安川電機と中国・美的の提携はどこまで深まる?いつかライバルにも
今月中にリハビリ支援装置を中国市場へ。相次ぎ医療機器を投入
中国家電大手の美的集団は安川電機と共同開発した医療・介護機器を、5月末に中国市場に投入する。まず足のリハビリ支援装置など4製品を順次投入する。安川の技術をもとに、美的のデザインや部材調達力を活用し、現地ニーズに応じた価格競争力の高い製品を開発する。高齢化が進む中国では医療や介護需要の拡大が見込まれる。美的は2019年までに約20製品を投入し、医療・介護用ロボットや装置の需要を取り込む。
投入するのは、骨折などで足が不自由な患者のリハビリを支援するバイク型の装置や、排せつを支援する装置など4製品。4製品のうち1製品は既に当局の認可を得ており、残りは半年以内に取得する見込みだ。
サーボモーターや産業用ロボットなどの安川の駆動制御技術をもとに、各装置の基本構造を設計。エアコンなど家電分野で培った美的のノウハウをいかし、現地ニーズを反映した製品を開発する。例えばバイク型リハビリ支援装置の場合、美的の部材調達網の活用によって、価格を現地メーカーの製品と比べ約2割抑えられるという。
美的と安川は15年に産業用ロボットとサービスロボット事業で提携。16年3月に医療や介護用ロボットを手がける合弁会社を中国に設立し、リハビリ支援装置などを開発してきた。
美的集団は空調や冷蔵庫などを手がける総合家電メーカー。年間売上高は約2兆6000億円。16年には安川と並び産業用ロボット世界4強の独クカを買収するなど家電事業だけでなくロボット事業も拡大している。
安川電機と中国の美的集団が提携を本格化する。サービスロボット事業ではリハビリ支援装置の投入を控え、産業用ロボットでは美的のエアコン工場から炊飯器工場などにも導入を広げる。
一方、美的は2016年にドイツの産業用ロボット大手クカを買収。同業の安川との提携への影響が懸念されるが、安川の幹部は「美的のロボット需要はクカと安川だけでまかないきれないほど大きい」とし、現状は競合関係にはならないとの認識を示す。
「設計をやり直せ」(安川幹部)。安川は提携当初、同社が日本で開発したリハビリ支援装置などを中国向けに再設計して販売する計画だったが、市場の反応は鈍く16年6月に断念した。その要因の一つがデザインで、中国の病院などでは安川の製品がなじまなかった。もう一つが価格。商品の中には現地の競合他社と比べ安川の製品が5割程度高い製品もあったという。
戦略の見直しで、安川の駆動制御技術を核に、デザインや部材の調達を美的が担う開発体制に改めた。家電が浸透する中国では美的のデザインへのなじみは深い。
また、規模を生かした圧倒的な現地調達力により価格競争力を飛躍的に向上。美的の営業基盤の活用で医療・介護分野の複雑なビジネスもスムーズになり、安川幹部は「中国での美的の存在感に驚かされる」と舌を巻く。
安川は既に日本でリハビリ支援装置を開発し、医療機関などと実証事業に取り組む。美的との提携は安川にも中国での医療や介護機器市場への新規参入となる。各機器には主力のサーボモーターの搭載が見込まれ、参入で同分野への足がかりをつかむ狙いもある。
提携でサービスロボットとともに立ち上げたのが、美的向けに産業用ロボットを開発製造する合弁会社。美的が提携を打診するきっかけとなった事業で、安川の技術をいかして生産拠点の人員を5年間で約13万人から約9万人にスリム化する目標を掲げる。
自動車産業向けが中心の安川には家電製造向けのロボットや工場自動化(FA)のノウハウを蓄積する好機となる。美的のエアコン製造からはじめた自動化の取り組みは現在、炊飯器や冷蔵庫へと広がる。
美的は自社工場の自動化で培ったノウハウの外販も計画。製造業の競争力向上を後押しする中国政府の政策も追い風にFA事業の拡大による成長を目指す。
