甑島は東シナ海に浮かぶ離島。住友商事と薩摩川内市が事業者となって島内の廃校に「甑島蓄電センター」を整備し、2015年秋から運用を始めた。EV電池の再利用は、住商が普及を目指すビジネスモデルだ。
富士電機は技術面で協力し、設計・建設を担当した。日産自動車のEV「リーフ」36台から回収した電池をコンテナ3台に収納し、センター全体として600キロワット時の充電容量を持たせた。出力は800キロワットあり、中規模な太陽光発電所並みの電力を1度に放電できる。
気候の影響克服
太陽光や風力といった再エネは、気候の影響などで出力が変動する。これにより電気の周波数や電圧が乱れると、発電や変電、送電、配電といった「電力系統」が不安定になる。離島は系統網が短いため、こうした出力変動の影響が都市部と比べて大きくなり、再エネの導入量を増やせないといった課題がある。
甑島にも出力250キロワットの風力発電1基などがある。今回の事業で同100キロワットの太陽光発電所も新設した。蓄電センターは変動に合わせて充電と放電を瞬時に切り替え、周波数や電圧の乱れを取り除いて系統を安定化する。富士電機発電・社会インフラ事業本部の佐藤進担当課長は「1000キロワットの再エネを追加導入できる設計にした」と話す。
パワコンで制御
各地の離島でも蓄電池の導入が始まっている。富士電機も沖縄の多良間島、与那国島、九州の黒島、竹島など国内外で15件の納入実績がある。甑島は「再利用電池による経済性の高さ」(佐藤担当課長)が、これまでとの違いだ。EV電池の再利用で高額な蓄電池の導入費を大幅に圧縮した。
制御方法は新品の電池と大きな違いはないが、富士電機は稼働中に電池容量を自動計測する技術を採用した。常に監視し、劣化が激しい電池を見つけてすぐに交換できるようにするためだ。
富士電機は直流電力を交流に変換するパワーコンディショナー(電力調整装置)の大手。蓄電池は製造しないが、パワコンを生かして蓄電池の制御技術を蓄積してきた。甑島は電力会社以外が所有する蓄電池が系統と直接つながった初のケースでもあり、成果が注目される。
甑島で再利用電池による系統安定化の技術が確立できれば、各地の離島にも低コストに蓄電池を配備できる。同社がいち早く技術を示すことで、市場獲得の機会を得られる。
(文=松木喬)
松木 喬
04月23日
漫画「Dr.コトー」のモデルのお医者さんが甑島(下甑島)にいるそうです。同僚に教えてもらいネットを検索するとそのようです。本文では最後の方になりましたが、電力会社以外が蓄電池を系統につなげて電力品質を安定化する初めての事業というポイントにも興味があります。海外ではアンシュラリーサービスとして電力品質安定化をビジネスする企業が存在します。日本でも新しい電力ビジネスとして登場してくるのでしょうか。
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