CO2削減、日本企業の技術は「高コストで実際の競争力は高くない」
揺れる「パリ協定」 IGES・浜中理事長インタビュー
米トランプ政権が温暖化対策の国際ルール「パリ協定」から離脱するかどうか、揺れている。2015年のパリ協定合意の立役者だった米国が離脱すれば、国際社会にも影響を与えそうだ。先行きに不透明感が出てきた中で、日本政府や企業は温暖化対策にどう取り組むべきなのか、地球環境戦略研究機関(IGES)の浜中裕徳理事長に聞いた。
―トランプ政権の判断が注目されます。
「目の前のことに振り回されている。パリ協定が合意された背景を忘れてはならない。産業革命前からの気温上昇を2度C未満に抑える目標を世界は共有した。16年の平均気温と比べると残り1度Cしか猶予はない。気候変動問題は急速に深刻化している」
―米国が離脱した場合の影響は。
「カリフォルニア州などは先進的な温暖化政策をとっている。企業も競争に勝つため何をすべきか、理解している。連邦政府の方針が変わろうとも、大きな流れに変更はない。中国も大気汚染の改善と温暖化対策のベクトルが重なり、排出量取引制度を全国に拡大した。中国企業の実力も上がっている」
―日本企業の課題は何でしょうか。
「日本の技術は現在のシステムを前提にしている。しかも高コストで実際の競争力は高くない。排出ゼロを求める将来市場を先取りしないと、競争で後れを取る心配がある」
―日本政府は温室効果ガス排出量を50年に80%削減する目標を決めました。
「パリ協定で求められるのは、ちまちました削減ではない。しかも、世界中どこへ行っても削減が迫られる。世界の排出量の3%しかない日本だけやるのは不公平という主張は的外れ。大胆な削減を先にやると国際競争力が低下するという意見もあるが、そういう時代でもない」
―経済産業省は途上国の削減を支援した成果を日本の削減量に加える海外優先、環境省は国内重視と分かれています。
「環境省も海外貢献は重要と言っている。ただし、国際社会に海外での貢献を日本の削減量として認めてもらえるかが課題だ。認められたとしても、日本企業は本当に貢献できるのか。排出ゼロの要求に耐えられるのか。まず国内で市場を作り、技術・事業を磨かないといけない」
【記者の目】
26日からのイタリア・主要国首脳会議後に、トランプ政権はパリ協定の離脱・残留を判断すると見られる。仮に離脱しても、日本は国際競争で負けないために温暖化対策技術の開発の手を緩めてはいけない。米企業は温室ガス排出削減が商機になると考え、電気自動車のテスラモーターズのような新興企業も成長している。
(聞き手=松木喬)
―トランプ政権の判断が注目されます。
「目の前のことに振り回されている。パリ協定が合意された背景を忘れてはならない。産業革命前からの気温上昇を2度C未満に抑える目標を世界は共有した。16年の平均気温と比べると残り1度Cしか猶予はない。気候変動問題は急速に深刻化している」
―米国が離脱した場合の影響は。
「カリフォルニア州などは先進的な温暖化政策をとっている。企業も競争に勝つため何をすべきか、理解している。連邦政府の方針が変わろうとも、大きな流れに変更はない。中国も大気汚染の改善と温暖化対策のベクトルが重なり、排出量取引制度を全国に拡大した。中国企業の実力も上がっている」
―日本企業の課題は何でしょうか。
「日本の技術は現在のシステムを前提にしている。しかも高コストで実際の競争力は高くない。排出ゼロを求める将来市場を先取りしないと、競争で後れを取る心配がある」
―日本政府は温室効果ガス排出量を50年に80%削減する目標を決めました。
「パリ協定で求められるのは、ちまちました削減ではない。しかも、世界中どこへ行っても削減が迫られる。世界の排出量の3%しかない日本だけやるのは不公平という主張は的外れ。大胆な削減を先にやると国際競争力が低下するという意見もあるが、そういう時代でもない」
―経済産業省は途上国の削減を支援した成果を日本の削減量に加える海外優先、環境省は国内重視と分かれています。
「環境省も海外貢献は重要と言っている。ただし、国際社会に海外での貢献を日本の削減量として認めてもらえるかが課題だ。認められたとしても、日本企業は本当に貢献できるのか。排出ゼロの要求に耐えられるのか。まず国内で市場を作り、技術・事業を磨かないといけない」
【記者の目】
26日からのイタリア・主要国首脳会議後に、トランプ政権はパリ協定の離脱・残留を判断すると見られる。仮に離脱しても、日本は国際競争で負けないために温暖化対策技術の開発の手を緩めてはいけない。米企業は温室ガス排出削減が商機になると考え、電気自動車のテスラモーターズのような新興企業も成長している。
(聞き手=松木喬)
日刊工業新聞2017年5月24日