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スバルはなぜ「無人自動運転」を目指さないのか

「アイサイト」でドライバーに“安心と愉しさ”を提供
スバルはなぜ「無人自動運転」を目指さないのか

運転支援システム「アイサイト」の認識イメージ。アイサイトの進化で自動運転技術を確立する

 「運転支援システム『アイサイト』を軸に究極の運転支援の実現を目指す。この延長線上にあるのが自動運転だ」。取締役専務執行役員の武藤直人は富士重工業が目指す自動運転技術開発の考え方をこう表現する。

 ぶつからない技術―。2008年5月に投入したアイサイトはスバルブランドの代名詞だ。世界で初めてステレオカメラだけで車や歩行者を検知し衝突事故を防止する機能を実現した。

 国内におけるアイサイト搭載車は非搭載車に対し、1万台当たりの人身事故発生件数が6割減、車両同士追突事故に限ると8割以上減少。アイサイト搭載モデルの世界累計販売台数は昨年末に100万台を突破した。

 米グーグルなど自動運転車の開発を進めるメーカーの中には、ドライバーが運転に関与しない無人自動運転車の実用化を目指す企業もある。公道での無人自動運転車の走行実験を認める各国の動きも活発化してきた。

 だが富士重は「無人運転が可能なくらいの技術レベルまで高めてはいくが、ドライバーの不在を想定した自動運転車は目指さない」。武藤はこう強調する。

 ドライバーに“安心と愉(たの)しさ”を提供するスバル車にドライバー不在の自動運転はそぐわないからだ。

 自動運転技術の高度化を巡っては日系メーカーでは日産自動車がミニバン「セレナ」にイスラエル・モービルアイの画像処理技術を使い、渋滞時の自動走行を実現。海外競合なども経営資源を集中させ開発を進めている。

 これに対し武藤は「アイサイトはまだまだ進化する。自信がある」と断言する。アイサイト自体の性能向上はもちろん他のセンサーも使用し、対象物の認識精度を一段と高める。16年4月には日本IBMと組み、アイサイトが取得した走行データを効率良く管理できるインフラを構築。開発を円滑に進める土台もできた。20年には高速道路で車線変更できる自動運転技術の実現を目指す。
(敬称略)

日刊工業新聞2017年3月21日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
自動運転と運転の愉しみはある意味で相反するもの。その人間の感覚をどのように折り合いを付けて技術に落とし込んでいるかもっと知りたいところ。

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