高校生起業家が目指す「画面に依存しない情報端末」とは
Yoki代表、東出風馬氏インタビュー
次世代のロボット作りに情熱を燃やす起業家がいる。株式会社Yoki代表の東出風馬氏だ。東出氏は現在17歳で、高校在学中に起業した。「TOKYO STARTUP GATEWAY」において、優秀賞を獲得するなど、今注目を集めている起業家の一人である。コミュニケーションロボット『HACO(プロジェクト名)』を開発中である。HACOは画面に依存しない次世代の情報端末を目指している。東出氏に17歳にして起業したきっかけ、HACOプロジェクトが目指すところについて話を伺った。
―そもそも起業しようと思ったきっかけは何ですか?
もともと「モノ作り」が好きで、小さいグライダーや蒸気機関みたいなものをよく作っていたんです。当然、ロボットにも興味を持つようになりました。中学生の時にデアゴスティーニが出版している「週刊ロビ」を見て、そのロボットが純粋に欲しくなったんですよ。ただ全部のパーツを揃えると14万円くらいかかるので、これは買えないなと。その時に、「買えないなら自分で作ればいいじゃん」と思い立ちました。それが最初のきっかけです。
その数か月後に、スティーブジョブズの言葉と、言葉にある背景を集めた本を、本屋でたまたま手に取りました。面白くて一気読みしたんです。そこに書かれてあったジョブズの言葉と、プロダクトデザインのへのこだわりに共感して、「彼みたいな起業家になりたい」と強く思うようになり、起業を決意しました。中学二年生の終わりの頃です。
―モノ作りが好きだという純粋な気持ちからの出発だった。
そうですね。起業を決意してから、学校で「仕組みのあるモノ作りをするクラブ」を立ち上げました。ほとんど僕一人の個人的なクラブだったんですが、そこで今のプロジェクトに繋がるようなロボットを作っていました。その時は、2020年に起業することを目標として設定していました。
―起業のタイミングが早くなったのはなぜですか?
次々と新しいパーソナルロボットが出てきて自分の中に焦りが生まれたんです。自分には才能は無いので、他の人より早くスタートを切らなければならないと。それで、2016年4月に、僕一人で個人事業としてスタートさせました。その3か月後にTOKYO STARTUP GATEWAYに出場して優秀賞を取ることができました。さらに、そこで僕のやっていることに共感してくれるエンジニアが一人見つかりました。そこから少しずつ協力者が増えて、2017年2月に株式会社Yokiとしてスタートを切ることができました。
株式会社Yokiは現在「HACO(プロジェクト名)」という、小さい木箱のようなコミュニケーションロボットを開発中である。HACOはカメラ(取り付け型)、マイク、センサーを搭載。会話、身振り手振りによるコミュニケーションが可能となっている。東出氏が目指すのは、画面に依存しない次世代の情報端末だ。最初の機能としては、会話での情報検索、料理メニューの提示、ダンスによるコミュニケーション等。アプリケーションとの提携によって、できることが逐次増えていく予定だ。
―画面に依存しないとは?
今の情報端末って、どれも画面に依存していて、指で操作しなきゃいけないじゃないですか。次世代の情報端末は、より直感的で、人間同士のコミュニケーションに近い操作でなければならないと思っています。会話での操作や、身振り手振りでの操作が例として挙げられます。また、指示される前に能動的に動けるということも重要です。
具体的に言うと、ユーザーの嗜好や気分に合わせて会話でランチの提案をしたり、見る可能性の高い番組を能動的に録画しておいてくれたりとか。時間が経つにつれて、ユーザーの要望を学習していき、能動的に動けるようになります。人間に近くなるごとに、直感的で楽しい情報端末になるはずです。
―HACOは他のパーソナルロボットとはどのような違いがあるのでしょうか?
