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花粉にスマホ老眼…機能性農産物は“おいしい市場”に育つか

薬を飲み続けるようなサプリに抵抗感。割高も売り切れ
花粉にスマホ老眼…機能性農産物は“おいしい市場”に育つか

機能性農産物を使用した食品の商品化も進む(イメージ)

 消費者の健康志向が高まる中、花粉症の抑制に効果のある緑茶など“機能性農産物”が脚光を浴びている。栄養を補助するサプリメントと違い、野菜や果物として摂取するため違和感がなく、さまざまな料理に利用できるのが特徴だ。飲料メーカーや小売り企業にとっても、機能性農産物を原料にした食品で高付加価値をアピールできる。消費者の農産物に対する低価格志向は根強いが、機能性農産物はメーカーや流通、生産農家にとって“おいしい市場”に育ちつつある。

 機能性農産物を開発したのは、大半が農林水産省系の研究機関である農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)。同機構食品健康機能研究領域の山本万里領域長は「小売り側の認知度がぐんと高まってきた」と話す。

 これまでに抗アレルギー作用を持つ緑茶「べにふうき」、スマートフォンの使いすぎでものが見えにくくなる“スマホ老眼”に効くアントシアンを含む緑茶「サンルージュ」、健康維持に役立つとされるβ(ベータ)―グルカンが多い大麦「キラリモチ」などの品種を開発。べにふうきはアサヒ飲料を通じ「めめはな茶」として商品化され、サンルージュやキラリモチも商品化が進んでいるという。

 タキイ種苗(京都市下京区、瀧井傳一社長)は、美肌などに効果があるとされるリコピンを多く含むニンジン「こいくれない」を、関係会社で販売。イオンなどのスーパーで2本300円程度の価格で売られており、割高ながら短時間で売り切れる人気だ。山本領域長は  「大手スーパーやコンビニエンスストアで売られれば、消費者の注目度も高まって販売数量が飛躍的に伸び、量産効果で価格も引き下げられる」と力説する。

 健康に対する関心の高まりでサプリに頼る消費者も多いが、「毎日、薬を飲み続けるようで不安」という声もある。機能性農産物はその点、無理なく続けられる。

 農研機構が手がけるビタミンCが多いイチゴ「おいCベリー」は生食やサラダ、スムージーで摂取できる。また、体の“さび”である酸化を防ぐケルセチンが多いタマネギ「クエルゴールド」やセサミンの多いゴマ「にしきまる」も同様。中国産などの安価な農産物に“健康価値”で差別化できる。

 農林水産省はこうした機能性農産物の開発に対し、2013年度から予算を計上し後押ししている。健康志向や脱・価格競争のニーズを背景に、市場の盛り上がりが期待される。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2017年2月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
それでも人はたまにゲスい食べ物を食べたくなるのはなぜだろうか。

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