一方、クカの買収が両社の関係に水を差す可能性も指摘されたが、「美的のロボット需要は大きく、クカとてんびんにかけられることは一切ない」(安川幹部)。また美的が注力するFA事業でも安川とクカだけではまかないきれない需要が続く見通しだ。
(文=西沢亮)
投入するのは、骨折などで足が不自由な患者のリハビリを支援するバイク型の装置や、排せつを支援する装置など4製品。4製品のうち1製品は既に当局の認可を得ており、残りは半年以内に取得する見込みだ。
サーボモーターや産業用ロボットなどの安川の駆動制御技術をもとに、各装置の基本構造を設計。エアコンなど家電分野で培った美的のノウハウをいかし、現地ニーズを反映した製品を開発する。例えばバイク型リハビリ支援装置の場合、美的の部材調達網の活用によって、価格を現地メーカーの製品と比べ約2割抑えられるという。
美的と安川は15年に産業用ロボットとサービスロボット事業で提携。16年3月に医療や介護用ロボットを手がける合弁会社を中国に設立し、リハビリ支援装置などを開発してきた。
美的集団は空調や冷蔵庫などを手がける総合家電メーカー。年間売上高は約2兆6000億円。16年には安川と並び産業用ロボット世界4強の独クカを買収するなど家電事業だけでなくロボット事業も拡大している。
ロボット・FA、今は需要おう盛でウィンウィン
安川電機と中国の美的集団が提携を本格化する。サービスロボット事業ではリハビリ支援装置の投入を控え、産業用ロボットでは美的のエアコン工場から炊飯器工場などにも導入を広げる。
一方、美的は2016年にドイツの産業用ロボット大手クカを買収。同業の安川との提携への影響が懸念されるが、安川の幹部は「美的のロボット需要はクカと安川だけでまかないきれないほど大きい」とし、現状は競合関係にはならないとの認識を示す。
「設計をやり直せ」(安川幹部)。安川は提携当初、同社が日本で開発したリハビリ支援装置などを中国向けに再設計して販売する計画だったが、市場の反応は鈍く16年6月に断念した。その要因の一つがデザインで、中国の病院などでは安川の製品がなじまなかった。もう一つが価格。商品の中には現地の競合他社と比べ安川の製品が5割程度高い製品もあったという。
戦略の見直しで、安川の駆動制御技術を核に、デザインや部材の調達を美的が担う開発体制に改めた。家電が浸透する中国では美的のデザインへのなじみは深い。
また、規模を生かした圧倒的な現地調達力により価格競争力を飛躍的に向上。美的の営業基盤の活用で医療・介護分野の複雑なビジネスもスムーズになり、安川幹部は「中国での美的の存在感に驚かされる」と舌を巻く。
安川は既に日本でリハビリ支援装置を開発し、医療機関などと実証事業に取り組む。美的との提携は安川にも中国での医療や介護機器市場への新規参入となる。各機器には主力のサーボモーターの搭載が見込まれ、参入で同分野への足がかりをつかむ狙いもある。
提携でサービスロボットとともに立ち上げたのが、美的向けに産業用ロボットを開発製造する合弁会社。美的が提携を打診するきっかけとなった事業で、安川の技術をいかして生産拠点の人員を5年間で約13万人から約9万人にスリム化する目標を掲げる。
自動車産業向けが中心の安川には家電製造向けのロボットや工場自動化(FA)のノウハウを蓄積する好機となる。美的のエアコン製造からはじめた自動化の取り組みは現在、炊飯器や冷蔵庫へと広がる。
美的は自社工場の自動化で培ったノウハウの外販も計画。製造業の競争力向上を後押しする中国政府の政策も追い風にFA事業の拡大による成長を目指す。
一方、クカの買収が両社の関係に水を差す可能性も指摘されたが、「美的のロボット需要は大きく、クカとてんびんにかけられることは一切ない」(安川幹部)。また美的が注力するFA事業でも安川とクカだけではまかないきれない需要が続く見通しだ。
(文=西沢亮)
日刊工業新聞社2017年5月18日