今のパーソナルロボットって価格が高いじゃないですか。普通の人はなかなか買えないし、オタク的な人たちにとってもカスタマイズに試行錯誤できるものが望ましい。だからカスタマイズして、失敗して壊しちゃっても、また買い直せるくらいの値段にした方が良いよねって考えました。今のロボットは、おもちゃみたいに扱えない。HACOは値段を三万円台に抑える予定です。
メインコンピュータには、利用者が増えてきているRaspberry Piを搭載しています。外装は木材で、レーザーカッターで切り出すことによって価格を抑えています。そして大きな特徴が、外装、ソフトウェア、基板データ全てがオープンソースだということです。誰でも自由にカスタマイズすることができます。もちろんアプリとも連携します。もうすでにいくつかの提携先が決まっていて、これからもインストールできるアプリが増えていく予定です。
―ユーザーを巻き込んで開発を進めていくということですか?
今、ロボット開発のコミュニティって上位で固まりすぎていますよね。もっと広い範囲でアイデアが集まればいいなと思って。HACOのコミュニティを作ることによって、例えば、レーザーカッターを得意としている人に頭に角を付けてもらったり、外装をLEDで光らせたりと、思いがけない使われ方やアプリが生まれます。このように、ユーザーと一緒に進化していくことを期待してオープンソースにしました。
―なぜ形状をこのようなロボットにしようと思ったのですか?
擬人化、生物化した方がユーザーの情報が集まりやすいからです。家庭に本当の意味でIoTが普及する時、例えばユーザーの体調を把握してエアコンの温度を調節したり、軽い意図を察知して先回りで行動できるようになります。この時、ユーザーの膨大な情報を集めておかなくてはなりません。もし情報端末がペットの見た目をしていたら、ついつい話しかけちゃいますよね。無機質なものよりは、可愛いロボットを側に置いておきたくなるはずです。そうなるとユーザーの情報が段違いで集まりやすい。家庭でのIoTを実現するためにも、よりユーザーが親しみを抱きやすいものを目指そうと考えました。
―今の目標は?
まずは今年の7月にクラウドファンディングで資金を募ります。そして10月には一般販売。クラウドファンディングでどれだけ集まるかにもよるのですが、2018年2月までに最大2000台を販売することが目標です。
(文・構成=昆梓紗、大森翔平)
モノ作りへの情熱と、ジョブズの言葉
―そもそも起業しようと思ったきっかけは何ですか?
もともと「モノ作り」が好きで、小さいグライダーや蒸気機関みたいなものをよく作っていたんです。当然、ロボットにも興味を持つようになりました。中学生の時にデアゴスティーニが出版している「週刊ロビ」を見て、そのロボットが純粋に欲しくなったんですよ。ただ全部のパーツを揃えると14万円くらいかかるので、これは買えないなと。その時に、「買えないなら自分で作ればいいじゃん」と思い立ちました。それが最初のきっかけです。
その数か月後に、スティーブジョブズの言葉と、言葉にある背景を集めた本を、本屋でたまたま手に取りました。面白くて一気読みしたんです。そこに書かれてあったジョブズの言葉と、プロダクトデザインのへのこだわりに共感して、「彼みたいな起業家になりたい」と強く思うようになり、起業を決意しました。中学二年生の終わりの頃です。
―モノ作りが好きだという純粋な気持ちからの出発だった。
そうですね。起業を決意してから、学校で「仕組みのあるモノ作りをするクラブ」を立ち上げました。ほとんど僕一人の個人的なクラブだったんですが、そこで今のプロジェクトに繋がるようなロボットを作っていました。その時は、2020年に起業することを目標として設定していました。
―起業のタイミングが早くなったのはなぜですか?
