「電線御三家」は再び輝けるか

光ファイバー絶好調も、岐路に立つ“祖業”電線

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フジクラは光ファイバーケーブルを接続する「光融着接続機」で世界シェアトップを握る(フジクラ提供)
 電線各社の情報通信事業が好調だ。世界的な情報通信技術(ICT)市場の拡大で光ファイバー関連製品の需要が急伸、追い風が吹く。各社は高いシェアを持つ製品を核に市場を深耕するとともに、IoT(モノのインターネット)や自動運転といった新たな需要の掘り起こしを狙う。一方、祖業の電線事業は成熟化した国内市場から、競合メーカーがひしめく海外市場へのシフトが求められている。

 「電線御三家」では2016年4月にフジクラが社長交代し、伊藤雅彦社長が就任。この4月には古河電気工業も小林敬一社長による新経営体制がスタート。今年創業120周年を迎えた住友電気工業は6月下旬に井上治住友電装社長が社長に昇格し、13年ぶりに社長交代する予定。新体制が動きだしている。

 こうした中、各社が注力するのが光ファイバーなどの情報通信事業。すでに光ファイバー市場において欠かせない技術を確立している。

光部品関連で世界をリード、高速・大容量化に対応


 光部品のレーザーの制御回路「ITLA」では古河電工が世界シェア50%以上でトップ。光ファイバーケーブルを接続する「光融着接続機」はフジクラが、電気信号と光信号を変換する「光トランシーバー」は住友電工が世界シェアトップを握る。光部品関連の需要が高まるなか、日本勢が世界をリードする格好だ。

 世界の光ファイバー市場の拡大を後押ししているのが、中国の通信インフラ需要と米国のデータセンター(DC)の増加。SMBC日興証券の山口敦シニアアナリストによると10年以降、世界の光ファイバー需要は平均15%で伸び、16年には光ファイバーが16年ぶりに供給不足となった。
               

 市場をけん引する中国では伸び率が鈍化するものの、光ファイバー需要は17年度も前年度比3・3%程度伸びる見込み。

 光ファイバー市場への投資は通信キャリア各社が引っ張ってきたが、現在はさまざまなサービスプロバイダーも含めて多様化。そうしたサービスプロバイダーの収入も順調に伸びており、DC関連の投資も含めた光ファイバー需要は底堅い。

 それに応じて電線各社の顧客も様変わりしている。例えばDCを使用する企業の変化に伴い、メディアやソフトウエア、物流企業などに顧客層が広がり、1顧客当たりの関連製品の受注数も増加しているという。

 現在、各社が取り組む光関連製品開発のトレンドは「高速・大容量化」。古河電工はクラウドコンピューティングや動画配信の普及に伴い、従来比約4倍の通信量に対応した波調可変レーザーアセンブリを開発している。柴田光義古河電工会長は「時代と事業がマッチし始めている」と期待を寄せる。
光ファイバーを製造する古河電工の米子会社ofs

 住友電工も毎秒400ギガビット(ギガは10億)の超高速光通信に対応した光部品製品を17年下期から開発する。

 さらなる先駆的な取り組みも始まっている。フジクラは1日に中期経営計画とは別にエネルギー問題など長期的な課題に向けた「2030年ビジョン」を策定。同日付で同社新規事業推進センターに「シリコンバレーオフィス」などを新設し、長期的な新事業戦略の策定や検証機能を盛り込んだ。

先進運転支援システムに進出


 また、従来の枠組みにとらわれない越境型の事業も活発だ。古河電工は17年に先進運転支援システム(ADAS)のキーデバイスとなる「周辺監視レーダー」の製品化に成功した。

 小林社長は「今後、自動車は電装化が進めば“走るデータセンター”になり、自動車向けと通信向けの製品群が一緒に提供できる」と展望を描く。

 顧客からも「自動車の概念が変わってきた時、電線メーカーの開発技術が求められる」(自動車メーカー幹部)という声がある。電線各社がもつ事業領域は、IoTや自動運転化など新時代の技術と相性が良い。

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日刊工業新聞2017年4月5日

COMMENT

電線事業で課題は残るものの、電線各社は光ファイバー製品や自動車用ワイヤハーネス製品など次の柱を育成してきた。さらに自動運転化やIoTが本格化する新時代で主要なプレーヤーになれる可能性がある。電線事業の収益性を高めつつ、次世代製品を開発できるかが潜在能力を最大化するカギとなる。 (日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

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