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民営化30年、JR東日本社長が語る「過去・現在・未来」

「最近、緊張感が足りないと感じる。切迫感をもって取り組む」
民営化30年、JR東日本社長が語る「過去・現在・未来」

冨田哲郎社長

 JRグループ7社は4月に、1987年に国鉄が分割民営化されてから30周年を迎える。民営化後、在来線、新幹線ともにネットワークを飛躍的に向上させ、事業規模を拡大。海外展開など、次代を見据えた取り組みも加速する。JR東日本の冨田哲郎社長は、少子高齢化などを背景とした事業環境の変化と向き合い「新たな流動を創り出すような能動的な仕事」が必要と説く。冨田社長に、今後の展望などを聞いた。

 ―分割民営化から30年が経過し、これからJR東日本が取り組む課題は何でしょう。
 「これまでの30年と異なり、少子高齢化や人口減少で、黙っていても収益が上がる時代は終わる。ネットワークの改良や高性能な車両の導入などを積極的に進め、新たな流動を創り出すような能動的な仕事をしていかなければならない。首都圏では駅の立地条件に恵まれていながら、生かし切れていないところもある。また、地方では地域を元気にすることを目標に、駅を中心としたコンパクトな街づくりも必要だ。企業として、執念をもって成長を追い求めていかなければならない」

 ―JR東日本が30年間で、ここまでの成長を遂げた要因は。
 「国鉄時代は運賃も自主的な決定権がなく、自分たちの力が発揮できないもどかしさがあった。分割民営化でそれが解き放され、鉄道の信頼を取り戻すべく、熱意をもってやってきたことは大きい。ただ、自分たちだけでここまで来られたのではなく、自力で経営できる枠組みを政府に与えてもらい、地域の皆さまにも助けて頂きながら、なんとか期待に応えられるところまで来ることができた」

 ―成長を維持するには、鉄道の技術開発が不可欠です。
 「技術革新が進んでおり、IoT(モノのインターネット)やロボットなど、取り入れるべきテーマや素材がたくさんある。2016年11月に策定した技術革新中長期ビジョンでは、安心・安全、サービス・マーケティング、メンテナンス・オペレーション、エネルギー・環境の四つを開発のテーマに掲げている」

 ―このビジョンを実現する、時間的な目標の設定は。
 「技術開発はタイムスケジュールを作って目標を管理することが大事だ。この30年、比較的順調に来たが、最近、緊張感が足りないと感じる。時間軸を考え、切迫感をもって取り組まなければならない」
(聞き手=高屋優理)
日刊工業新聞本社2017年3月10日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
国鉄時代の度重なるストライキや遅延から、民営化当初はJRへの風当たりが強かった。冨田社長は「どうなるか自分たちも不安だった」と振り返る。現在、遅延は大幅に減り、駅構内の商業スペース「駅ナカ」の開発が進むなど、鉄道に対するイメージは大きく変わった。春には豪華観光列車「四季島」を運行。新たな需要の喚起に挑む。

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