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東芝、米LNG事業で損失リスク懸念。決算3回目の延期高まる

監査法人が認識か。全く売れない場合の損失額は最大1兆円弱!?
 東芝が、11日に予定している2016年12月期連結決算を延期する可能性が高まり、その理由に関心が集まっている。巨額損失の原因となった米ウエスチングハウス(WH)を非連結化し、将来リスクは遮断できたはず。だが、発表のめどは立たない。金融関係者の一部からは米LNG事業の損失リスクを指摘する声が上がっている。

「監査法人に米LNG事業の損失引き当てを迫られ、東芝が拒否しているのではないか」―。東芝の決算発表が3回目の延期となる可能性が浮上した原因について、金融関係者はこう指摘する。

 東芝幹部は「将来のリスクではあるが、今のリスクではない」と否定するが、延期理由が判然としないことが臆測を招いている。

 東芝は決算延期について、WHにおいて内部統制に問題があり、その調査が必要と説明してきた。だが、WHが3月29日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したことで状況は改善。決算の監査法人による承認作業も動きだすはずだが、まだ先行きが見えない状態が続いている。何が承認を妨げているのか。残ったリスクである米LNG事業に視線が向けられている。

 東芝は13年、米フリーポートLNGとシェールガスの液化加工契約を結んだ。設備は19年9月に稼働予定で、東芝は20年間にわたり年220万トンのLNGを引き取る。LNGが売れなくても東芝は契約料を支払わなければならない。可能性は低いが、全く売れない場合の損失額は最大1兆円弱と試算する。

 東芝は、18年度から翌年度中に生じ得る損失相当額を引き当てる方針を示す。東芝はLNG調達量の8割程度の買い手を見付けたとしているが、法的拘束力のない売買契約という。このため「監査法人は米LNG事業を、東芝の足元の損失として認識しているのではないか」(金融関係者)との指摘が上がる。

 東芝は17年3月期末に6200億円の債務超過に陥る見通しを示した。半導体の新会社「東芝メモリ」を売却し、18年3月期中に債務超過から脱する計画を描く東芝にとっては、現時点で一部でも米LNG事業の損失引き当てを迫られるのは痛手だ。

 一方、東芝は取引金融機関に対し、17年度中に最大1兆円の資金調達が必要だとの見通しを示した。主力行の三井住友銀行などは対応を検討。追加の融資枠は3000億円規模になる可能性がある。
日刊工業新聞2017年4月6日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
4日に取引金融機関向けの会合を開いた。関係者によると、半導体メモリー事業の投資や、金融機関への借入金の返済などで17年度に7400億円の資金が必要になると説明。東芝は会合で、東芝メモリの株式を担保として提供すると改めて表明した。金融機関に対し担保設定の承諾の是非について14日までに回答するよう求めた。

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