電機大手、「成長路線へシフト」って本当なの?
シャープと、経営再建中の東芝を除く電機大手6社の2018年3月期連結決算業績予想が出そろった。6社全てが営業増益を見込む。既存の主力事業が堅調に推移するほか、次世代を担う新分野でも成長の芽が見え始めた。日立製作所の東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は「17年度は成長に向けギアチェンジしていく」と話す。地政学リスクの高まりなど課題はあるものの、“日本電機”の成長路線へのシフトが鮮明になってきた。
ソニーの18年3月期の営業利益見通しは5000億円と過去最高に迫る。世界的に高い競争力を持つスマートフォン向け画像センサーがけん引する。三菱電機は主力のFA機器の引き合いが中国、韓国で好調。「17年度上期中は高水準の受注が続く」(松山彰宏専務執行役)という。
「持続的成長基盤が整った」―。パナソニックの津賀一宏社長は今後の業績に自信を示す。根拠の一つは成長分野に据える車載事業。米テスラ向け電池の供給拡大、車載情報機器の大型案件により「(将来の車載事業の売り上げ目標である)2兆円に手応えを感じている」とする。
経営危機に陥ったシャープも親会社の台湾・鴻海精密工業の主導で調達費削減などに取り組み、17年3月期に営業損益が624億円の黒字(前期は1619億円の赤字)と3期ぶりに転換した。18年3月期の業績予想は5月に公表予定だが、当期損益の黒字化を見込む。
08年秋のリーマン・ショック以降、日立や三菱電機がいち早く復活を果たす一方で、一部企業は浮揚できずにいた。しかし選択と集中を経て主力事業を基盤に、成長分野で収益の上積みを図る好循環が日本の電機業界全体に広がりつつある。
ただ油断はできない。日立は18年3月期の営業利益率が7%(前期は6・4%)に達する見通しだが、西山光秋執行役専務最高財務責任者(CFO)は「世界の競合と比べると、まだまだの水準」と危機感をあらわにする。成長路線を確かなものにするため、各社にとって17年度は勝負の年となる。
パナソニックは2020年以降に欧州で電気自動車(EV)など向けの電池工場を建設する方針を明らかにした。11日に東京都内で会見した津賀一宏社長は「カーメーカーの要望を聞いている」と説明。顧客から一定量を安定購入する確約を得た上で投資を決める方針だ。同社は日本に加え、米国、中国でも17年度内にリチウムイオン車載電池の生産を始める。欧州に工場を設ければ環境対応車の4大市場すべてに生産拠点を持つことになる。
19年3月期の車載事業の売上高目標は2兆円。津賀社長は「2兆円は手応えを感じている。20年以降に向け社内では右肩上がりの大きな目標を据えた。営業利益は5%以上」と車載分野のさらなる成長に自信を見せた。
18年3月期連結決算予想も車載事業をけん引役に14年3月期以来の増収増益見通し。米テスラ向け電池の供給拡大、車載情報機器の大型案件などで車載事業が売上高と利益を押し上げる。
エアコンや白物家電なども貢献、営業赤字事業である半導体や液晶パネルは20年3月期黒字化に向けて収益改善に取り組む。17年3月期に営業赤字転落したソーラー事業は海外に活路を求め、米国・アジアに続いて中国市場の開拓も視野に入れる。
17年3月期連結決算は車載事業の伸長や米冷蔵機器メーカーのハスマンの連結効果などがあったが円高の影響で減収。米国当局と贈賄の疑いなどで協議中の航空機機器事業では引当金を積んだが金額は公表しなかった。
ソニーは2018年3月期を最終年度とする中期経営計画について、営業利益目標5000億円の必達を宣言した。吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)は「目標達成が重要なマイルストーンだ」と強調。18年3月期連結決算はスマートフォン、家電、音楽以外の全部門で増収、営業増益を狙う。また17年3月期は、最優先課題のスマホ事業が黒字に転換。地震などの影響を除くと、電機の主要5事業が黒字化し目標達成への布石を打った。
18年3月期の営業利益目標で、最も上昇幅が大きいのが半導体だ。熊本地震など特殊要因を除いた事業単体の営業利益予想を、前期比約37・9%増の863億円とした。けん引役はスマホ向けイメージセンサーだ。「カメラ搭載数が増えると同時に、高機能化が進んでおり、追い風だ」(吉田CFO)という。
