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食べ物の味が分からない、脱毛、傷が治りにくい…亜鉛欠乏症かも?

決してまれではない!
食べ物の味が分からない、脱毛、傷が治りにくい…亜鉛欠乏症かも?

メディパルはMR資格を持つ営業担当者が治療薬の情報提供を手がける(イメージ)

 食べ物の味が分からない、食欲がない、皮膚炎、脱毛、傷が治りにくい―。こうした症状は、ミネラルの一種である亜鉛の不足で起きている可能性がある。従来、日本には亜鉛の補充を目的とした医療用医薬品がなかったこともあり、亜鉛欠乏症の認知度は低かったようだ。潜在患者を適切な治療に導けるか、関係者の努力が問われる。

必須のミネラル


 「亜鉛欠乏は決してまれではない。医師・医療従事者の認知度を高めることが重要」。帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科の児玉浩子教授は、こう指摘する。

 亜鉛は原子番号30の金属元素として知られるが、「人にとっては必要不可欠な微量ミネラル」(児玉教授)。体内のたんぱく合成をつかさどる酵素であるDNAポリメラーゼなど300以上の酵素の構造形成や活性に関わるほか、造血機能や皮膚代謝などにも関係するという。欠乏するとたんぱく代謝が盛んな細胞や、亜鉛濃度が高い味蕾(みらい)や前立腺といった臓器が障害される。

 3月に低亜鉛血症治療薬「ノベルジン」(一般名酢酸亜鉛水和物)の承認を得たノーベルファーマ(東京都中央区)は、同疾患の国内患者数が約6万8000人と推定する。帝京平成大の児玉教授も「潜在的な患者は非常に多い」と考えており、的確な診断や治療の促進が望まれる。

卸が販売促進


 この意味で、医薬品卸大手メディパルホールディングスも重要な役割を担う。MR(医薬情報担当者)資格を持つ社員が約2000人いる体制を生かし、同剤の共同販促に取り組む。「従来の卸の営業は、既存市場の拡大が主な役割だった。しかし、この取り組みは市場そのものを創造していく」(依田俊英常務)。的確な情報提供で新規事業の拡大につなげられるか注目される。
(文=斎藤弘和)

専門医は語る


児玉浩子帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科教授

帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科教授・児玉浩子氏「教科書に記載少なく」
 亜鉛は体内では合成されないので、必要量を摂取する必要がある。成人は男性で1日に10ミリグラム、女性で8ミリグラムが推奨されており、妊娠時やスポーツをする人は必要量が増える。肉類に多く含まれるため、菜食主義者は亜鉛不足になる。穀類や豆類の外皮に多く含まれるフィチン酸は、亜鉛の吸収を阻害するとも言われている。

 栄養を一生懸命勉強している医者にとっては、亜鉛欠乏は決してまれではない。しかし(一般的な)臨床医が患者の症状の原因を特定する鑑別診断の際に参考としている教科書や論文には、亜鉛欠乏についての記載は非常に少ない。ここ数年は医師国家試験の出題基準に栄養学が入ってきたが、それまでは栄養のことをほとんど知らずに医学部を卒業する人が多かったことが影響している。(談)
日刊工業新聞2017年6月15日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
肉以外にも、牡蠣や乳製品にも亜鉛は多く含まれているようです。「味を感じにくい」など自覚するまでに時間がかかりそうな症状が多いため、亜鉛不足に気付かない人も多いのでしょう。

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