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「こしきしま」は離島の再生エネ普及モデルになるか

EV起点に街づくり
「こしきしま」は離島の再生エネ普及モデルになるか

水産加工会社がフェリー乗り場でEVを使い特産品を販売する

 九州の南、鹿児島県の離島で次世代の電力利用モデルとなる事業が始まっている。県北西に位置する薩摩川内市は、九州電力の原子力発電所や火力発電所が立地する九州の電力供給地。同市は2013年に「次世代エネルギービジョン」を策定。再生可能エネルギーを利用した町づくりを進める。

 薩摩川内市でも特に進んだ取り組みが行われているのが、九州本土からの距離約30キロメートルの離島である甑島(こしきしま)だ。15年3月に国定公園に指定され、釣り人には知名度が高い。人口は約5500人。高校がないため多くの若者は中学校卒業と同時に本土に渡る。電力系統は本土から独立しており、電力の大半は九州電力のディーゼル発電が支える。

 「エコアイランド」を掲げ、新産業創出を目的に15年度に甑島で始まったのが「甑島リユース蓄電池プロジェクト」。甑島と住友商事が共同で、電気自動車(EV)の使用済み電池(リユース電池)を利用した蓄電池システムを運用する。リユース電池は、全国から集めた日産自動車のEV「リーフ」36台分でまかなう。

 離島で再エネを普及するには課題がある。太陽光や風力を使った発電は、天候や季節で出力が変動する。電力は需要と供給のバランスを取る必要があるが、出力の大きな変動は停電の原因になりかねない。電力インフラが独立している離島では、大きなリスクになる。そこで、蓄電池が出力を安定させる手段として活躍する。甑島では最大出力100キロワットの太陽光発電設備の隣に蓄電池システムを置く。

 現在の甑島の再エネ率は約6%。住友商事国内環境エネルギー事業部の藤田康弘部長代理は「メガソーラー事業者を誘致し、モデル事業の確立を図りたい」とし、将来は再エネ比率を30%まで高めたい考えだ。

 17年4月に始まったのは「みらいの島共同プロジェクト」。日産がミニバンタイプのEV「e―NV200」40台を3年間無償貸与する。これにより島内では、軽自動車を除く普通車の10台に1台がEVになった。プロジェクトでEVは、観光客の送迎や福祉などに幅広く活用する。港では特産品を作っている水産業者が、納車式当日から移動販売車として活用を始めた。

 九州日産の馬場勝也社長は「島内を縦横無尽に走るのを想像するとわくわくする。新しい町づくりを発信してほしい」と期待する。薩摩川内市の岩切秀雄市長は「実証から新しい産業と雇用を生み出したい」と意気込む。
(文=西部・増重直樹)
日刊工業新聞2017年5月11日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
観光客の送迎にEVを利用するというのはとても良いと思います。 自然豊かな土地で興ざめするのは、宿泊施設や観光施設の送迎車両などが、轟音を上げながらマフラーから黒い排ガスを出して走る姿。そういう車に限って運転も荒い。そういう車だけが環境を汚しているとは思いませんが、その車で連れて行かれた先で「きれいな海、きれいな空」とか言われても、微妙な気持ちになります。 観光はイメージで売るものでもありますから、自治体は事業者に補助してでも切り替えを進めるべきです。それが自然エネルギーの地産地消と両立できれば、なおよしです。

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