年度内には計1300億円を投じ、熊本県や大分県の工場を増強。直径300ミリメートルウエハー換算で月8万8000枚の生産能力を月10万枚に引き上げる。
ゲームとカメラの両事業もそれぞれ営業利益で前期比25・4%増、同26・8%増と強気の予想を崩していない。これら成長事業の先行きが目標達成に大きく左右しそうだ。
吉田CFOは安定成長の要を「いたずらに規模を追わず、新しいことにチャレンジする創業の精神」と説明する。ソニーの復活が本物かどうか、この1年で明らかになる。
三菱電機の2018年3月期連結決算業績予想(米国会計基準)は営業利益が前期比3・7%増の2800億円になる見通し。主力とするFA機器などの産業メカトロニクス部門の受注が韓国や中国で伸びる。またインフラ設備などの重電システム部門の採算性も向上する見込み。18年3月期の売上高は同1・4%増の4兆3000億円を予想する。前期と比べ為替レートを円高方向に設定しており売上高で680億円、営業利益で270億円の減少要因となる。
産メカ部門では、スマートフォン生産設備関連の旺盛な需要を取り込む。同部門の16年度下期(16年10月―17年3月)の売上高は下期としては過去最高だった。「17年度上期中は高水準の受注が続く」(松山彰宏専務執行役)という。
産メカと重電システムのほか、情報通信システム、電子デバイスの各部門も増収、営業増益を予想する。空調機器などの家庭電器部門は、販売強化などの投資を実施するため減益を見込む。
富士通の2018年3月期連結決算業績予想(国際会計基準)は、当期利益が前期比63・9%増の1450億円と過去最高になる見通し。2年がかりで進めてきた事業構造改革がほぼ一巡し、収益力が改善。全利益段階で大幅な増益を見込む。年間配当は同2円増の11円を予定する。
18年3月期の営業利益は、構造改革費用の負担減と事業再編に伴う株式売却益などを加味し、前期比57・5%増を見込む。主力のシステム・サービス事業は海外事業の回復に加え、国内でも底堅く推移し利益を押し上げる見通し。
田中達也社長は決算会見で「18年3月期は営業利益率が(前期比1・7ポイント増の)4・5%と、第1目標のゾーンに入る」と強調。その上で「事業全体の形と質を変え、営業利益率10%を目指す」と述べた。また中国のレノボグループと交渉中のパソコン事業の再編は「スキームは変わっておらず、できる限り早く最終合意したい」と話した。
NECが27日発表した2017年3月期連結決算(国際会計基準)は、当期利益が前期比64・0%減の273億円となった。期中に日本航空電子工業を連結子会社にしたものの、売上高は同5・7%減と低迷。また通信事業者の投資抑制や、公共システム事業で生じた不採算案件が響き、営業利益など各利益段階で大幅に減少した。
公共システム事業は人工衛星の開発で90億円の赤字が発生し苦戦した。通信事業者向けは次世代投資の端境期にあるほか、売り上げ増を期待した新興国向けが停滞した。さらに為替の円高に伴い、輸出製品に悪影響を及ぼした。
スマートエネルギー事業を中心とする、その他事業は損益が改善したものの、142億円の営業赤字を計上した。堅調だったのは企業システム事業にとどまった。
新野隆社長は同日、都内で会見し「16―18年度の中期経営計画を見直し、18年早々に新中計を策定する」と話した。消防・救急デジタル無線機器の独禁法違反に伴う指名停止の影響もあり、当面は苦戦が続く見通しだ。
シャープの2017年3月期連結決算は営業利益が624億円(前期は1619億円の赤字)と、3期ぶりに黒字転換した。売上高は前期比16・7%減の2兆506億円で、3兆円近くあった14年3月期の約3分の2に縮小した。ただ17年1―3月期の売上高は前年同期比7・9%増の5593億円と、11四半期ぶりに増加。規模縮小の流れも歯止めをかけつつある。
親会社の台湾・鴻海精密工業の主導による調達費削減や合理化により、液晶パネル事業や太陽電池事業が営業黒字に転換した。ただ液晶パネル工場の減損などにより、当期損益は3期連続で赤字を計上した。
