若手社員に伝えたい孫社長の仕事術 「『D』から始まり、その後にPCAが続く」

三木雄信トライオン社長(元ソフトバンク社長室長)に聞く

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孫社長(ソフトバンクワールド2016公式動画より)
 ―ソフトバンク在籍時に孫正義社長の秘書などとして学んだ仕事術を基に著しました。本書で一番伝えたいことは。
 「タイトルは『すごいPDCA』だが、本当に紹介したい仕事術は『D』から始まり、その後にPCAが続くということ。『D』をたくさん行うことが大事だ」

 「孫社長の良いところは数十種類の多様な手法をまずは一度試して良い手法を見つけ、それを拡大する。失敗は最初から計算に入れており、早く失敗して早く学んだ者が勝ちという考え方だ。営業手法も企業への出資も同様で、それがソフトバンクの強みになっている」

 ―リスクを織り込む重要性を指摘されています。
 「リスクなくしてリターンはない。失敗を恐れて自分が知る手法だけを続けていたら進歩はない。少しでもよいので失敗を前提としたリスクを取って挑戦すべきだ。そうした仕事でないと新しい商品や企画は生み出せないと思う」

 ―リスクを取るのは勇気がいると思いますが、最適なコントロール方法は。
 「『6・3・1』の配分を考えると良いと思う。例えばコールセンターの運営委託。1社にすべて委託するのではなく、6割は大手で安定した企業、3割は次点、1割は新しい企業に委託する。万が一、1割が失敗しても9割は稼げる。1割は失敗しても良いと計画に入れておけば新しいことに挑戦できる」

 「現場の仕事も同様だ。予算取りの段階で1割でよいのでリスクを織り込み、挑戦する仕組みが作れれば進歩できるはずだ。仮に仕事がつまらないと感じているなら新しい挑戦がないからだ。つまらないサラリーマン生活を送りたくないのであれば、分かりきったことばかりせずに挑戦すべきだ」

 ―特に読んでほしい人は。
 「現場の若手社員だ。若手社員には仕事の最終目標の前に、中間成果物を設定して毎日うまく仕事が進んでいるか否かを把握する重要性を伝えたい」

 「なんとなくやらないことが大事だ。営業の電話をかける場合でも、リストを基に電話のつながりやすさやどれだけ相手と話せたかなどを確認しながら進めることで仕事の進捗(しんちょく)具合に3倍くらい差がつく」

 ―タイトルには『孫社長のむちゃぶり』という刺激的な言葉が使われています。
 「実際に孫社長にはソフトバンク入社後すぐに『経営要素を1万件挙げろ』と指示されたり、資料一つでも大至急用意するよう求められたりするなどむちゃぶりでない仕事はなかった」

 「秘書時代は孫社長の生産性を最大化するため、孫社長の興味・関心を確認しながらスケジュールや提供する情報の優先順位を懸命に考えていた」

 ―孫社長の下で三木さんが得た最大の仕事術は。
 「プロジェクトを管理する際に『逆算』することだ。孫社長はなんでも逆算する。普通は到底無理だと考える目標でもそこから逆算して仕事の道筋をつけていく」

 ―三木さんの今後の目標は。
 「『トライオン』を英語教育業界において今後5年でトップにすることだ。そのためにチェーンオペレーションを強化していく」
三木雄信トライオン社長

【略歴】
三木雄信氏(みき・たけのぶ=トライオン社長)95年(平7)東大経卒、同年三菱地所入社。98年ソフトバンク入社、社長室長を務める。06年ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト設立、同年子会社のトライオンを創業し、13年に英会話スクール事業に進出した。福岡県出身、44歳。著書『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』(ダイヤモンド社)など
(聞き手=葭本隆太)

日刊工業新聞2017年5月29日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

元社長室長という肩書の方は孫さん本をよく書かれる。三木さんも前回は『なぜあの人は中学英語で世界のトップを説得できるのか』という本を出された。身近にいた人の証言や第三者から見た「孫正義」評は参考になる。一方でARM買収以降、孫さんは公式なイベント以外にインタビューを受けていない。最近の「頭の中」をもっと引き出したいものだ。

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