への投資に振り向ける方針だ。各社はスマホ向け製品の投資は共通している一方、成長鈍化などのリスクに備え、戦略製品への投資も行う。
医療・車向けで伸びる
誘導品・電子材料を手がける機能化学7社は積極的な設備投資を続け、17年度は前年度比26・3%増の合計3720億円を計画する。同50・4%増と目立つのが日立化成。従来の機能材料事業に加え、上積み分を新設する再生医療用細胞の製法開発・受託製造施設や買収したイタリアの自動車・産業用鉛蓄電池メーカーの強化に充てる。
JSRは同39・5%増やし、18年度の稼働を目指す低燃費タイヤ用合成ゴム(S―SBR)のハンガリー工場を仕上げる。四日市工場(三重県四日市市)と17年度に2期工事を終えるタイ工場とを合わせ、全社の年産能力を従来比2倍の22万トンに拡大。旭化成やZSエラストマーとともに日本勢が優勢な同領域で存在感を高める。
米シンテックのエチレンプラント建設が大詰めを迎える信越化学工業も、同23・6%増やした多くを同案件に投入。18年度にも塩化ビニール樹脂の原料となるエチレンを内製化し、原料から製品までの一貫生産体制を完成する。デンカとトクヤマ、日本ゼオン、住友ベークライトも軒並み増額。既存設備の増強などを打ち出す。
日刊工業新聞2017年6月15日の記事などを元に加筆