18年3月期は当期損益の黒字転換を見込むが、具体的な数値は5月26日に発表する中期経営計画に盛り込む。
ソニーの18年3月期の営業利益見通しは5000億円と過去最高に迫る。世界的に高い競争力を持つスマートフォン向け画像センサーがけん引する。三菱電機は主力のFA機器の引き合いが中国、韓国で好調。「17年度上期中は高水準の受注が続く」(松山彰宏専務執行役)という。
「持続的成長基盤が整った」―。パナソニックの津賀一宏社長は今後の業績に自信を示す。根拠の一つは成長分野に据える車載事業。米テスラ向け電池の供給拡大、車載情報機器の大型案件により「(将来の車載事業の売り上げ目標である)2兆円に手応えを感じている」とする。
経営危機に陥ったシャープも親会社の台湾・鴻海精密工業の主導で調達費削減などに取り組み、17年3月期に営業損益が624億円の黒字(前期は1619億円の赤字)と3期ぶりに転換した。18年3月期の業績予想は5月に公表予定だが、当期損益の黒字化を見込む。
08年秋のリーマン・ショック以降、日立や三菱電機がいち早く復活を果たす一方で、一部企業は浮揚できずにいた。しかし選択と集中を経て主力事業を基盤に、成長分野で収益の上積みを図る好循環が日本の電機業界全体に広がりつつある。
ただ油断はできない。日立は18年3月期の営業利益率が7%(前期は6・4%)に達する見通しだが、西山光秋執行役専務最高財務責任者(CFO)は「世界の競合と比べると、まだまだの水準」と危機感をあらわにする。成長路線を確かなものにするため、各社にとって17年度は勝負の年となる。
日刊工業新聞2017年5月15日
パナソニック、車載に手応え
パナソニックは2020年以降に欧州で電気自動車(EV)など向けの電池工場を建設する方針を明らかにした。11日に東京都内で会見した津賀一宏社長は「カーメーカーの要望を聞いている」と説明。顧客から一定量を安定購入する確約を得た上で投資を決める方針だ。同社は日本に加え、米国、中国でも17年度内にリチウムイオン車載電池の生産を始める。欧州に工場を設ければ環境対応車の4大市場すべてに生産拠点を持つことになる。
19年3月期の車載事業の売上高目標は2兆円。津賀社長は「2兆円は手応えを感じている。20年以降に向け社内では右肩上がりの大きな目標を据えた。営業利益は5%以上」と車載分野のさらなる成長に自信を見せた。
18年3月期連結決算予想も車載事業をけん引役に14年3月期以来の増収増益見通し。米テスラ向け電池の供給拡大、車載情報機器の大型案件などで車載事業が売上高と利益を押し上げる。
エアコンや白物家電なども貢献、営業赤字事業である半導体や液晶パネルは20年3月期黒字化に向けて収益改善に取り組む。17年3月期に営業赤字転落したソーラー事業は海外に活路を求め、米国・アジアに続いて中国市場の開拓も視野に入れる。
17年3月期連結決算は車載事業の伸長や米冷蔵機器メーカーのハスマンの連結効果などがあったが円高の影響で減収。米国当局と贈賄の疑いなどで協議中の航空機機器事業では引当金を積んだが金額は公表しなかった。
日刊工業新聞2017年5月12日
ソニー、センサー再びけん引役に
ソニーは2018年3月期を最終年度とする中期経営計画について、営業利益目標5000億円の必達を宣言した。吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)は「目標達成が重要なマイルストーンだ」と強調。18年3月期連結決算はスマートフォン、家電、音楽以外の全部門で増収、営業増益を狙う。また17年3月期は、最優先課題のスマホ事業が黒字に転換。地震などの影響を除くと、電機の主要5事業が黒字化し目標達成への布石を打った。
18年3月期の営業利益目標で、最も上昇幅が大きいのが半導体だ。熊本地震など特殊要因を除いた事業単体の営業利益予想を、前期比約37・9%増の863億円とした。けん引役はスマホ向けイメージセンサーだ。「カメラ搭載数が増えると同時に、高機能化が進んでおり、追い風だ」(吉田CFO)という。
年度内には計1300億円を投じ、熊本県や大分県の工場を増強。直径300ミリメートルウエハー換算で月8万8000枚の生産能力を月10万枚に引き上げる。
