好調スバルで危機をしらない若手社員。今こそチャンスの場を与える

現場を知らずにリーダーには絶対なれない

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富士重の公式ページより
 「時代遅れだとさんざん言われたが、現場を知らずにリーダーには絶対なれない」。富士重工業の専務執行役員細谷和男は人事部長時代に事務系職種につく若手社員を対象に3年間、販売店に勤務してもらう取り組みを人材育成の一環として復活させた。販売や顧客とのやりとりを通じスバル車の強みを肌で感じてもらうためだ。

 「私が営業の頃はショールームに誰もいないのが当たり前だったが、今は納車待ち3カ月。会社がいい状態の時に入るのはとても恵まれているが、残念ながら“鍛えられる”という点では逆なのかもしれない」。社長の吉永泰之は指摘する。

 富士重はスバル車の世界販売が100万台規模になり成長軌道に乗るが、少し前までは販売不振で経営は低迷していた。吉永ら現在の幹部陣はこうした苦しい時を過ごす中で、前身会社の中島飛行機のDNAである“安全へのこだわり”に個性を見いだし、現在のスバル車復活の足場を築いた。一方で最近入った若手社員やこれから入社する人は低迷期を経験していない。

 「危機の時に比べ、平常時は若い人が大きな仕事をするチャンスが生まれにくい。だからこそ今、若い人に“場”を与えたい」。吉永は富士重の苦境をくぐり抜けた自身の経験を踏まえ、これからの人材育成の方向性についてこう話す。若手に責任ある仕事を任せることが成長につながると考えるからだ。

 6月で開発部門を統括する取締役専務執行役員の武藤直人と財務部門トップの取締役専務執行役員の高橋充がそろって退任する予定で、世代交代が始まる。「これからもしっかりやってくれると信じている」。武藤は後進に期待する。

 今年は社名変更だけでなく、創業100年の節目の年でもある。車業界は変革期に入り富士重も現在のような平常時が続くか保証はない。次の100年に向けて持続的に成長していくには、スバルブランドを磨き続けていける人づくりが欠かせない。
(文=敬称略)

日刊工業新聞2017年3月29日

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

以前からよく知るアサヒグループHDの泉谷CEO。泉谷さんが広報のいち担当者だったころ、アサヒのシェアは数%で「夕日ビール」と揶揄され、メディアに取り上げてもらうのも大変だったという。その後、「スーパードライ」の登場と大ヒットで躍進するのだが、広報部長時代から、辛かったときの時代を知らない若手の慢心をとても戒めていた。今、CEOになり、幹部を含め大半の人は「夕日ビール」を知らない。「会社がいい状態の時に入るのはとても恵まれているが、残念ながら“鍛えられる”という点では逆なのかもしれない」という吉永社長の言葉。トップがこれを強く意識し、対策を考えていることはとても重要なことだろう。

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