次々と新しいパーソナルロボットが出てきて自分の中に焦りが生まれたんです。自分には才能は無いので、他の人より早くスタートを切らなければならないと。それで、2016年4月に、僕一人で個人事業としてスタートさせました。その3か月後にTOKYO STARTUP GATEWAYに出場して優秀賞を取ることができました。さらに、そこで僕のやっていることに共感してくれるエンジニアが一人見つかりました。そこから少しずつ協力者が増えて、2017年2月に株式会社Yokiとしてスタートを切ることができました。
小さい木箱のようなコミュニケーションロボット
株式会社Yokiは現在「HACO(プロジェクト名)」という、小さい木箱のようなコミュニケーションロボットを開発中である。HACOはカメラ(取り付け型)、マイク、センサーを搭載。会話、身振り手振りによるコミュニケーションが可能となっている。東出氏が目指すのは、画面に依存しない次世代の情報端末だ。最初の機能としては、会話での情報検索、料理メニューの提示、ダンスによるコミュニケーション等。アプリケーションとの提携によって、できることが逐次増えていく予定だ。
画面に依存しない情報端末
―画面に依存しないとは?
今の情報端末って、どれも画面に依存していて、指で操作しなきゃいけないじゃないですか。次世代の情報端末は、より直感的で、人間同士のコミュニケーションに近い操作でなければならないと思っています。会話での操作や、身振り手振りでの操作が例として挙げられます。また、指示される前に能動的に動けるということも重要です。
具体的に言うと、ユーザーの嗜好や気分に合わせて会話でランチの提案をしたり、見る可能性の高い番組を能動的に録画しておいてくれたりとか。時間が経つにつれて、ユーザーの要望を学習していき、能動的に動けるようになります。人間に近くなるごとに、直感的で楽しい情報端末になるはずです。
―HACOは他のパーソナルロボットとはどのような違いがあるのでしょうか?
今のパーソナルロボットって価格が高いじゃないですか。普通の人はなかなか買えないし、オタク的な人たちにとってもカスタマイズに試行錯誤できるものが望ましい。だからカスタマイズして、失敗して壊しちゃっても、また買い直せるくらいの値段にした方が良いよねって考えました。今のロボットは、おもちゃみたいに扱えない。HACOは値段を三万円台に抑える予定です。
メインコンピュータには、利用者が増えてきているRaspberry Piを搭載しています。外装は木材で、レーザーカッターで切り出すことによって価格を抑えています。そして大きな特徴が、外装、ソフトウェア、基板データ全てがオープンソースだということです。誰でも自由にカスタマイズすることができます。もちろんアプリとも連携します。もうすでにいくつかの提携先が決まっていて、これからもインストールできるアプリが増えていく予定です。
―ユーザーを巻き込んで開発を進めていくということですか?
今、ロボット開発のコミュニティって上位で固まりすぎていますよね。もっと広い範囲でアイデアが集まればいいなと思って。HACOのコミュニティを作ることによって、例えば、レーザーカッターを得意としている人に頭に角を付けてもらったり、外装をLEDで光らせたりと、思いがけない使われ方やアプリが生まれます。このように、ユーザーと一緒に進化していくことを期待してオープンソースにしました。
話しかけたくなる情報端末
―なぜ形状をこのようなロボットにしようと思ったのですか?
擬人化、生物化した方がユーザーの情報が集まりやすいからです。家庭に本当の意味でIoTが普及する時、例えばユーザーの体調を把握してエアコンの温度を調節したり、軽い意図を察知して先回りで行動できるようになります。この時、ユーザーの膨大な情報を集めておかなくてはなりません。もし情報端末がペットの見た目をしていたら、ついつい話しかけちゃいますよね。無機質なものよりは、可愛いロボットを側に置いておきたくなるはずです。そうなるとユーザーの情報が段違いで集まりやすい。家庭でのIoTを実現するためにも、よりユーザーが親しみを抱きやすいものを目指そうと考えました。
―今の目標は?
まずは今年の7月にクラウドファンディングで資金を募ります。そして10月には一般販売。クラウドファンディングでどれだけ集まるかにもよるのですが、2018年2月までに最大2000台を販売することが目標です。
(文・構成=昆梓紗、大森翔平)
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