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個人データは誰のもの?匿名化しても残る不安

消費者は何を容認し、容認しないのか。

グーグルとアップル、2つの立ち位置


 個人データを巡る問題について、玉井克哉東大先端科学技術研究センター教授に聞いた。
                 

 ―個人情報保護法改正を受けて、個人情報保護委員会が設立され、制度面の整備は進んでいます。
 「一般論はそうだが、委員会を作っても現場の問題が解決するわけではない。少なくともお客さまのデータを守ると言っている企業ならば(分からないところで)勝手にデータを売り渡すことがあってはならない。パーソナルデータへの関心が高まる中で、各企業は自社の方針をはっきりと示すべきだ」

 ―具体的には。
 「二通りある。一つは、集めた個人データをビジネスでいかようにも活用する米グーグルのような立ち位置。もう一つは、個人データを活用しないと宣言する手法。米アップルの『アップルペイ』がそれ。個人データは本人のものとの見解に立っている。アップルの場合、いまさらデータを集めてもグーグルに勝てないのも事実だが、逆張りのビジネスとして注目される」

 ―「データは誰のものか」を問題提起していますね。理由は。
 「パーソナルデータは個人のものだ。企業が扱う際には切り分けができていなければならない。そこがグレーな状態では経営とはいえない。ポイントカードで特典を付けるといっても、個人データを勝手に使っていいわけではない」

 ―政府の肝いりで情報銀行の創設が検討されています。
 「銀行のように、国から認可を受けた企業ならば個人情報を集めてもよいとする考え方だ。例えば自分の運転履歴を情報銀行に預けておき、保険会社が照会を求めてきたら本人が了承する。無事故ならば保険料を安くなるといった具合だ。情報を預かるのは金融機関とは限らず、さまざまな形態が考えられる」

(文=斎藤実)

日刊工業新聞2017年2月22日
原直史
原直史 Hara Naofumi
ECサイトで買い物をしたり、商品を閲覧すると、次々とリコメンド情報が送られてくる。この量と頻度は、以前より急増している感がある。便利さとは裏腹のうっとうしさを感じるのは、このような時だ。今は、ユーザー側ではこのような状況になることをコントロールする術はない。今後、IoTや人工知能が進んでいくとすれば、ユーザー側が自らの情報をコントロールできる機能を提供することを、事業者側に義務づける法整備やルール設定が必要になるだろう。

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