ゲームとカメラの両事業もそれぞれ営業利益で前期比25・4%増、同26・8%増と強気の予想を崩していない。これら成長事業の先行きが目標達成に大きく左右しそうだ。
吉田CFOは安定成長の要を「いたずらに規模を追わず、新しいことにチャレンジする創業の精神」と説明する。ソニーの復活が本物かどうか、この1年で明らかになる。
日刊工業新聞2017年5月1日
三菱電機、主力「FA」中国で伸び
三菱電機の2018年3月期連結決算業績予想(米国会計基準)は営業利益が前期比3・7%増の2800億円になる見通し。主力とするFA機器などの産業メカトロニクス部門の受注が韓国や中国で伸びる。またインフラ設備などの重電システム部門の採算性も向上する見込み。18年3月期の売上高は同1・4%増の4兆3000億円を予想する。前期と比べ為替レートを円高方向に設定しており売上高で680億円、営業利益で270億円の減少要因となる。
産メカ部門では、スマートフォン生産設備関連の旺盛な需要を取り込む。同部門の16年度下期(16年10月―17年3月)の売上高は下期としては過去最高だった。「17年度上期中は高水準の受注が続く」(松山彰宏専務執行役)という。
産メカと重電システムのほか、情報通信システム、電子デバイスの各部門も増収、営業増益を予想する。空調機器などの家庭電器部門は、販売強化などの投資を実施するため減益を見込む。
日刊工業新聞2017年5月1日
富士通、事業構造改革が一巡
富士通の2018年3月期連結決算業績予想(国際会計基準)は、当期利益が前期比63・9%増の1450億円と過去最高になる見通し。2年がかりで進めてきた事業構造改革がほぼ一巡し、収益力が改善。全利益段階で大幅な増益を見込む。年間配当は同2円増の11円を予定する。
18年3月期の営業利益は、構造改革費用の負担減と事業再編に伴う株式売却益などを加味し、前期比57・5%増を見込む。主力のシステム・サービス事業は海外事業の回復に加え、国内でも底堅く推移し利益を押し上げる見通し。
田中達也社長は決算会見で「18年3月期は営業利益率が(前期比1・7ポイント増の)4・5%と、第1目標のゾーンに入る」と強調。その上で「事業全体の形と質を変え、営業利益率10%を目指す」と述べた。また中国のレノボグループと交渉中のパソコン事業の再編は「スキームは変わっておらず、できる限り早く最終合意したい」と話した。
日刊工業新聞2017年5月1日
NEC、「通信」端境期
NECが27日発表した2017年3月期連結決算(国際会計基準)は、当期利益が前期比64・0%減の273億円となった。期中に日本航空電子工業を連結子会社にしたものの、売上高は同5・7%減と低迷。また通信事業者の投資抑制や、公共システム事業で生じた不採算案件が響き、営業利益など各利益段階で大幅に減少した。
公共システム事業は人工衛星の開発で90億円の赤字が発生し苦戦した。通信事業者向けは次世代投資の端境期にあるほか、売り上げ増を期待した新興国向けが停滞した。さらに為替の円高に伴い、輸出製品に悪影響を及ぼした。
スマートエネルギー事業を中心とする、その他事業は損益が改善したものの、142億円の営業赤字を計上した。堅調だったのは企業システム事業にとどまった。
新野隆社長は同日、都内で会見し「16―18年度の中期経営計画を見直し、18年早々に新中計を策定する」と話した。消防・救急デジタル無線機器の独禁法違反に伴う指名停止の影響もあり、当面は苦戦が続く見通しだ。
日刊工業新聞2017年4月28日
シャープ、規模縮小に歯止め
シャープの2017年3月期連結決算は営業利益が624億円(前期は1619億円の赤字)と、3期ぶりに黒字転換した。売上高は前期比16・7%減の2兆506億円で、3兆円近くあった14年3月期の約3分の2に縮小した。ただ17年1―3月期の売上高は前年同期比7・9%増の5593億円と、11四半期ぶりに増加。規模縮小の流れも歯止めをかけつつある。
親会社の台湾・鴻海精密工業の主導による調達費削減や合理化により、液晶パネル事業や太陽電池事業が営業黒字に転換した。ただ液晶パネル工場の減損などにより、当期損益は3期連続で赤字を計上した。
18年3月期は当期損益の黒字転換を見込むが、具体的な数値は5月26日に発表する中期経営計画に盛り込む。
日刊工業新聞2017年5月1日