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「東芝メモリ」入札、4陣容の枠組み変化。日米連合の内容固まらず

「(WD側の提案は)うそのかたまりだ」(金融機関幹部)
 東芝の半導体メモリー子会社「東芝メモリ」の買収をめぐり、入札に参加した4陣営の組み替えを模索する動きが本格化してきた。買収額、独占禁止法、技術流出などさまざまな課題がある中、各陣営の提案は一長一短。東芝が協業する米ウエスタンデジタル(WD)との対立という不確定要素も状況を複雑にする。最適解を探る動きは大詰めを迎える。

 4陣営で最も動きが不透明なのが、米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行からなる「日米連合」。

 WDとの連携を模索するが、WDによる国際仲裁裁判所への売却差し止め申し立てがネックとなり、東芝への買収提案が固まらない。

 さらに「KKRと革新機構の条件交渉がまとまらないようだ」(関係者)。革新機構は別陣営の米ファンド、ベインキャピタルとの連携も同時に探っている。

 ただしベインは韓国メモリーメーカーのSKハイニックスと組む案があり、選定の際は独占禁止法が影響する可能性もある。

 現時点で最も有力とされる米ブロードコム陣営も、経済産業省に接触している。同陣営は100%出資を希望しているが、政府や経産省が懸念する技術流出や国内の雇用維持などの条件に抵触しかねない。日本勢がブロードコムと合流する道を探り、合わせてブロードコムが出資条件で妥協するかが焦点だ。

 技術流出を最も懸念されている台湾・鴻海精密工業は、米アップルや米アマゾンを陣営に加えてアピールする。しかし関係者の間では、シャープ買収の際に評価額を下げた点がマイナスイメージになっているとの指摘もある。雇用や技術の保持を主張する一方で他国への投資なども表明しており、不信感はぬぐい切れていない。

 入札には加わっていないが、過半出資を主張していたWDは、さらなる譲歩案を再提示する方針だ。東芝が最も懸念する独占禁止法抵触の回避策として、少額出資ではなく社債引き受けによる資金提供を提案。買収額も2兆円規模に引き上げて、革新機構などの日米連合への合流を狙う。

 四日市工場(三重県四日市市)への継続投資もアピールする姿勢だ。しかし入札に関係する金融機関の幹部は「(WD側の提案は)うそのかたまりだ」と切り捨てる。WDが将来的な経営への関与を視野に入れていることは想像に難くない。となれば独禁法審査にも支障が出る。

 東芝関係者らからは「(WDが)どうしたいのか分からない」との声も漏れる。売却先選定に向け、東芝に残された時間はあと2週間程度。東芝は決断の時を迫られている。
                

(文=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2017年6月13日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
東芝の将来のこと考えていない銀行に言われたくないが…。

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