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永守流、増やす減らすは大胆に

日本電産、M&Aの一方、工場はスリム化。
 日本電産は生産の合理化・自動化を進めることで、中国など新興国の工場で働く従業員を現在の約8万人から、2020年までに約半分の4万人程度に減らす。25日の記者会見で永守重信会長兼社長が方針を示した。固定費を減らした上で設備投資や研究開発費を強化。「人材の構成を大幅に変え、モーター単体からソリューションビジネスに変える」(永守会長)として、20年までに営業利益率15%を目指す。

 すでに同社では合理化・自動化で中国、タイ、メキシコなどの海外工場の従業員数を、15―16年の2年間で2万5000人減らしている。部品の内製化なども進め、売上原価を削減。一方で設備投資や研究開発費を強化、18年3月期までに研究開発費を1000億円増やし、技術系人材を1000人採用する。

独コンプレッサーメーカー買収


 日本電産は25日、ドイツの家庭・商業用冷蔵庫向けコンプレッサーメーカー「セコップグループ」を買収すると発表した。買収金額は1億8500万ユーロ(約220億円)。日本電産の高効率モーター技術と組み合わせ、冷蔵庫向けコンプレッサー事業に本格参入する。6月末に手続きを完了する予定。

 セコップはデンマークのダンフォスグループの子会社として設立し、2010年に独オーレリアスに買収された。エネルギー効率が高いコンプレッサーを強みとしており、家庭・商業用冷蔵庫向けに展開し高い実績を有している。16年12月期の売上高は3億5660万ユーロ(約425億円)。従業員は約2000人。

 日本電産はオーレリアスから株式を取得。セコップの持ち株会社と、スロバキアや中国、米国のセコップ子会社を傘下に収める。今回の買収により、冷媒を圧縮するコンプレッサーを初めて手がけることになる。年間1億7000万台規模と言われる冷蔵庫向けコンプレッサー市場に参入し、省エネ家電向け事業を強化していく構え。

 同社は今まで買収してきた企業を軸にして、家電産業事業本部の傘下にグローバルアプライアンス部門を設置。欧州・中国・メキシコを拠点にして、洗濯機や乾燥機など水回りの家電向けのモーターを中心に開発販売していた。

日刊工業新聞2017年4月26日



次期社長が必ずしも日本人である必要はない


 人口減少、市場規模の縮小―。国内経済を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。新たな市場を求めてグローバル化を進める日本企業だが、課題も少なくない。とりわけ大きな障壁となっているのが、日本人特有の「島国根性」にあると私は考える。

 ここに米国の興味深い事例がある。米国の大手企業ではエグゼクティブ、最低でも副社長以上に日本人は少なく、アジア出身では韓国人や中国人、インド人などが多数を占めるという。

 これは日本人がグローバルベースでの経営者になれていない証左であり、突き詰めれば島国根性にたどり着く。

 そもそも日本人は留学しても、卒業後すぐに日本に戻る傾向が顕著である。例えばハーバード大学を出ても、米国企業で活躍する人はわずかだろう。

 海外で一定の経験を積んでから戻っても遅くはないし、このままではいつまでたっても日本人エグゼクティブは出てこない。

 こうした背景もあり、日本企業には海外企業と対等に渡り合える人材もとかく不足しがちだ。では人材のグローバル化には何が必要か―。

 それには現地の人を使いこなすのが最良だが、これも日本企業は不得手。買収した海外企業のガバナンスにつまずく企業も多い。

 日本人が日本人の慣習で、買収企業を管理するからうまくいかない。日本と海外では経営手法が大きく異なることを認めた上で、経営システムを構築することが必要だ。

 前回、米国子会社のトップが私よりも給料が高いことに触れたが、当社には収益を稼ぐ人が一番偉いという倫理観がある。極言すれば、次期社長が必ずしも日本人である必要はない。

 ここまで割り切っている。今後、わが社の事業構造が変化し、家電・商業・産業用モーターが一番の稼ぎ頭となり、米国が最大市場になれば米国人がトップに立てば良い。世襲はそもそも考えていないし、これが真のグローバル企業の姿ではないか。

 この前も欧州のある企業を訪問した際に、トップ4人と面会した。出てきた4人は欧州、米国、アジアなど全員国籍が違う。国籍を問わず優秀な人がトップに就く。

 まさに理想の企業体だ。給与ベースも世界統一基準とし、どの勤務地でもスキルが同等なら同水準の給与を支払っているそうだ。当社も海外売上高比率が大きく伸びる2016年ごろには、給与体系の統一をグローバルで実施するつもりだ。

 こうなると共用語は当然英語になるが、国内拠点までも英語を使うのとは少し異なる。日本人ばかりの拠点で英語を使っても、あまり意味がない。部長クラス以上に昇進しようとすれば話は別で、英語は必須のスキルとなる。ただ、企業として一番大切なのは、社員の専門能力だ。言葉は一つの手段にすぎない。

 日本人社員に対しても言葉の問題はそれほど心配はしていない。実際に現地に行って、現地にとけ込んでいけば、半年で日常会話は不自由しなくなる。要は本人にどれだけチャレンジ精神があるかということだ。

日刊工業新聞2013年10月3日



尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
決算発表の日、53件目となるM&Aを発表したかと思えば、会見では海外工場の従業員削減も打ち出す。2020年度の2兆円という目標が現実味を増す中、経営のスピード感がますます高まっている。

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