静岡県立藤枝北高等学校、“部活動”で地元企業と連携、商品開発
【連載】高校生に学ぶ!ビジネスアイデアと戦略#2
静岡県立藤枝北高校の食品サイエンス部は、4年前から地域の水田から採取した天然糀菌を「地域資源」として活用し、商品開発や町おこしに取り組んでいる。現在部員は5名の少数精鋭。研究や実験、フィールドワークと日々精力的に活動している。勉強との両立は「厳しいときもある」というが、和気あいあいと楽しみながら、かつ真剣に取り組む様子からは自然なチームワークが醸成されていることがわかる。
静岡県立藤枝北高校は、創設110年を超える伝統校。総合学科のうち、より専門的に学ぶことができる6つの系列(園芸科学、食品科学、情報科学、環境化学、自然科学、人間社会)がある。高校生バイヤーとなって探しだした地元の農産物や食品、高校生が開発した商品を企画・運営する「北高ストアー」で販売するなど、地域の魅力を伝える取り組みを行っている。ビジネスプラン・グランプリ以外にも各種コンテストや弁論大会などに応募し、多数の受賞実績あり。
発酵調味料(味噌・醤油・日本酒等)の素である糀を作り出す「糀菌」は、日本の食文化に欠かすことができないため国菌に認定されている。現在、市販品の製造には使用されていない天然の糀菌を地域の水田から採取。日本酒や調味料などの発酵食品を開発・販売するほか、発酵食品を作る体験教室も定期的に開催することで地域活性化を図るプラン。昨年から過疎化が深刻な浜松市水窪町で地酒を開発するなど「発酵の町プロジェト」に取り組んでいる。
食品サイエンス部は、天然の糀菌を使った商品開発を4年前から行っている。ビジネスプラン・グランプリを知ったのは同県の高校が第2回のビジネスプラン・グランプリで審査員特別賞を受賞したことから。西尾先生の勧めもあり、第3回に初出場しベスト100を受賞。リーダーの山本雛代さんは「前回に引き続き第 4回に応募し、準グランプリに選ばれて嬉しかったですが、グランプリを目指していただけに少し残念だったというのが素直な感想」という。
メンバー全員がプランづくりで苦労したのは、「学校から水窪町までが予想以上に遠かったこと(笑)」という。水窪町で採取した天然糀菌を使用した日本酒を作るため、藤枝市から電車を乗り継いで 3時間、打ち合わせや町おこし合宿として何度も水窪町を訪れた。それでも直接会ってコミュニケーションを取れたことは、プランをつくるうえで役立った。
地元企業と共同で開発した日本酒は、当初売れるかどうか心配していたが、思った以上に好評で増産するほど。大量に買ってくれた方に理由を聞くと、「親戚や子供に送って水窪町を思い出してもらいたい」と話してくれた。このような取り組みを通じて、「感謝されることが一番の喜び」とメンバー全員が声を揃えた。リーダーの山本さんは、「部活動を通して将来の夢を見つけることができました。商品開発を通じて感謝され、作る楽しみを知ることができたから」という。将来は商品開発に携わりたいと考え、以前から考えていた進路を変更した。
部活動で取り組んでいるため、平日に加え、土日も活動がある。大変なことも多いが、普段の取り組みをビジネスと結びつけ、地域活性化につながるプランをつくる経験は得ることが多い。今後は「発酵の町プロジェクト」を推進するために、一般の人向けの発酵教室を開催するなど、多くの人に活動を知ってもらえるように取り組んでいく。
<指導にあたった西尾眞一先生>
応募した理由は「力試し」。日々の活動の中で地域の方々に喜んでいただくのがやりがいにつながっています。さらに「ビジネスプラン・グランプリで入賞したい」という目標を掲げ、それに向けて頑張ることでモチベーションや達成感が得られます。プランづくりは簡単ではありませんでしたが、前回の参加経験をもとに、部活動をうまくビジネスプランにまとめることができたと思います。
大勢の前でプレゼンする機会はあまりないので、生徒たちは日々の活動では得られないスキルを身につけることができたと思います。生徒たちには、最終審査会でプレゼンする際には日頃から原稿を暗記するように指導しています。自分の言葉で伝える経験を積むことで、体験教室など他の場面でも人前でしっかりと話せるようになるからです。最終審査会で原稿を暗記し堂々と発表する姿に、部活動では感じることができない生徒の成長を実感することができました。
<杉井酒造・杉井均乃介代表>
4年前、西尾先生から連絡があり、天然糀菌を使った日本酒づくりがスタートしました。地元の天然糀菌で酒づくりをするという例はなく、初めての試みでした。生徒のみなさんには、糀菌をまくなど の仕込み作業を手伝ってもらいました。2014年7月には、生徒が地域の水田から採取した天然糀菌を利用した日本酒「米の花を紡ぐ物語」を発売しました。静岡県のアンテナショップや地元の酒屋など で1,800本ほどを販売。日本酒の新商品は定着させることが難しいですが、支援してくれる人も増え、目下4回目の仕込みに入っています。
次に、水窪町で採取した天然糀菌を使用した日本酒をつくりました。町おこしのために水窪町で販売すると聞いた時には売れ行きが心配になりましたが、その心配をよそに2か月で1,000本を売り切ってしまい増産しました。それだけのインパクトがある商品だったのでしょう。もともと元気のある生徒さんでしたが、商品開発を行い実際に販売することで、顔つきにも自信が出てきたように感じます。
