なぜ左官屋で若者と女性が活躍できるのか。話題の「モデリング」とは?
<情報工場「読学」のススメ#25>わずか1カ月で基本技術を身につけさせる
言葉ではなく映像から感性を読み取る習慣
さらに言えば、技術や「型」が感性を育てるという面もあるのではないか。感性を言葉で伝えるのは難しい。だが、一流職人の「型」から滲み出る感性を「見る」ことで受け取ることはできるだろう。
『フレンチの王道』(文春新書)によれば、フレンチの名店「シェ・イノ」のオーナーシェフ・井上旭さんは、フランスでの修行時代、師と仰ぐ料理人ジャン・トロワグロのソースづくりを「映像」として頭に叩き込んだという。ルセット(レシピ)を覚えることは一切しない。日本に帰国後、ルセットをすべて破り捨てたというから徹底している。一流の技、そして感性を、言葉ではなく映像を通して直接学んでいったということだ。言葉と言葉の間にある微妙なニュアンス、頭を使わずに自ずと体が動いてしまうような技術は、目に映るそのままの姿からしか受け取れないのだろう。
左官を志した新人も、モデリングを経験することで、井上さんのように「映像で受けとる」習慣が身についていくのではないだろうか。その習慣は、その後、プロの職人としての感性を身につけていくための、強力な武器になるに違いない。
(文=情報工場「SERENDIP」編集部)
原田 宗亮 著
クロスメディア・マーケティング
190p 1,480円(税別)>
ニュースイッチオリジナル