DMM、アフリカ開拓はルワンダから
現地のICT2社買収で電子マネー市場狙う
DMM.com(東京都港区、片桐孝憲社長)は、ソフトウエア開発など情報通信技術(ICT)分野でアフリカ市場に参入する。このほどルワンダの企業2社の株式を取得し資本参加した。今後、DMMは2社に対して経営戦略の策定・推進や人員の強化などでサポートし、ICT分野を開拓する。またルワンダ国外のアフリカ地域への拡大も視野に入れる。
取得したのは、携帯電話向けソフト開発のへへラボ(キガリ市)と、市内バス向け非接触型電子決済システムを手がけるACグループ(同市)の2社。取得額は非公表。
ルワンダは現在、国策としてICT産業の振興を進めている。ACグループは2014年の設立で、政府の指定業者として公共交通機関向け電子マネー事業を手がける。15年から市内バスに導入した決済システム「Tap&Go」は、ルワンダ国内で4万人のユーザーを持つ。今後、小売店向け市場の開拓も狙う。
へへラボは10年に設立した。創業者で最高経営責任者(CEO)のクラリス・イリバギザ氏は、ルワンダを代表する若手女性起業家として現地で注目されている。今後、商号を「DMM.HEHE」に変更する。
アフリカの赤道直下に位置するルワンダ。その名前から1994年の大虐殺(ジェノサイド)を思い起こす人も多いだろう。大虐殺から20年以上が経過した現在、ルワンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの発展を遂げ、世界の企業から注目を集めている。
千の丘の国とたとえられるルワンダは、平均標高が1600メートル。年間を通じて平均気温が25度Cと穏やかな気候に恵まれ、サハラ以南のアフリカで最も安全な国と言われる。
内陸に位置し石油資源を有しないルワンダは、大虐殺後の国の発展の方向性を、知識集約型経済に移行するという野心的な開発戦略に求め、ビジネス環境の改善と産業人材育成に積極的に取り組んでいる。2015年の世界銀行によるビジネス環境ランキングでは、サブサハラアフリカ43カ国中でモーリシャスに次いで第2位となっている。
ルワンダ政府は「メイド・イン・ルワンダ政策」を進めているが内陸国という不利な条件を克服するためには高付加価値化が欠かせず、日本発の技術をルワンダの特徴と融合させた製品・サービスを「メイド・イン・ルワンダ・ウィズ・ジャパニーズテクノロジー」として一つでも増やせればと考える。
例えば、ルワンダの気候や土壌がマカダミア・ナッツの生育に適していることに目を付けた日本企業が、ルワンダ産マカダミア・ナッツを日本式の品質管理で付加価値を高め、「ルワンダ・ナッツ」として輸出している。JICAは同企業が進める有機農法の実証調査を支援する予定で、ルワンダ農産物のさらなる高付加価値化に貢献しつつ、商品の輸出促進にも寄与することが期待される。
また、日本企業は治安やビジネス環境の良さを生かし、自社商品のアフリカ市場向け販売のための入り口としてもルワンダに注目している。JICAが日本に送ったルワンダ人留学生との接点をきっかけに、兵庫県の避雷器製造業者がルワンダ市場への進出を目指し、現地調査を開始した。都内の企業は算数用情報通信技術(ICT)教材ソフトについて市場調査している。
地方自治体では、神戸市が首都キガリ市とのICT産業を中心とした経済連携を企画し、今年5月に両市長が共同宣言を発表した。今後、両市の連携によるビジネスの発展が期待される。
ルワンダには日本の技術を必要としている課題がたくさんあり、それを生かすビジネスチャンスがあると考える。ぜひともルワンダ、ひいてはアフリカの発展に貢献できる事業を日本の企業と一緒に取り組みたい。
(文=ルワンダ事務所所長・高田浩幸(たかだ・ひろゆき)氏)
取得したのは、携帯電話向けソフト開発のへへラボ(キガリ市)と、市内バス向け非接触型電子決済システムを手がけるACグループ(同市)の2社。取得額は非公表。
ルワンダは現在、国策としてICT産業の振興を進めている。ACグループは2014年の設立で、政府の指定業者として公共交通機関向け電子マネー事業を手がける。15年から市内バスに導入した決済システム「Tap&Go」は、ルワンダ国内で4万人のユーザーを持つ。今後、小売店向け市場の開拓も狙う。
へへラボは10年に設立した。創業者で最高経営責任者(CEO)のクラリス・イリバギザ氏は、ルワンダを代表する若手女性起業家として現地で注目されている。今後、商号を「DMM.HEHE」に変更する。
ルワンダってどんな国?
アフリカの赤道直下に位置するルワンダ。その名前から1994年の大虐殺(ジェノサイド)を思い起こす人も多いだろう。大虐殺から20年以上が経過した現在、ルワンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどの発展を遂げ、世界の企業から注目を集めている。
千の丘の国とたとえられるルワンダは、平均標高が1600メートル。年間を通じて平均気温が25度Cと穏やかな気候に恵まれ、サハラ以南のアフリカで最も安全な国と言われる。
内陸に位置し石油資源を有しないルワンダは、大虐殺後の国の発展の方向性を、知識集約型経済に移行するという野心的な開発戦略に求め、ビジネス環境の改善と産業人材育成に積極的に取り組んでいる。2015年の世界銀行によるビジネス環境ランキングでは、サブサハラアフリカ43カ国中でモーリシャスに次いで第2位となっている。
ルワンダ政府は「メイド・イン・ルワンダ政策」を進めているが内陸国という不利な条件を克服するためには高付加価値化が欠かせず、日本発の技術をルワンダの特徴と融合させた製品・サービスを「メイド・イン・ルワンダ・ウィズ・ジャパニーズテクノロジー」として一つでも増やせればと考える。
例えば、ルワンダの気候や土壌がマカダミア・ナッツの生育に適していることに目を付けた日本企業が、ルワンダ産マカダミア・ナッツを日本式の品質管理で付加価値を高め、「ルワンダ・ナッツ」として輸出している。JICAは同企業が進める有機農法の実証調査を支援する予定で、ルワンダ農産物のさらなる高付加価値化に貢献しつつ、商品の輸出促進にも寄与することが期待される。
また、日本企業は治安やビジネス環境の良さを生かし、自社商品のアフリカ市場向け販売のための入り口としてもルワンダに注目している。JICAが日本に送ったルワンダ人留学生との接点をきっかけに、兵庫県の避雷器製造業者がルワンダ市場への進出を目指し、現地調査を開始した。都内の企業は算数用情報通信技術(ICT)教材ソフトについて市場調査している。
地方自治体では、神戸市が首都キガリ市とのICT産業を中心とした経済連携を企画し、今年5月に両市長が共同宣言を発表した。今後、両市の連携によるビジネスの発展が期待される。
ルワンダには日本の技術を必要としている課題がたくさんあり、それを生かすビジネスチャンスがあると考える。ぜひともルワンダ、ひいてはアフリカの発展に貢献できる事業を日本の企業と一緒に取り組みたい。
(文=ルワンダ事務所所長・高田浩幸(たかだ・ひろゆき)氏)
【略歴】97年埼玉大院政策科学研究科修士課程修了、同年JICA入団。アフリカ部計画・TICAD推進課長、トルコ事務所次長、筑波研修業務課長などを経て16年4月からルワンダ事務所所長。埼玉県川越市出身、52歳。
日刊工業新聞2017年4月7日