太陽光発電、動き出す“脱FIT型”ビジネス
国民負担を軽減、市場縮小の緩和なるか
住宅用、「ゼロエネハウス」で海外勢に対抗
3年分の売電価格が示されたことも変更点の一つだ。東京、関西、中部の各電力管内の住宅用(10キロワット未満)は17年度から年2円ずつ下がり、19年度は24円(いずれも1キロワット時、消費税込み)となる。
24円は家庭の電気代並み。19年度以降、余剰電力の売電期間が終わる家庭が出てくるため、自家消費へ向かう条件が整う。太陽電池メーカーは自家消費への移行に向けて製品開発を進めている。
パナソニックは、太陽光発電と蓄電池それぞれに必要だった装置を1台にまとめた「創蓄連携システム」を12年から販売している。家庭では、昼に発電した電気を夜間に利用するため蓄電池が必要となる。
余剰電力の売電から自家消費へ切り替えても、配線などを増やさずに設置できるのがシステムのメリットだ。4月には従来の3分の1へ小型化した新システムを発売し、より施工しやすくする。17年度は16年度比2倍の5000台の販売を計画する。
京セラは人工知能(AI)機能を利用できる家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を発売した。生活パターンを学習し、自宅の太陽光パネルからの売電量を増やしたり、節電したりしてくれる。
学習機能により当初は売電中心、途中から自家消費優先へ変更できる。昼、太陽光パネルの電気で給湯器を運転し、夜の入浴や家事に備えてお湯をためておく指示をHEMSがしてくれる。太陽光で作った“ゼロ円”の電気を使うので家計への負担がない。
提案力がカギに
消費エネルギーを実質ゼロにする「ゼロエネルギーハウス」(ZEH)への対応も始まった。三菱電は工務店のZEH設計を支援するツールを用意した。
三菱電の営業員が自社の設備機器を選んで入力すると、家ごとに省エネ量を算出できる。その後、必要な太陽光パネルの設置枚数を計算し、工務店に提案する。杉本部長は「設備機器を総合的に提案できる」と強みを強調する。
シャープも工務店向けにZEHの設計から補助金の申請まで支援する。政府は20年から新築住宅のZEHを標準化する方針。各社ともZEH開発の余力がない地方工務店を支援し、太陽光パネルの需要を確保する。
FIT改正後、国内外20社以上が参加する国内市場では淘汰(とうた)が予想される。コスト力で海外勢に太刀打ちできない日本メーカーは、発電した電気の使い方や他の機器と組み合わせた「提案力」が勝負となる。
(文・松木喬)
日刊工業新聞2017年3月1日「深層断面」