「鴻海・シャープ連合」の勝機はどこだ!#03人工知能×IoTを新しい事業に

鴻海は家電事業は経験が少なく、関心は低い?

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シャープがロボ・ガレージと共同開発した二足歩行ロボット型携帯電話「ロボホン」
 電機業界でアジア勢を軸とする再編劇が続いている。台湾・鴻海精密工業がシャープを買収したのは、その最たる例だ。2016年に入ってから中国家電大手のハイアールが米ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業買収を発表。東芝の家電事業は中国・美的集団が買い取ることを決めた。ただ、これらの買収はひとくくりには論じられない。特にシャープは、電子機器受託製造企業(EMS)の傘下にまるごと入って経営再建を進める点が特徴だ。

 美的が東芝の家電事業買収を決めたのは、東芝が持つ高い技術力や販路を活用し、日本と東南アジア市場で拡販するためだ。また12年に旧三洋電機の家電部門を買収したハイアールは三洋が使っていた「アクア」ブランドで展開し、「中国企業のイメージを消し、成長市場の東南アジアで攻勢をかけている」(家電メーカーのアナリスト)。

 さらにGEの家電事業を買収し米国など先進国市場の開拓を狙う。いずれも電機メーカーが同業を吸収し、地域や顧客層を補完する動きだ。

 一方、EMSである鴻海の最大の狙いはシャープのディスプレーパネル事業だが、シャープブランドや家電の製品企画力を手に入れて総合電機メーカーへの脱皮を図るとの見方もある。ただ、「家電事業は経験が少なく、関心は低い」(鴻海関係者)との声も聞かれ、その本気度は計り知れない。

 郭台銘鴻海会長の発言とシャープの方向性がディスプレーパネル以外で合致するのは、モノのインターネット(IoT)システムの事業拡大だ。シャープは売り上げ規模15兆円の鴻海傘下に入ることで、これまで抑制してきた成長投資を再開し、人工知能(AI)とIoTを組み合わせた「AIoT」を新しい事業の柱に育てる考えだ。

 ただ、AIやIoTは米グーグルや米アップル、韓国サムスン電子などのビッグプレーヤーが注目している市場。テレビやスマートフォンなどのデジタル機器で苦杯をなめた相手と再び戦うことになる。シャープの強みは「IoTで必要となるセンサーで情報を吸い上げ、意味を認識して、液晶などにアウトプットできるところ」(シャープ幹部)だが、集めた情報を有効に使う肝心のビジネスモデル構築はまだできていない。

 シャープが「目の付けどころ」と呼ぶ企画力は製品機能やモノづくりで発揮されることが多く、ビジネスモデルの構築に生かされた例は少ない。一方、アップルは洗練された設計・デザイン力と、EMS活用でスマートフォン市場を創造してビジネスモデルを確立。現在もトレンドリーダーとして君臨する。

 世界最大のEMS傘下に入ったシャープも今後、勝てるビジネスモデルの構築に「目の付けどころ」を発揮することが必要だ。

(文=大阪・錦織承平、下氏香菜子)

日刊工業新聞2016年4月7日電機・電子部品

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

今のところ具体的にシナジーが見えているのはディスプレー事業だけ。シャープは人工知能の研究やロボットの製品化に力を入れているが、鴻海が加わってそれが事業の新しい核になるとは思えない。両者ともに欠けているのはコンシューマー領域でのブランディング力。現状は「凡庸な家電メーカー」になるイメージしか沸かない。

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