各種コンテストや弁論大会にて多数の受賞実績
静岡県立藤枝北高校は、創設110年を超える伝統校。総合学科のうち、より専門的に学ぶことができる6つの系列(園芸科学、食品科学、情報科学、環境化学、自然科学、人間社会)がある。高校生バイヤーとなって探しだした地元の農産物や食品、高校生が開発した商品を企画・運営する「北高ストアー」で販売するなど、地域の魅力を伝える取り組みを行っている。ビジネスプラン・グランプリ以外にも各種コンテストや弁論大会などに応募し、多数の受賞実績あり。
天然の糀菌を用いて町おこし
発酵調味料(味噌・醤油・日本酒等)の素である糀を作り出す「糀菌」は、日本の食文化に欠かすことができないため国菌に認定されている。現在、市販品の製造には使用されていない天然の糀菌を地域の水田から採取。日本酒や調味料などの発酵食品を開発・販売するほか、発酵食品を作る体験教室も定期的に開催することで地域活性化を図るプラン。昨年から過疎化が深刻な浜松市水窪町で地酒を開発するなど「発酵の町プロジェト」に取り組んでいる。
取り組みを通じて、感謝されることが一番の喜び
食品サイエンス部は、天然の糀菌を使った商品開発を4年前から行っている。ビジネスプラン・グランプリを知ったのは同県の高校が第2回のビジネスプラン・グランプリで審査員特別賞を受賞したことから。西尾先生の勧めもあり、第3回に初出場しベスト100を受賞。リーダーの山本雛代さんは「前回に引き続き第 4回に応募し、準グランプリに選ばれて嬉しかったですが、グランプリを目指していただけに少し残念だったというのが素直な感想」という。
メンバー全員がプランづくりで苦労したのは、「学校から水窪町までが予想以上に遠かったこと(笑)」という。水窪町で採取した天然糀菌を使用した日本酒を作るため、藤枝市から電車を乗り継いで 3時間、打ち合わせや町おこし合宿として何度も水窪町を訪れた。それでも直接会ってコミュニケーションを取れたことは、プランをつくるうえで役立った。
地元企業と共同で開発した日本酒は、当初売れるかどうか心配していたが、思った以上に好評で増産するほど。大量に買ってくれた方に理由を聞くと、「親戚や子供に送って水窪町を思い出してもらいたい」と話してくれた。このような取り組みを通じて、「感謝されることが一番の喜び」とメンバー全員が声を揃えた。リーダーの山本さんは、「部活動を通して将来の夢を見つけることができました。商品開発を通じて感謝され、作る楽しみを知ることができたから」という。将来は商品開発に携わりたいと考え、以前から考えていた進路を変更した。
部活動で取り組んでいるため、平日に加え、土日も活動がある。大変なことも多いが、普段の取り組みをビジネスと結びつけ、地域活性化につながるプランをつくる経験は得ることが多い。今後は「発酵の町プロジェクト」を推進するために、一般の人向けの発酵教室を開催するなど、多くの人に活動を知ってもらえるように取り組んでいく。
日頃の部活動では感じることができない、 生徒の成長を実感
<指導にあたった西尾眞一先生>
応募した理由は「力試し」。日々の活動の中で地域の方々に喜んでいただくのがやりがいにつながっています。さらに「ビジネスプラン・グランプリで入賞したい」という目標を掲げ、それに向けて頑張ることでモチベーションや達成感が得られます。プランづくりは簡単ではありませんでしたが、前回の参加経験をもとに、部活動をうまくビジネスプランにまとめることができたと思います。
大勢の前でプレゼンする機会はあまりないので、生徒たちは日々の活動では得られないスキルを身につけることができたと思います。生徒たちには、最終審査会でプレゼンする際には日頃から原稿を暗記するように指導しています。自分の言葉で伝える経験を積むことで、体験教室など他の場面でも人前でしっかりと話せるようになるからです。最終審査会で原稿を暗記し堂々と発表する姿に、部活動では感じることができない生徒の成長を実感することができました。
天然糀菌を通じて人々の地元愛を強く実感
<杉井酒造・杉井均乃介代表>
4年前、西尾先生から連絡があり、天然糀菌を使った日本酒づくりがスタートしました。地元の天然糀菌で酒づくりをするという例はなく、初めての試みでした。生徒のみなさんには、糀菌をまくなど の仕込み作業を手伝ってもらいました。2014年7月には、生徒が地域の水田から採取した天然糀菌を利用した日本酒「米の花を紡ぐ物語」を発売しました。静岡県のアンテナショップや地元の酒屋など で1,800本ほどを販売。日本酒の新商品は定着させることが難しいですが、支援してくれる人も増え、目下4回目の仕込みに入っています。
次に、水窪町で採取した天然糀菌を使用した日本酒をつくりました。町おこしのために水窪町で販売すると聞いた時には売れ行きが心配になりましたが、その心配をよそに2か月で1,000本を売り切ってしまい増産しました。それだけのインパクトがある商品だったのでしょう。もともと元気のある生徒さんでしたが、商品開発を行い実際に販売することで、顔つきにも自信が出てきたように感じます。
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