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ジャパンディスプレイ、再起なるか

「曲がる」新型液晶と脱スマホで挑む
ジャパンディスプレイ、再起なるか

JDIの曲げられる新型液晶


有機EL戦略の一本化は難しい


 16年末、JDIは産業革新機構から750億円を調達すると同時に、JOLEDの子会社化を決めた。JOLEDは印刷方式の有機ELディスプレーの実用化に向け開発を進める。

 16年21・6型の4Kディスプレーを開発。1インチ当たりの画素数を示すppiは204で、液晶と同程度の低消費電力を実現した。現在は用途提案の実証試験中で、医療用や航空機、自動車といった分野への採用を目指している。

 石川県にあるJDIの拠点で量産を検討しており、年内のサンプル出荷を計画。JOLEDの東入来信博社長は「17年度末にも売り上げが立つ見通し」とする。今後はより高いppiの実現や、より大型のパネルへの展開も視野に入れる。

 大規模な装置やクリーンルーム、有機EL材料を塗り分ける型が必要でコストがかかる蒸着方式に比べ、印刷方式は大気中ででき、型が不要。
開発した印刷方式の21・6型4K有機ELディスプレー(JOLED提供)

 東入来社長は「薄型、軽量、低コストが実現できる印刷方式は、日本に素材から装置までエコシステムが整っており実現に適している」と主張する。課題は高精細化が難しい点だ。

 JDIは高精細化が可能な蒸着方式の有機ELディスプレーで、18年度中の量産を目指している。ただ「顧客の要請を踏まえ共同で投資することを考えたい」(本間会長)と量産投資には慎重だ。

 今後JDIとJOLEDは販路や技術などの面で連携を深めることになる。しかし現時点では有機EL戦略の一本化は難しい。戦略が両社の思惑通りに進まず投資負担がかさみ、経営不安に陥れば「成長」のステージは再び遠くなる。
(文=政年佐貴恵)
(2017年2月17日)
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
JDIの新型液晶に対する顧客からの引き合いは良いという。その価値を認めさせられれば有機ELの対抗軸になりうる。しかし「有機EL」というブランドに対する顧客からのニーズも高く、いずれは本腰を入れて量産投資をせざるを得ない局面がやってきそうだ。その時までに非スマホ事業を第2、第3の柱に育てて財務基盤を安定させられるか、そして有機ELの技術レベルを高められるかがカギになりそうだ。

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