安倍・トランプ会談で「テキサス新幹線」は動き出すか
地元の開発会社が用地取得で進展をアピール
米国テキサス州で民間主導の高速鉄道計画を進めているテキサス・セントラル・パートナーズ(TCP)は7日、計画に必要な土地全体の約3割を確保したと発表した。高速鉄道への投資が10日の日米首脳会談で議題に上るとみられており、先手を打って進展をアピールした。
同計画はJR東海が技術面で支援し、日本の新幹線システムの導入を目指している。会談では安倍晋三首相がトランプ大統領に対し、「テキサス新幹線」を含む高速鉄道計画への官民投資などを政策パッケージとして提案する方針だ。
TCPのアギュラー最高経営責任者(CEO)は声明で「これは大きな前進だ。沿線の地主との前向きな対話を反映したもの」と強調した。
世界各地で進む新幹線プロジェクトの中でも、JR東海を中心に民間が主体となっているのが、米国のプロジェクトだ。JR東海の柘植康英社長は2日、建設主体となる新会社に出資する意向を明らかにした。米テキサスの新幹線計画は、東海道新幹線の「N700系」を中心とする高速鉄道のトータルシステム「N700―I Bullet」の導入を前提に、JR東海が技術的なプロモーションを展開している。
同プロジェクトは2015年11月に官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の出資が決定するなど、政府の後押しで大きく前進した。JOINが出資するテキサス・セントラル・パートナーズ(TCP)は、地元企業などが出資して設立した新幹線計画の推進主体。TCPは同7月に地元企業などから約7500万ドル(約92億円)の資金を調達しており、今後は着工に向け、米運輸省鉄道局が環境影響評価の手続きを進める。
現在のところ、JR東海はこのプロジェクトに資金を出していない。日本からの本格的な資金提供はJOINが初めてで、この点も特徴的なプロジェクトだ。
テキサスのプロジェクトはJOINの出資により、建設を前提とした資金調達と詳細設計の段階に入った。JR東海がそこに資金を提供し、着工に向けてプロジェクトを後押しする。
新幹線の導入を目指すダラスとヒューストンは、それぞれ人口約600万人前後の大都市。両都市間の距離は東京―名古屋間に相当する。新幹線は初期投資がかさみ、計画から開業まで時間がかかるため、旅客流動が見込めるかが、必須要件となる。世界広しといえども、これをクリアするところはそう多くないのが実情だ。
JR東海は09年に新幹線の海外展開を専門とする「海外高速鉄道プロジェクトC&C事業室」を設置。米国に的を絞り、葛西敬之名誉会長を中心に、新幹線と超電導リニアの売り込みに力を入れてきた。以前は、米フロリダ州の新幹線プロジェクトも進めていたが、11年に知事が代わって白紙となり、テキサスに一本化した経緯がある。こうした苦い経験も踏まえ、政府とJR東海は米国から要人が来日する度に、リニアの試乗を実施するなど、官民一体でつながりを深め、慎重に事を進めている。
同計画はJR東海が技術面で支援し、日本の新幹線システムの導入を目指している。会談では安倍晋三首相がトランプ大統領に対し、「テキサス新幹線」を含む高速鉄道計画への官民投資などを政策パッケージとして提案する方針だ。
TCPのアギュラー最高経営責任者(CEO)は声明で「これは大きな前進だ。沿線の地主との前向きな対話を反映したもの」と強調した。
かさむ初期投資、旅客流動が必須要件
世界各地で進む新幹線プロジェクトの中でも、JR東海を中心に民間が主体となっているのが、米国のプロジェクトだ。JR東海の柘植康英社長は2日、建設主体となる新会社に出資する意向を明らかにした。米テキサスの新幹線計画は、東海道新幹線の「N700系」を中心とする高速鉄道のトータルシステム「N700―I Bullet」の導入を前提に、JR東海が技術的なプロモーションを展開している。
同プロジェクトは2015年11月に官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の出資が決定するなど、政府の後押しで大きく前進した。JOINが出資するテキサス・セントラル・パートナーズ(TCP)は、地元企業などが出資して設立した新幹線計画の推進主体。TCPは同7月に地元企業などから約7500万ドル(約92億円)の資金を調達しており、今後は着工に向け、米運輸省鉄道局が環境影響評価の手続きを進める。
現在のところ、JR東海はこのプロジェクトに資金を出していない。日本からの本格的な資金提供はJOINが初めてで、この点も特徴的なプロジェクトだ。
テキサスのプロジェクトはJOINの出資により、建設を前提とした資金調達と詳細設計の段階に入った。JR東海がそこに資金を提供し、着工に向けてプロジェクトを後押しする。
新幹線の導入を目指すダラスとヒューストンは、それぞれ人口約600万人前後の大都市。両都市間の距離は東京―名古屋間に相当する。新幹線は初期投資がかさみ、計画から開業まで時間がかかるため、旅客流動が見込めるかが、必須要件となる。世界広しといえども、これをクリアするところはそう多くないのが実情だ。
JR東海は09年に新幹線の海外展開を専門とする「海外高速鉄道プロジェクトC&C事業室」を設置。米国に的を絞り、葛西敬之名誉会長を中心に、新幹線と超電導リニアの売り込みに力を入れてきた。以前は、米フロリダ州の新幹線プロジェクトも進めていたが、11年に知事が代わって白紙となり、テキサスに一本化した経緯がある。こうした苦い経験も踏まえ、政府とJR東海は米国から要人が来日する度に、リニアの試乗を実施するなど、官民一体でつながりを深め、慎重に事を進めている。
日刊工業新聞2015年12月29日