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米WHに破産法検討。「債務保証の存在が申請の課題に」(東芝幹部)

米WHに破産法検討。「債務保証の存在が申請の課題に」(東芝幹部)

ボーグル発電所(©2017 Georgia Power Company)

 東芝が、原子力発電事業子会社の米ウエスチングハウス(WH)について、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を検討する作業に着手した。9日にはWHが破産専門弁護士と契約したことが明らかになった。東芝は原発事業で7125億円の損失を計上し、2017年3月期に債務超過に陥る公算が大きい。引き続き原発事業が最大の経営課題となるため、聖域なくリスク低減策を探る。

 WHは米国で二つの原発プロジェクトを進めている。その両方で建設工事が難航しコストが増大した。コスト超過分をWH側が負担するという電力会社との契約もあり、損失が膨らんだ。

 東芝は2月14日、海外の原発事業を縮小する方針を示し、WHについては株式の保有比率を引き下げる方針を示した。ただリスクの芽は残っている。

 米国プロジェクトでは20年末までに原発を稼働しないと、電力会社は政府から税制優遇を受けられなくなる。このため期限までに完工できなかった場合、WHは電力会社から損失補償を求められる可能性がある。また進行中の中国でのプロジェクトでも工事遅延などで損失が拡大する懸念もある。

 米連邦破産法11条は経営難に陥った企業が裁判所のもとで債務を整理し、事業を継続しながら再建を目指す仕組み。WHに適用すれば、東芝は新たな損失発生のリスクを低減できる。

 半導体メモリー子会社の売却などで経営難を乗り切っても、WHの損失リスクが燻り、海外原発事業の不透明感が残った状態では、東芝の経営再建はおぼつかない。東芝幹部の一人は「泥沼から脱しないといけない」と強調し、WHの破産法11条の活用案を推す。

 ただ東芝はWHに対し約8000億円の債務保証をしている。このため工事遅延などによって生じた損失の補填を電力会社から求められた場合、WHが破産法11条適用となっても、東芝が肩代わりしなくてはならない。東芝幹部は「(債務保証の存在は)破産法の適用を申請する上での課題」と認める。
日刊工業新聞2017年3月10日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
一部報道で東芝の試算によると3000億円の追加損失が発生するという。あくまで東芝の試算なので…。「銀行、政府のみなさん支援よろしくお願いします」と聞こえてくる。

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