水と生き物の不思議な関係をテクノロジーへ応用する若き研究者

名古屋工業大学大学院准教授・石井大佑氏(38歳)

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名古屋工業大学大学院准教授・石井大佑氏
 生物の持つ機能を材料に活用する方法を探る生物模倣技術(バイオミメティクス)を研究している。現在は表面と水の関係性をテーマに設定し、生物の表面が持つ水を操作する機能を研究。エネルギーを使わずに液体を運ぶ仕組みや水を通さないバリア膜「ナノスーツ」(ナノは10億分の1)などに応用している。

 ナノスーツは高分子化で機能を高め、真空中でも膜の内側から水分が蒸発しないようにできる。これにより水分を含む物体がそのままの状態で電子顕微鏡によって観察できるようになった。「従来技術で人間が見られないものを見られるようにするのを常に目標に置く」と研究方針を説明する。

 液体を運ぶ仕組みは、たまった雨水を下から上へ壁伝いに引き上げて壁面緑化に活用したほか、バイオテクノロジー関連で細い径に低負荷・省エネで血液を流すマイクロ流路(マイクロは100万分の1)への実用化を図っている。

 また、「研究成果を新しい材料開発につなげたい」とし、現在は真空中でも機能するラップを開発中だ。

 もともとは、物体がある条件で勝手に規則的な構造を作る「自己組織化」を研究していた。生物が砂漠などの過酷な条件下でも水分を確保する構造や能力などは、自己組織化に関係なく工学的に活用できるのではと考えた。

 例えば、フナムシはエビやカニの仲間でエラ呼吸をするのにエラに水が必要だが、実は泳げない。足とエラを直結する流路があり、足を水につけるだけでエラが足より高い位置にあっても水が上っていく。この流路の素材や配列を制御する仕組みを簡便化し、壁面緑化やマイクロ流路に応用した。

 日本表面科学会の技術賞受賞などで評価され、資金面での苦労は少ないが、研究成果が出るまで時間がかかる。生物学や医学、農学系の研究者を探し、「お互いのためになるテーマで興味を持たせなくては」と、共同研究の苦労を語る。

 研究時以外にも「雨が降った日に、現象への着目を心がけている」とか。“ぬれない葉”がなぜぬれないのかや水たまりのできる仕組みなどを考える。生物以外の分野にも着目し、例えば酒がおいしく飲める器のぬれ方や液体の動き方を研究し、液体制御で「結露しないチラー(ワインなどを冷えたままにする器具)」への応用を図っている。

 趣味はテニス。テニス部の顧問の先生たちと一緒に週2、3回昼休みに体を動かし、リフレッシュしている。
(名古屋・市川哲寛)

日刊工業新聞2017年5月31日

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

「共同研究の苦労」とありますが、バイオミメティクスは工学、生物学それぞれの知識が必要になってくる分野。身近な生物の神秘を生活に応用するので、興味を持つ子供も多そうです。

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