パナソニック大胆人事を読む。今後6年間「津賀CEOー樋口COO」の布石?
文=大河原克行(ジャーナリスト)100周年に向け今後1年に実績が試される
五輪商談で成長を担う
パナソニックは、創業100周年を迎える2018年度に、売上高8兆8000億円を目指しているが、そのの内訳は、家電が2兆3000億円、住宅が1兆6000億円、車載が2兆円、そして、bツーbが2兆9000億円。このうちのbツーb領域を担当するのが、コネクテッドソリューションズ社ということになる。
コネクテッドソリューションズ社の成長分野としては、メディアエンターテイメント事業部があげられる。リオオリンピックの開幕式および閉幕式において、高輝度プロジェクターを活用したプロジェクションマッピングによる演出は、多くの人に感動を与えたが、それを一手に引き受けたのがパナソニックである。
こうした実績をベースに、国内外のスポーツ施設やイベント会場、テーマパークなどへの商談が進んでいる。パナソニックでは、2020年の東京オリンピック/パラリンピック関連商談で、1500億円を目指しているが、この商談の中心的役割を果たすのも、コネクテッドソリューションズ社だ。
エンターテイメント事業は、現在、2,500億円の事業規模を、2018年度には3,000億円の事業規模にまで拡大する計画であり、パナソニック全体にとっても、成長を担う最注力事業のひとつとなる。
目に付く課題事業の多さ
だが、優良な事業ばかりとはいえない。
パナソニックには、現在、36の事業部とカンパニーがあるが、それらの事業を、成長市場に身を置き、リソースを思い切って集中させる「高成長事業」、成長市場に身を置いているものの、競争力の強化によって、業界平均を上回る成長を実現する「安定成長事業」、売上成長が望みにくい市場であるため、売上げを追わず、徹底的に利益率の向上を追求する「収益改善事業」の3つに分類している。
コネクテッドソリューションズ社の前身となる現在のAVCネットワークス社には、9つの事業部およびカンパニーがある。2016年度がスタートした時点で、「収益改善事業は、全社で14事業部あり、そのうちの半分は、AVCネットワークス社が占めている」(津賀社長)としていたことを考えると、AVCネットワークス社のほとんどが収益改善事業だといってもいい。
つまり、樋口氏が担当するコネクテッドソリューションズ社は、むしろ、厳しい経営の舵取りを余儀なくされる事業の方が多いといえる。そのなかで、カンパニー全体の成長戦略を描いていくことになる。
一つ足りない「C×O」
今回の体制見直しでは、「C×O」表記を導入するのも新たな取り組みだ。
ここでは、津賀社長がCEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)に就くほか、宮部義幸専務執行役員が、CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)など、佐藤基嗣専務執行役員がCSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)など、石井純常務執行役員がCRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)など、梅田博和執行役員がCFO(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)に、それぞれ就任することが発表されている。
だが、本来、設定されるはずのCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)は空席のままだ。
もしかしたら、その席は、樋口氏のために空けられているのかもしれない。この1年、コネクテッドソリューションズ社において、樋口氏が成果を発揮すれば、そのポジションは樋口氏のものになるだろう。
津賀社長とは、大阪大学で1年後輩となる樋口氏。COOとなれば、残り6年間は、津賀・樋口体制での二人三脚体制の可能性も出てくる。この1年間の樋口氏の通信簿の結果が、今後の津賀社長体制の「後半戦」での布陣を左右することになりそうだ。
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