『あまちゃん』放送から4年、三陸鉄道は“震災学習列車”で人気に
企業研修としての活用も増える
NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台になった三陸鉄道北リアス線。同鉄道社員らがガイド役となって2012年に始めた「震災学習列車」が人気で、南リアス線を含めた年間利用者数は1万人を超える。団体専用のため、利用者の半数が中高生だが、1両5万5000円で貸し切れることから、企業研修としての活用も増えている。
「災害発生時、命を守るためにどうすべきか改めて考えてほしい」―。北リアス線の久慈駅を出発すると、ガイド役の金野淳一運行本部長は乗客にこう呼びかけた。震災復興列車の目的は震災を語り継ぎ乗客の防災に役立てること。被災地を自分の目で見て肌で感じることで、災害への意識を高めてもらう狙いだ。
久慈駅を出発して約10分。野田村にある陸中野田―野田玉川駅間の十府ケ浦の前で列車は一時停車した。海は見えない。高さ約14メートルの新しい防潮堤が線路と海の間にそびえるからだ。震災時、津波は旧防潮堤を乗り越え、39人の命を奪った。
「震災当日は停電し車も走っていない“音のない”光景が広がっていました」―。再び動きだした列車がトンネルに入ると、照明が消え、車内は真っ暗になった。金野本部長は携帯用懐中電灯を点灯させ笛を吹く。
がれきに埋まったとき自分の居所をどう救助隊に知らせるのか。「自分が生き残るために必要なモノは何か、避難先をどこにするのか、もう一度家族と話し合ってほしい」。震災を経験した三陸鉄道だからこそ語れる金野本部長の言葉が心に深く刻み込まれた。
津波被害を減らす理由もあり、北リアス線で海が見える場所は少ない。だが、堀内駅近くの大沢橋梁、安家川橋梁では一時停車し、エメラルドブルーの海を思う存分撮影できる。一時下車した堀内駅では、あまちゃんで使われた駅名「袖が浜」の駅名標前で撮影を待つ乗客の列ができた。放映開始から4年。あまちゃん人気は、まだまだ三陸の観光を支えている。
(文=水嶋真人)
「災害発生時、命を守るためにどうすべきか改めて考えてほしい」―。北リアス線の久慈駅を出発すると、ガイド役の金野淳一運行本部長は乗客にこう呼びかけた。震災復興列車の目的は震災を語り継ぎ乗客の防災に役立てること。被災地を自分の目で見て肌で感じることで、災害への意識を高めてもらう狙いだ。
久慈駅を出発して約10分。野田村にある陸中野田―野田玉川駅間の十府ケ浦の前で列車は一時停車した。海は見えない。高さ約14メートルの新しい防潮堤が線路と海の間にそびえるからだ。震災時、津波は旧防潮堤を乗り越え、39人の命を奪った。
「震災当日は停電し車も走っていない“音のない”光景が広がっていました」―。再び動きだした列車がトンネルに入ると、照明が消え、車内は真っ暗になった。金野本部長は携帯用懐中電灯を点灯させ笛を吹く。
がれきに埋まったとき自分の居所をどう救助隊に知らせるのか。「自分が生き残るために必要なモノは何か、避難先をどこにするのか、もう一度家族と話し合ってほしい」。震災を経験した三陸鉄道だからこそ語れる金野本部長の言葉が心に深く刻み込まれた。
津波被害を減らす理由もあり、北リアス線で海が見える場所は少ない。だが、堀内駅近くの大沢橋梁、安家川橋梁では一時停車し、エメラルドブルーの海を思う存分撮影できる。一時下車した堀内駅では、あまちゃんで使われた駅名「袖が浜」の駅名標前で撮影を待つ乗客の列ができた。放映開始から4年。あまちゃん人気は、まだまだ三陸の観光を支えている。
(文=水嶋真人)
日刊工業新聞2017年3月17日